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    いちろ。

    @ichiro1107_1

    赤安。
    書いてるのはわりと暗めが多いかも。

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    POIPOI 17

    いちろ。

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    夢の中の登場人物
    ・ライバボ(純組織しゅ×ハムれいくん)
    現実の登場人物
    ・「僕」:元店員、現在「大家さん」の元で療養中。
    ・大家さん:「僕」が働く店の常連。医師らしい。療養が必要な「僕」を自宅に住まわせている。

    #赤安
    #ライバボ
    mother-in-law

    夢に焦がれた小夜啼鳥は。③バーボンがライを殺した。夢から跳ね起きた僕は今までにないくらい背中がびっしょりと濡れていて、僕の体は恐怖でしばらく震えが止まらなかった。バーボンが浴びた返り血の感触が残っているのも恐ろしかったが、何より恐怖したのは拳銃を発砲した時の反動が寝起きのはずの僕の手にしっかりと残っていることだった。

    「夢、なんだよな……?」

    誰かに肯定してほしくて寝起きのかすれた声で呟いてみる。当然その問いに答えてくれる人間はいなかった。実在する部屋を舞台にした夢の中の殺人事件。あの時撃っていなければ、バーボンがどうなっていたかわからない。ライの言葉を信じるとすれば命までは奪わないと言っていたが、どんなに特殊な関係を築いていたとしてもあいつは組織側の人間だ。裏切られ拷問されていた可能性もあったと考えると、バーボンの判断は正しかったと思う。彼はあの後どうしたんだろうか。古巣に戻ったのだろうか。それとも、そのままライの死を偽装して潜入を続けたのだろうか。 

    その後の彼の動向は読めなかったが、彼がライを撃った後、放心状態の中で人知れず泣いていた事だけは知っている。だって目が覚めたとき、僕の頬は濡れていたから。きっとこの涙はバーボンの嘆きだったんだと思う。バーボンは確かにライに惹かれていたけれど、同時に諦めてもいたんだ。いつかこうなる日が来ることはわかっていたから。だから、ライに想いを告げられても割り切った身体の関係を保ち続けた。この関係が不毛なものであることもわかっていながら、終わらせることを先延ばしにした。それでも、ライと少しでも長く居たいと願う思い。それは命懸けの任務の中で唯一、”降谷零“と呼ばれたあの男の中にバーボンとして芽生えた私情だった。

    汗でべたつき、額に張り付いた前髪を払う。少しだけ視界がクリアになったところで、僕は夢の見分をしてみることにした。やっぱりこのまま、あれをただの夢だと割り切ることはできなかった。人が一人死んでいるのだから現実でなければ勿論それに越したことはないけれど、もし本当にこれまでの夢が過去に起こっていたことだったなら、僕はその結末を見届けたい。

    起き上がり、ライが倒れこんだシーツを撫でる。ここ数日僕が寝ていたそこには当然のことながらシミ一つ見当たらない。真っ白なシーツからも、どこにでもある有り触れた洗剤のフレグランスの匂いがするのみで、血や硝煙の香りはしなかった。

    ベッドを降りようとすると、思うように力が入らず一瞬ふらついた。すぐ脇の鏡台に手をついてなんとか体を支え、呼吸を整えてからその場に屈みこんでベッド下を観察してみる。夢の中でバーボンは負傷こそしていなかったがライの返り血を浴びていたから、もしあれが現実に起こったことなら、どこかに血痕が残っているかもしれない。床にはいつくばって木目の一つ一つまで入念に見てみたが、それらしいものはなかった。やっぱりあれは僕が作り出した空想の世界の話だったのかと安堵する一方、微かにその事実をさみしいと感じている自分に苦笑する。

    ふと、ベッド脇に違和感を覚えて立ち止まる。ベッドも箪笥も折り畳み式の簡易テーブルも夢の中で割れたはずの鏡台もすべて位置までそっくりそのまま変わらない。

    「あれ……?この鏡台……、」

    いや待て。違う。この鏡台は明らかにおかしい。ほかの家具がすべて夢と同一のものであるのに、この鏡台だけは、窓に近い場所にあるというのに日焼けもしておらず年季の入り方が新しい。まるで購入してまだ日が経っていないみたいだ。あれがいつの出来事なのかはわからない。だがこれがもし、あの事件の後に買い替えられたものだったら……?
    真相に迫っているという高揚感に身を震わせながら、僕は鏡台を両手で掴むと床に傷をつけないように気を配りながら壁際へと数メートルスライドさせた。

    「やっぱり、夢じゃなかったのか……」

    鏡面に覆われ隠れていた壁の中心には、バーボンがライに向けて放った一発目の弾痕が、くっきりと円形のヒビを描いていた。

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    いちろ。

    DONE夢の中の登場人物
    ・ライバボ(純組織しゅ×ハムれいくん)
    現実の登場人物
    ・「僕」:元店員、現在「大家さん」の元で療養中。
    ・大家さん:「僕」が働く店の常連。医師らしい。療養が必要な「僕」を自宅に住まわせている。
    夢に焦がれた小夜啼鳥は。③バーボンがライを殺した。夢から跳ね起きた僕は今までにないくらい背中がびっしょりと濡れていて、僕の体は恐怖でしばらく震えが止まらなかった。バーボンが浴びた返り血の感触が残っているのも恐ろしかったが、何より恐怖したのは拳銃を発砲した時の反動が寝起きのはずの僕の手にしっかりと残っていることだった。

    「夢、なんだよな……?」

    誰かに肯定してほしくて寝起きのかすれた声で呟いてみる。当然その問いに答えてくれる人間はいなかった。実在する部屋を舞台にした夢の中の殺人事件。あの時撃っていなければ、バーボンがどうなっていたかわからない。ライの言葉を信じるとすれば命までは奪わないと言っていたが、どんなに特殊な関係を築いていたとしてもあいつは組織側の人間だ。裏切られ拷問されていた可能性もあったと考えると、バーボンの判断は正しかったと思う。彼はあの後どうしたんだろうか。古巣に戻ったのだろうか。それとも、そのままライの死を偽装して潜入を続けたのだろうか。 
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