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    hak0be

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    現パロフリアメ♀🔔さん回想ハンベルは旧華族の流れを汲む由緒ある一族の分家筋に生まれた。
    士族の流れを汲む、これまた由緒ある一族の娘と見合い結婚をし、娘を一人設けた。
    妻は武道を嗜む強くて健康的な女性であったが、二人目には恵まれないまま、娘が15歳の時に難病を患い、なんとか娘の成人を見届けてこの世を去った。
    娘は無事に大学を卒業し、働き始めた。
    そして数年後、この人と結婚したいと一人の男を連れてきた。
    娘の大学のサークル仲間であったというその男は、特段貧しくはないが裕福でもない、ごくごく普通の家庭出身の男だった。
    ちょうどいくつか縁談を娘に持ち込もうとした矢先の出来事だった。
    ハンベルは内密に男の身辺調査を行い、問題のない人物であると、確認した後、愛する娘の愛した人ならば、と結婚を許した。
    ハンベルの家は分家筋であるし、一族は大勢いる。別の分家の次男坊や三男坊に家督を譲れば良いだろうと思った。
    娘と男は結婚し、しばらくして可愛らしい女の子を授かった。娘夫婦はその子をアメジオと名付けた。孫というのはハンベルが思っていた以上に愛しい存在であった。娘と男も相変わらず仲睦まじく、このまま幸せな日々が続くと思っていた。
    ある日、娘夫婦が亡くなった。たまには夫婦二人だけで、とハンベルに4歳になったアメジオを預け、夕方には帰ってくるからね、と娘がアメジオの手を握ったのが、親子の最後の触れ合いだった。
    その日、娘夫婦はスキー場への日帰りツアーに参加した。移動中の観光バスがスリップを起こし崖下に転落した。生存者は幾人かいたが、二人は帰ってこなかった。
    ハンベルは悔いた。もし娘が自分が持ち込んだ縁談の誰かと結婚していたら、こんな安っぽい観光バスに乗ることなど無かったのに、と。
    一人残された孫は、ハンベルと養子縁組を組むことになった。男の両親も存命だったが、定年を迎えた初老の夫婦が4歳の子を大学まで育て上げるのはきつかろう、と、相手方を説得し、了承をもらった。
    本当はもう二度と会わせたくも無かったが、アメジオが二人に懐いていたことと、あまりにもアメジオの環境を締め付ければ反発は必至とみて堪えた。
    アメジオには、幼稚舎から大学までエスカレーター式の女学校に通わせた。女子大ならサークル仲間の男など連れてこない。
    本当は大学卒業後は就職せず花嫁修業期間を過ごした後見合い結婚をしてほしかったが、時代の潮流とアメジオが許さなかった。
    一度お祖父様の力を借りずに暮らしてみたいんです。と就職後はひとり暮らしをしたいと言い出した。もちろん反対した。だがアメジオは頑固で、色々と妥協した結果ハンベルの選んだマンションに入居することになった。職場からは少しばかり距離があるが、オートロックのしっかりしたマンションだ。
    これであと数年。あと数年アメジオがキャリアを積んだら見合い話を持っていく。今度はもう危険なところになんていかせない。私の大切な孫娘。どうか私の側で幸せに笑っていてください。


    嗚呼、それなのに。あと少しだったのに。
    あの男が私の大切なアメジオを誑かしたのだ。
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