路地裏に至る病〜虎の瞳―——トン、トトン
———トットントン、トン
「如何した敦、手が止まっているぞ」
とある爽やかな昼下がり、大きいのも小さいのも事件らしい事件の依頼が無い穏やかな武装探偵社にて。作成途中の報告書を目の前にした儘の敦は上司の国木田独歩からそう指摘される。
「顰めっ面をして何やら考え込んでいる様に見えたが……」
「え?」
「指を口元に当てて、こう、トントンッと叩いていたぞ」
「!!??」
国木田の仕草を見て、敦は自分の無意識の行動にドキッとした。思い当たる節がありまくる。
「そそそ、そんな事をしてましたか、僕!?あ、いや、昨日の仕事の経緯を詳しく思い出していただけですっどう報告書に纏めようかなって!!」
「そうか、確り励めよ。呉々も迷惑噴霧器の様な人をおちょくった報告書など出すな」
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