ルクジェミが結婚するHappy Halloween
10月30日。
このジェイミー・ショウの誕生日の夜。
いつものように恋人の家に遊びに行った。
玄関で、カボチャバケツにたっぷり入った駄菓子を受け取る。
「誕生日プレゼント?」
「そう。アジアンマーケットまで買いに行ったんだぜ。」
「へぇ、ありがとな。」
この街では見かけないような懐かしい駄菓子が、沢山入っている。とても1日2日じゃ食べ切れなさそうだ。
リビングへと向かい椅子にかけるオレを、ルークはジッと見つめたまま、テーブルを挟んで正面に座った。
…ハロウィーンと誕生日を一緒くたにされんのは、もう慣れたもんだ。
「…本当に嬉しいよ、ルークありがとう。」
正直、何も考えてない訳では無かった。
付き合って3年目になるし、去年はお互い休みが合ったからレストランでコース料理を食べた。
今年は…何かこう、2人の仲が進展するような、例えば…同棲とかさ…いや、贅沢だな。
オレが "誰か" や "何か" 宝物を持とうだなんて、考えちゃいけない。
…そんなの高望みだ。
「喜んで貰えて良かった!色々種類があるから、中身も見てみてくれ。」
「そうだな。SNSにもUPしようかね…」
1つ1つ、手に取ってテーブルに並べる。一体いくつあるんだ?エンドレスだ。暫くバケツに手を出し入れして、ようやく底が見えてきた。
大きなバケツの一番底には見慣れない、黄色の丸いケースが入っている。
「これは?」
こんな駄菓子知らないけど…?と思いながら数回放って手でキャッチして、ケースを開いてみた。
「ジェイミー、俺と結婚してくれ。」
銀色の指輪が目に映ると同時に、ルークの畏まったような声が静かな部屋に響く。
昨年末、アメリカでは全ての州で同性婚が認められた。
どうやらルークはオレ以上に色々考えて動いてくれてたらしい。
椅子に座るオレの前に跪いて、薔薇の花束を差し出しているルークを見て、オレはただ黙って頷く事しかできなかった。
声を出すと泣きそうだ。オレが黙っているのを見てルークは優しい顔で微笑んだ。
「プロポーズを受けてくれてありがとう。嬉しいよ。絶対お前を幸せにする。」
呆然とするオレの膝に花束を押し付けて、優しい声で語りかけながらオレの薬指に指輪を嵌めてくる。なんてスマートなやつ。
「…ピッタリじゃん。オレの指のサイズ知ってたのかよ」
「酔い潰れて寝てる時に勝手に測った。」
「あの時か…」
「そう、お前のアイライナーちょっと借りたぜ。」
「だよなぁ、あの時スッピンだったのに、起きたら手にライナー付いてっから何でかなって思ったんだよ。」
「うん。ごめん。愛してるよジェイミー」
「…ルーク、ありがとな。こんなに嬉しい事ってないぜ。」
「ああ。絶対幸せにしてやる。」
「それはオレの台詞だ。」
「うん。2人で幸せになろうな」
「ああ…ジェイミー・サリバンてどう?」
「可愛いよ。ルーク・ショウでも良いけど」
「んーん、オレがお前の物になりたいの。」
「…俺もとっくにお前の物だぜ、ジェイミー」
感極まって潤んだルークの瞳が、朝日を反射した湖面のようにきらきらしている。
きっとオレも同じような顔をしているんだろうな。
大好きなルークの家で、夫となる恋人の腕に優しくハグされて。
オレたちは、誰にも見せずに初めて2人だけの誓いのキスをした。
end