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    深山蒼

    @ao_mtsu

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    深山蒼

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    『I need you. -解ける春-』の備忘録
    いつものやつ、今回の内容のネタバレあり、読まなくても問題なし

    前回の『I need you. -触れる冬-』の続き、季節のからいち2作目の春の話です。
    『触れる冬』は元々単体で読める話だったので一応綺麗に終われるような締め方でしたが、今回は起承転結の承にあたるのでただでさえゆるやかなシリーズの中でもおそらくぱっと見で一番起伏がない内容…なのは仕様です!でも見えないところで結構進んでると思います。

    表紙は冬と春同時に描きました。下書きは冬を描いてる時点で両方できてましたが、本は同時発行だったので結構あとのほうに一気に仕上げた感じです。
    季節のからいちは4部作予定なので、季節ごとに色分けしたらかわいいんじゃないかと思い、冬は青色、春は桃色で統一感を出すようにしました。遊び紙も合わせています。いつも色塗りで青と紫になりがちなので、テーマカラーを決めて仕上げていくのが楽しかったです。夏と秋が何色になるかはお楽しみに~!
    あといつもは裏表紙も絵を描いてるのですが、今回はシリーズものということであえてシンプルにしました。いつもギチギチに詰め込みたくなっちゃうのでたまにはこういうのもいいかなって…(裏表紙シンプルな感じやってみたかった)
    印刷もとても綺麗で嬉しかったです。
    冬の表紙の雪が薄すぎたのか一部消えててびっくりしたのですが、その消え方が雪が溶けているようにも見えて結果的にいい感じかな!と思っています。

    タイトルの『解ける春』について
    ①雪がとける
    ②蟠りがほどける
    ③謎がとける
    のトリプルミーニングのつもりでつけました。
    「解ける」っていろんな意味があっていいな…!

    今回の話で象徴的なモチーフは、手です。
    ①2ページ目の四男の手(雪が乗ってる)⇔最後から3ページ目の四男の手(桜が乗ってる)
    ②5ページ目のふたりの手⇔6ページ目のふたりの手⇔最後から4ページ目のふたりの手
    はそれぞれ対比になっています。
    特に②の手はすべてページ下部のコマに統一しています。

    一松にとって、
    雪=理由です。
    次男が触れてくれる理由、冬の最後と今回の布団の中で抱きしめてくれた理由
    冬の最後、次男は四男を抱きしめたときに「あったかい…」と言っています。
    次男の「あったかい…」は身体だけではなく心が、なのですが、四男は寒いから抱きしめてあったかいのだと受け取っているので、今回も冒頭からずっとそう思っています。
    冬のラスト、ハッピーエンド感出してましたが自からいちがあんなに簡単に相互理解できるわけがないのです。
    とはいえ、四男にとっても次男にとっても、冬のあの夜は昨日までとは少し違う特別な夜なので、ちょっとだけそわそわしてなんとなく浮かれていて、ほんの少し寄り添うように眠っています…。カワイイ。

    四男の「毎日言わなきゃダメ?」は、冬の夜に次男と約束した「毎日次男に必要だと言うこと」。自分のタイミングで傍にいてほしいときに時々言うのと、毎日言わされるのとではやっぱり違うので…殴りたくなっちゃうのはしょうがない。
    その代替案が「手を握る」。相手が他人ならそっちの方がハードル高いのでは?と思うのですが、ふたりは兄弟なので握手程度の接触は四男にとってはむしろ気が楽なんだと思います。四男は口に出して言うのは苦手そうだなって思うので。それに、言うのは一方的だけど握手はお互いがやることなので、なんとなく手を出したら次男が握ってくれるだろうし、求められる能動性の低さに軍配が上がった感じです。
    でもどう考えても今のふたりにとっては、言葉を交わすよりも身体が触れ合う方が互いへの影響力が高いと思います。実際めちゃめちゃ影響が出ました、主に次男に…。

    四男が木を見上げているコマ、木につぼみが付いていて徐々に春が近づいているのを四男は気にしています。なぜなら、寒さは四男にとっての理由だから。今のこの手を握る習慣も、季節が変わってあたたかくなればわざわざ触れるようなことはしなくなるだろうと漠然と思っています。それはそうと、その下のコマの次男の顔めっちゃ好き。

    「銭湯の宿命(さだめ)…」のところで、次男はあの夜のことを思い出して、同時に四男の手が離れていくことに喪失感を覚えます。咄嗟に抱きしめた背中、「冷えてるか?」なんて。次男にとって雪=寒さは、理由ではなく口実。
    「まるで同じものになったような気になる そんなこと、ないのに」
    突然抱きしめられると、次男が自分と同じ気持ちに…なんて淡い期待を一瞬抱きそうになる四男ですが、自分が必要と言ったから与えられていて、寒いから抱きしめられているだけだと理解しているので、はみ出しそうな自分の気持ちや期待を封じ込めています。
    抱きしめられる理由はいつか、雪みたいに溶けてなくなる。
    「それまではもう少しだけ」が四男、二度目の「もう少しだけ」が次男の心の声です。
    四男は理由を、次男は口実を、冬の寒さにそれぞれ見出しているので、もう少しだけ今が続いてほしいと思っています。

    四男は、今の次男との関係を【自販機】だと思っています。
    誰でもお金さえ入れれば飲み物を与えられる。次男にとってのお金は「必要」という言葉。四男にとっての飲み物は「次男と過ごす時間」。フリーハグに立つ次男はまるでその通りで、思わず笑ってしまいます。やっぱり誰でもいいんじゃん、って。

    一方の次男は、春になって四男を抱きしめる口実を失い、無性に人肌恋しくなってフリーハグに赴きます。あくまで次男は自分の美学でフリーハグを行っているつもりですが…でもその合間に四男のことを思い出してむずむずしています。むずむずして、掌を見て、ぎゅって俯いているこの一連の流れが好きです。サングラスの次男って目が隠れると表情が不明瞭になるところがいいですよね。

    フリーハグに来ちゃう四男ンンンンン!自分だとばれなきゃいいと思ってます。兄弟の自分がフリーハグに行くのは変だけど、赤の他人ならおかしくないから。四男もまた次男に抱きしめられた感触を、体温を忘れられない。一度知ってしまったら、毎日手を握るだけでは満たされなくなってる。
    次男は初め四男に気づいてなかったのですが、抱きしめた瞬間に四男だとわかります。抱き合っているコマ、桜が降っているのですが途中から雪に変わっていて、次の次男の顔のコマも完全に雪になっています…この瞬間、次男はあの夜を思い出しているから。
    「それはなんか違うかなって、兄弟だし」のところ、次男は「あ」と思っています。四男が兄弟じゃだめだと思っていることを知って、でも次男は自分を求めてくれる四男を絶対に手放したくないので上手いこと言って四男を納得させようとしています。(人類皆兄弟はほんとに上手いこと言ったなと思います)

    ふたりが一度失った「寒さ」という曖昧な「理由(口実)」を、春になった今次男が「フリーハグ」という形で四男に与えています。その象徴が、次男が四男に桜の花びらを渡す行為。溶けてなくなると思っていた「理由」を次男にもらえて、四男はとてもとても嬉しいのです。掌の雪⇔掌の桜の対比はここにあります。雪は溶けても、代わりに溶けない花びらをもらえた。嬉しくなってる猫ちゃんかわいい。
    6ページからずっと次男が手を伸べて握手を求め、四男が手を差し出して与えていたのですが、ここでは手の上下が逆転しています。次男が花びらを与えて、四男が受け取る側になってる。冬の初めに比べると次男がどんどん能動的になっています。四男が必要としているように、次男もまた四男を必要としている…冬の終わりからその感情は加速し、無自覚だった次男に徐々に気づきを与えています。解けるの3つ目の意味はここにあります。

    『FREE HUG』の看板、四男の帽子がかかって『FREE』が見えなくなっています。つまりそういうことです…。四男とハグしたあとも次男は引き続きフリーハグに立っていますが、正直もう誰も待っていません。次男の空白をぴったりと埋めるピースはずっと右下にいるのです。その子にまた来てもらえるように、今は口実の延長でなんとなく立っているだけです。

    奥付のクッキー缶は四男の宝物入れです。


    四男は自分の意識や認識の面では自戒を繰り返すけど、そもそも最初から「必要だ」と言って次男の時間をもらうぐらいには次男に近づくことに対して積極的で(どうにかなろうとは思っていない)、次男もまた本能の赴くままに四男に近づくようになっているので、なんというか…相互不理解ながらもじわじわと同じ方向に流されていっているふたりが可愛いなと思います。
    同じ家にずっと暮らしてる兄弟だからこそ答えを急がないし、曖昧でも傍にいられるし、曖昧な方が傍にいられることをなんとなく感じているから答え合わせもしないし、元々兄弟の愛着があるから余計に感情はグラデーションで、四男の言う通り距離感も境界もあやふやになってる…けれど、その中でも時折自分を突き動かす正体不明の感情に、相手の言葉や表情や行動に、少しずつ気づき始めるような…そんなからいちを描いていきたいです。

    ここまで読んでくださりありがとうございます!
    次は夏のからいち!今回よりは確実に動きあり!なのでよろしくお願いします~!そのうち描いてツイッターに載せていきますのでよかったら見てください♡
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