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    Mukas

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    case669

    MEMO水底
    ウリサン
    夜の砂の家は静まり返っていた。
    夜更かしは良くないと散々幼馴染みにも言われて来たが、一度文字を追うことに夢中になってしまうとなかなか止められるものではない。多くの人が集まり騒がしい昼間と違い、蝋燭が空気を焼く音と紙を捲る音しかない静けさの中ならば止める理由もない。
    そうして今日も自室に持ち込んだ本を、ベッドに腰掛けて読み耽るウリエンジェの部屋の扉が静かにノックされる。こんな夜更けにミンフィリアやタタルが訪れる筈もない。少しばかりの不信感を抱きつつも、どうぞ、と答えて顔を上げる。
    「やっぱりまだ起きてたな」
    へらりと軽薄な笑みを浮かべて部屋に入って来たのはサンクレッドだった。同じシャーレアンで賢人の地位を頂いた男だが、特別親しいというわけでもない。むしろ流れる水のようにころころと表情を変えるこの男の事を少し苦手に思っているくらいだ。華やかに飛沫を上げて流れる水面の下に、ウリエンジェには想像もつかないような濁った川底の気配を纏わせていればなおのこと。
    「このような夜深に何か……ご用でしょうか」
    少しの緊張を纏わせたウリエンジェに構わず、ずかずかとベッドに近付き本を取り上げるサンクレッドから 977