富Kの煮付け。 どうして、なぜ、どこでどうすれば良かった? 意味がないと知りながら、一人は止めることのできない自問を繰り返す。すでにぐっしょりと濡れた全身に、大粒の雨が容赦なく降り注ぐ。水分を限界まで吸ったマントは重く、裾は脚にまとわりついてくる。雨の雫が目に入るが拭うことは出来ない。
両手が塞がっているからだ。意識レベルの低下した富永を横抱きに抱えているから。どこかで早く富永を休ませ、詳しく診なければ。突然の大雨にぬかるむ泥と木の根に足を取られぬよう、慎重に足を進める。本当は走り出したいのに。早く早くと気ばかりが焦る。
抱えられ、力なく垂れた富永の腕が視界に入り胸が傷んだ。右足の状態も目視で確認する。雨が絶えず降り注ぎ、血も汚れも落としてしまうため、応急的な処置しか出来なかった患部の止血が今もきちんと出来てるのかわからない。
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