鈍い音と短い呻き声が静かな朝をぶち壊した。乱れたシーツの上で夢と現実の狭間を彷徨っていた僕は音の方へゆっくりと視線を向ける。
「……なにやってんだよドジ」
そこにはベッドの足に小指をぶつけたらしいウルフウッドが痛みに耐えるようにして蹲っていた。
「うっさいわ!誰のせい、」
途中まで言いかけて口を噤んだ男は僕を睨み付けると、怠そうに腰を摩りながらバスルームに消えて行った。
「なんだよあいつ…………あ」
彼が腰を摩る理由を察して、一人きりになった部屋で口元を緩ませながら赤面する。小指をぶつけたのは身体がふらついたせいだろう。申し訳ない気持ちはあるが、それよりも数時間前の出来事が夢ではなく現実であることが嬉しかったのだ。
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