耳かきの話「ウルフウッドこっちに来て」
ソファーに腰掛けたヴァッシュが手招きをしてウルフウッドを呼ぶ。その手には見慣れない小さな棒が握られている。
機嫌の良さそうな声にウルフウッドは少々警戒しつつ近寄った。ヴァッシュがこの声色を出すときに、良いことがあったためしがない。
「なんや、それ」
三人は座れそうなソファーだというのに、ヴァッシュは一番端ギリギリに腰掛けている。少し距離を取ってウルフウッドもその隣に腰掛けた。
「耳かきってしってる?」
「ミミカキ? 聞いたことないな」
ヴァッシュが手にしている箸ぐらいの細い棒をウルフウッドの目の前に差し出した。随分細くて端が小さなスプーンのようになっている。
反対側には、なにやらほわほわと柔らかそうな羽毛が着いていた。青色の毛色からみてトマの羽毛だろうと察しが付いた。
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