「わんわん!」
「わんわんいるね~。」
わんわん、わんわん、とすれ違いざまに親子がこちらを指差しながら歩いていく。
立ち止まって後ろを振り返れば、相変わらず感情の汲み取れない表情をした夜鷹純と目が合った。
過剰に反応しないように、ゆっくり顔を前に戻してまた歩き出す。
戸惑いが物凄い。散歩の始めからこれまで、度々無意味に振り返っては金色の目とかち合ってドギマギしてを繰り返していた。
俺、今、本当に夜鷹純と散歩してるんだ。
彼に拾われて早四日。意外にも、彼は柴犬の俺の事を、かなりしっかり世話してくれている。大量に届いていたケージやらトイレやらも彼がセットしてくれたし、ご飯も一日二食、七時、十九時と時間きっかりに与えてくれる。煙草の臭いも段々薄くなってきて、「こっち。」と言われた時に俺も近づきやすくなった。
1910