太宰誕生日小話 何だか腑に落ちない。
憮然とした顔で太宰は横で眠る男を眺める。心地悦さそうな寝息を立てているその男はひどく満足そうな表情を浮かべていた。
太宰と中也は何時も悉く噛み合わない。
太宰がしたいと思う時には中也がその気でなかったり、逆に中也が盛ってる時には太宰が乗り気でなかったりする事が多い。何方にせよ結局の所お互い迫られるとその気になってしまうから、躰を重ねる事になる訳だが。
中也の感性も嗜好も何もかもが合わないし気に喰わないけれど、躰の相性は抜群だから不思議だ。でも、今日に限っては本当にそんな気分ではなくて、況して『誕生日だから』と態々宣って迫って来た相手に屈したくはなかった。なのに結局こうなってしまっているのは何故なのか。若しかして、自分も存外欲に流され易いのかもしれない。
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