ひかり心臓が張り裂けそうだった。息が上がる。足がもつれる。もう何年もこんなに走ってない。いや、今まで生きてきた中で、こんなにも必死に走ったことはあっただろうか。
人の密集した間を縫うように走る。今日はサンダルじゃなくて良かった。そんなことがふと過る。
信号が赤に変わった。立ち止まると、吹き出すように汗がでた。呼吸が荒い。吐きそうだった。駅のホームからマツゾー編集部まで、まだ半分くらいだというのに、もうからだがバラバラになりそう。こんなときに日頃の運動不足がたたる。
———— はじめ。もっと運動しないとダメだぞ。
あぁ、あの人もそんなことを言っていたな。いざというときに困るぞ、なんて。おれはそれになっていったっけ。怪物に襲われるわけでもなし、いざというときなんてそうそうやって来ないよ。そんな風に返した気がする。
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