ユートピア「そうそう。そうやって最初ちょっと強火で表面を軽く炙って、カリッとしたらひっくり返す」
歌うように解説する獅子神の声を背景に、村雨の手元のフライパンから、ぱちぱちと音を立てて紅色の肉が焼けていく。危なっかしい手つきでようよう肉を返すその眼差しは鋭くまさに真剣そのものだ。
フライ返しの先から、ぼて、と零れた肉の断面は、しっかりとフライパンに受け止められ、じゅう、と香ばしい音を立てた。
「ん。出来たじゃん。そしたらそのまま、今度はなるべく触らずに火ぃ弱めて、そのまま蓋してちょい蒸し焼き」
「……ちょい、とはどの程度だ?」
「肉の表面がカラメル色になってから、二分から三分。火力や肉の厚さにもよるけど、この厚さなら2分半でミディアムレア、ウェルダンにしたければ3分半だな」
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