癒しの時間【オルセイ】 あー、癒されるぅー!
心の底からそう思いながらオルテガの胸に顔を埋めた。
高い体温も柔らかながら力強い筋肉も匂いも全部好き。
疲れ切って思考力も落ちているからか、語彙力まで頼りない。
ベッタリくっついている俺を鬱陶しがるでもなく、優しく髪を撫でながら甘やかしてくるオルテガの腕が心地良い。この世界で一番安心出来る場所は間違い無くこの腕の中だ。
「あー、幸せ」
思わず零れてしまった言葉に自分で驚く。びっくりしてオルテガの様子を窺えば、ばっちり聞こえていたのか表情が緩んで笑みを浮かべていた。
「俺も幸せだ」
膝に抱かれたまま抱き締められるとすっぽり腕に納まる。このフィット感がまた堪らないのだ。ぎゅーと抱き締めてくれるオルテガの首に鼻先を擦り寄せて甘えて見せれば、彼が小さく笑い声を零す。
こうやって二人で過ごす時間が今の俺にとって最も大切な時間だ。
俺が猫だったら盛大に喉が鳴っているだろう。猫みたいに分かりやすい愛情表現が出来たらオルテガも喜んでくれるかな。
「フィン……」
逞しい首に腕を回して抱き付きながら体を擦り寄せる。愛おしくて愛おしくて仕方がないのに、それを伝え切る術がわからない。
この胸のうちにある想い全てをあげられたらいいのに。
「どうした?」
優しく訊ねながら大きな掌が頬を撫でてくれる。熱い掌が心地良くてうっとりしながら頬を擦り寄せて甘えてみせた。
「好きだ。大好き」
黄昏色の瞳を見つめながら告げれば、彼の頬がじわじわと赤くなっていく。そんな様子が可愛らしくて愛おしくて。
「……お前はどこでこういう事を覚えてくるんだ」
掌で顔を隠してしまうのが惜しいが、耳元や手の隙間から赤くなっているのが見える。その反応がまた可愛い。
「照れているのか? 可愛いな」
揶揄う様にくすくす笑みを零して深い宵闇色の髪を撫でてやる。いつもと逆転しているのも少し楽しくて甘やかしてやりたい気分になった。
膝を跨ぐように膝立ちして正面からオルテガの頭を抱き締める。
胸の音が届くだろうか。お前に触れる事で弾むこの胸の音が。
オルテガの頭を抱き締めながらつむじにキスを落とす。応えるように腰に腕が回り、抱き締めてくれた。
正直、ちょっと辛い体勢なので支えてくれるのはありがたい。
「ふふ」
抱き締めたままの頭に頬を擦り寄せて藍色の硬い髪に鼻先を埋める。オルテガが良くやる行動の真似なんだが、なんかこうクセになりそうだ。オルテガがやりたがるのも分かるな。
二人きりの室内は静かで、お互いの気配しかしない。その静けさがまた心地良くて愛おしい。
忙しい日々の合間、こうして二人きりで過ごす事が出来る。
それだけで幸せだ。