ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉔話「ディアヴァルとハゲタカ」 雨が降り始めた。大粒の水滴がバタバタと音を立てて天から落ちてくる。だが、ディアヴァルは雨を避けることも思いつかず、ただ呆然と女王の亡骸によりそって涙を流し続けていた。雨と涙がいりまじり、冷えた地面へと吸い込まれてゆく。
深い悲しみの底に沈んでいたディアヴァルを現実に引き戻したのは、頭の上を過る影と大きな羽音、そして全身に打ち付ける風だった。
頭を上げると、目の前に一羽のハゲタカが降り立っていた。ハゲタカの身体はディアヴァルの何倍も大きい。風はその翼が巻き起こしたものだったのだ。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。悲しみの深みから意識が引き剥がされたばかりで混乱している彼の目の前に、更にもう一羽のハゲタカが舞い降りてきた。
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