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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    フォロワーさんが言ってた喫煙話から膨らませた話。ちょっとだけ言ってた話から変わってるかも。
    ⚠過去捏造(妄想)注意
    ⚠死ネタ?注意
    以上が大丈夫な方はどうぞ!

    この日だけの約束を地獄のプリニー教育係という仕事は閑職で、万年人手など不足しっぱなしだ。
    激務に追われる中、ヴァルバトーゼはふとカレンダーに目をやった。

    「……もう、こんな時期か」
    「…?閣下、どうされました?」
    「いや、何でもない。気にするな」
    「………」

    呟いた言葉に、フェンリッヒが反応するが、ヴァルバトーゼはそう言って手元の書類に目を戻した。
    なんとなく、特別な感情が込められていたのは己の気のせいか、とフェンリッヒも自分の仕事へ戻って行った。

    そんな出来事があった数日後、フェンリッヒはいつも通りにヴァルバトーゼを起こすべく、部屋のドアをノックした。

    「閣下、失礼致します」

    ドアを開けると、いつも通りの光景──に、違和感がひとつ。
    主が使っている棺桶型のベッドの蓋の上に、1枚の紙が置かれていた。

    「これは…?」

    簡易的な地図。
    さらに紙の端に『上層区』と書かれていた。
    ここに居る、というメッセージは果たして来いということか、来るなということか。
    だがきっと、来るなという意味なら紙など置くはずがない。
    フェンリッヒはこの前の主の様子を思い浮かべ、地図の場所へと向かうことにした。

    雪の降り積もる上層区。
    その中に、黒く小さな背中が居た。あの頃と比べると、何もかも違う。
    分かっていることなのに、そこに立つ主を見てそんな想いが浮かぶ。
    シモベの気持ちを分かってか分からずか、主は足音と気配に気付いてゆっくりと振り向いた。

    「来たか、フェンリッヒ。思ったより早かったな、さすが我がシモベだ」
    「閣下、ここは…?」

    微笑むヴァルバトーゼの足元には、少し盛り上がった土がひとつ。
    そして、彼の手には何かあった。

    「…昔の、戦友の墓…と言えばいいか」
    「戦友、ですか?」
    「ああ。お前以外に、共に肩を並べて戦ったのは、コイツだけだ」
    「…初めて聞いた話ですね」
    「言ったことがないからな。わざわざ言うことでもなかろう。それに、やっと約束を果たせる時になったから、それでお前にも話しておこうと思っただけだ」
    「また約束ですか?今回はなにを?」
    「こうして…手向け代わりのものをくれてやる、と言っただけだ」

    そう言うと、ヴァルバトーゼは持っていたものに火をつける。
    持っていたのは、煙草だった。

    「閣下、吸われるのですか?」
    「まさか。コイツが好きだっただけだ。俺は好んでこんな不味いものなど吸わん」

    ふぅ、と煙と寒さの白い息が混ざる。
    墓と言うにはおざなりなそれを見つめる目には、どこか悲しい色が混ざっていた。

    「約束とは、そこで煙草を吸うことなのですか?」
    「似たようなものだ。『落ち着いたら、お前の墓で煙草を吸って手向けてやる』とな」
    「…なるほど」
    「……聞きたくなければ帰るといいが、今からお前にもその時の話をしてやろう」
    「帰りませんよ。お話しならば、聞かせて頂きましょう」

    ふっ、と笑い、煙を再び吐いたヴァルバトーゼは、少しだけ上を向いた。

    「あれは、そう。お前やアルティナとも出会う前の話だ──」

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    魔界というものは、いつも血腥い場所。
    あちこちで闘争や抗争が起こり、まだ歳若かった俺も力をつける程だった。
    そうした日々の中、ある男を見つけた。悪魔の羽根と尻尾があり、なぜかボロボロだった。
    魔界は弱肉強食の世界。弱った者など、後は朽ちるだけ。だから見捨ててきた。のに、何故か見捨てずに近寄った。

    「…おい、お前。こんな場所で寝るな」
    「ん……?君、は…悪魔?」
    「そう言うお前も悪魔だろう」
    「悪魔…?……ああ、そっか…悪魔だっけ…」
    「……?」

    話を聞くと、そいつは堕天使だという。
    ベルと名乗ったそいつは、聞いてもいない事の経緯を話し始めた。
    天界にいる頃、仲間たちに魔界の探検を持ちかけられたという。
    なんとなく乗ったベルは、魔界にやって来た。そして魔界の様相を見た仲間たちは、さっさと逃げ帰ってしまったらしいが、ベルは目の前で悪魔の子供が殺されそうになった時に、咄嗟に庇ってしまった。
    見捨てられなかったベルは、その子供の親を捜し回り、1週間ほど帰らずに子供の面倒を見ていた。
    それが天界にバレて、悪魔に魂を売ったと追い出されてしまったらしい。

    「…ただのアホではないか」
    「あはは…返す言葉もないや…でもね、放っておけなかったんだ。その子はもう親に渡してきたしね」
    「見つかったのか」
    「うん。でも僕が堕天使ってバレたら大変だから、途中からは影から見てたよ」
    「天使らしい、救いようのないお人好しだな。お前の仲間の者たちの方が余程悪魔に向いているぞ」
    「でも君も、そう言いながら話を聞いてくれてるよね。ふふ、ありがとう」
    「……」
    「ねぇ、君の名前を聞いてもいいかな?」
    「…ヴァルバトーゼだ」
    「うわぁ、カッコイイ名前!…あ、でも、僕の本名も中々カッコイイんだよ」
    「ほう、本名があるのか?」
    「うん。…でも、天使っぽくないって散々揶揄われて来て、ここ100年くらい本名使ってないから、まだ内緒ね」

    もうお前は悪魔だろう、という言葉を飲み込み、なぜか俺たちは行動を共にすることにした。
    ベルは腰抜けの割に、案外強かった。それこそ、俺が守るほどではなく、放っておいてもなんとかなるくらいには。

    俺が暴君の名を冠し始めた頃から、俺を狙う輩が増えてきた。
    それにより、襲撃されることが増えてきた。

    「はぁ…はぁ…っ、強いね…ヴァルバトーゼは」
    「キツいなら、別に付いてくる必要などない」
    「そんなこと言わないでよ。仲間でしょ、僕たち」
    「…いつから、お前と“仲間”とやらになった?寝言は寝て言え。そのスカスカの頭、潰されたいか」
    「ちゃんと詰まってるもんね!それにさ、仲間っていいものだよ?」
    「さすが、仲間とやらに裏切られて堕天使になった奴の言葉は違うな」
    「うぐっ……でも、仲間って別につるむだけが目的じゃないじゃない?お互いに気にし合って高め合えば、何者にも負けない力が得られると思うんだ!」

    その言葉に、何となく引っかかった。
    何者にも負けない力。

    「お前と居るだけで得られると?随分安い力だな」
    「酷いなぁ!きっと、ヴァルバトーゼもいつか分かる日が来るから!」
    「それなら、その時は感謝の言葉のひとつでもくれてやる」
    「ふふふ、言ったね?約束だからね!」
    「約束、か。…良かろう、その約束、覚えておいてやるとしよう」

    本当にそんな日が来るならな、と心の中でひっそりと付け足しておいたことは、奴にも内緒だった。

    一緒に行動するようになってしばらく、奴はたまにフラッと消えることがあった。
    それが何となく気になって追うと、何かしていた。

    「…ベル、何をしている?」
    「ぅわっ!!?…びっ、ビックリしたぁ…」
    「何だそれは?煙草か?」
    「知ってるの?」
    「話には聞いたことがある。お前は吸うのか」
    「…50年くらい前からかな。気晴らしに吸い始めたんだけど、思いの外ね」
    「天使にしては素行の悪さが目立つな」
    「かもしれないね。…っと、ごめん。煙たいよね。消すから」
    「気にするな、消す必要などない。だが、次からは言ってから吸いに行け」
    「…うん。ありがとう」

    そこから──恐らく、10年程は行動を共にした。瞬きする間の、短い一瞬だ。
    ある日、奴は急に消えた。あれ程黙って居なくなるなと言ったのに、と怒りすら募らせて捜し、ようやく見つけたその時。

    ──奴は、死にかけていた。

    見るからにボロボロにされ、身体のあらゆる場所から血を流し、口からも血が流れていた。

    「──ベルッ!!!」
    「ヴァル、バ…トーゼ…?はは…困った、な…」
    「お前っ…一体誰が何を…!!」
    「君は、知らなくて…いいこと、だよ…僕は、満足だから…」
    「満足だと…!?何をほざく!!」
    「満足だよ…こんな、僕にも…仲間が、出来た、んだ…」

    そう言う、奴の顔は確かに笑っていた。
    こんなにボロボロにされた顔とは思えないほど。

    「ねぇ、ヴァル、バトーゼ…お願いが、あるんだ」
    「……なんだ」
    「この…ことを、何も…考えないで、何もしないで、欲しいんだ…僕は、君に…手を汚して欲しくない…」
    「お前はこんな風にされたのに、その相手を庇い立てするのか!?俺たちが仲間だと言ったのはお前だろう!!」
    「ふふ…ようやく、認めたね…仲間だ、って…」
    「お前……」
    「ヴァルバトーゼ…僕のね、お墓を作って、欲しい…もしくは、僕を埋めた場所を…覚えていて、欲しい…それで、約束を…果たして…」

    約束。
    それは、『仲間というものの素晴らしさが分かったら、感謝の言葉を投げる』ということ。
    もうどうにも出来ない程にボロボロにされた奴の、願いがそれだった。

    「……分かった。その時は、言葉と煙草でも手向けてやる」
    「本当?ヴァルバトーゼが、吸うって…想像、つかないなぁ…はは…でも、守ってくれ、るなら…安心して…逝けるや…君と一緒に居た時間、僕には…悪いものじゃ、なかったよ」
    「そうか」
    「あ…後、最期に…僕の名前、ね…ベルフェーゴス…って言うんだ…」
    「ふ…俺より悪魔らしい名前だな」
    「揶揄われるから…黙ってたんだよ…でも、君なら…いいかな…はは…あり、がとう……」
    「……ベル?」
    「……」

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    「──そして俺は、奴をここに埋めた」
    「……」
    「…正直、アルティナの時に…ベルを思い出した。深く関わった者を、同じ死に方をさせてしまった。ベルのことがあった後で…今度こそ守ってみせる、と約束したのにも関わらずな」

    煙草は、とうに無くなった。
    何も持っていない彼の手は、今はキツく握り締められていた。

    「…ヴァル様」

    顔の見えない主の名を呼び、シモベは傅いて顔を下に向けて言葉を放つ。

    「わたくしには、ヴァル様の心情について何も言及することは出来ません。…ですが、貴方とお約束した通り、わたくしは月が輝き続ける限り、お仕えし続けます」
    「……フフッ。ベルよ、お前には感謝する。こんな風に、ようやく“仲間”が見つかったのだ。そして、お前にもな──フェンリッヒ」

    傅くフェンリッヒの前に、ヴァルバトーゼは手を差し出す。
    短く「手を」と言われ、フェンリッヒは恐れ多くも手を重ねた。
    その手を掬われ、短い口付けが落とされる。

    「なっ……」
    「こんな場所の、ただの戯れだ。お前にも感謝しているからな、フェンリッヒ」

    そう言って微笑み、手を放したヴァルバトーゼは、再び墓へ向き合った。

    「あの後はあれこれと忙しくて来ることが叶わなかったが……来年からは、毎年ここに来て手向けてやる。約束だ」
    「またお気軽に約束を…」
    「ククッ、良いではないか。旧友相手だ、許せ」

    満足そうに笑ったヴァルバトーゼは、そのまま踵を返す。

    「戻るぞ、フェンリッヒ」
    「もう宜しいので?」
    「用は済んだ。…今日も忙しかろう?」
    「…ええ、そうですね」
    「しばしの別れだ。また来年来るから待っていろ、ベル──いや、ベルフェーゴスよ」

    上層区から地獄へ戻り、拠点まで帰って来たふたりに、元気な声が響く。

    「おはよー!ヴァルっち、フェンリっち!…あれ?こんな朝からどっか行ってたの?」
    「ふむ、そんなところだな」
    「え、なになに?どこ行ってたの?」
    「それは──」

    言いかけたヴァルバトーゼとフェンリッヒの目が、自然に合う。
    ふたりは一間置いて、フフッ、と笑うと、フーカに目線を戻して同じ言葉を言う。

    「「──秘密だ」」

    この思い出と約束は、ふたり──いや、3人の胸の中に。
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    recommended works

    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025