表情筋「あんまし笑わないよね」
ルガディンの顔にかかる前髪をかき上げたヴィエラが呟いた。まじまじと見つめてくる彼女に彼が溜息を吐く。
「常に笑顔のルガディンというのも不気味だろう」
そうかな、と彼女が手を伸ばして来た。くい、と彼の口角を上げしばらく眺めてから吹き出した彼女がごめん、と笑いながら謝る。別にいい、と目を閉じた彼の口角をしばらく彼女は楽しそうに上げ下げしていた。ぶに、と彼の頬を彼女のしなやかな指が挟むように押し潰す。
「……楽しいか?」
大人しくされるがままだった彼の質問に対し、頬の感触を楽しむようにむにむにと彼女は触り続けていた。
「わりとクセになる感触」
その間も止まらない手の動きからお世辞などではないとわかった彼がそうかと呟く。
「あ」
「どうした?」
「今めちゃくちゃ良い笑顔だったのに……」