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    haku_ginxxx

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    いつか完結させたい快新
    なんかシリアスっぽい?

    #快新
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    快新書きかけ工藤新一の初恋が淡く散ってしばらく、訪れた第二の恋もまた、前途多難なものだった。
    相手は大学の同級生、かなりモテる人物で相手を取っかえ引っ変え……、と、までは言わないが、恋人が途絶えたことが無いような人物。
    たいそうモテる、というだけならまだ新一にだってチャンスもあったかもしれない、しかし相手はなんと同性である。大学内で黒羽快斗の名前を聞いて知らないなんて言うやつはモグリだと笑われるくらい、彼の人気は不動なもので彼を思う女性なんて掃いて捨てるほどいた。大学一のプレイボーイ。…そしてその上おそらく元好敵手。証拠はないけれど確信はあった。
    イケメンで、人当たりが良く気さくで人気者の元大怪盗、方や新一と言えば血腥い事件ばかりを追って欠席やドタキャン等も多い現役探偵。
    つまりそう、本当に本当に前途多難で一縷の望みすらも薄い恋なのだ。
    何度も諦めようとしたし、勘違いだと思いこもうとした、そうする度に好きだと自覚して、彼の隣に立つなんの罪もない女性に嫉妬して。あまりの不毛加減に笑いさえ込み上げてついうっかり相棒に吐露し喝を入れられたものだ。
    思いが積み重なって喉を塞いで息が苦しくて仕方なくなった時、大学生活最後の夏の事。
    耐えきれなくなって抑えきれなくなって、新一は相手へ、黒羽快斗へと思いを伝えた。
    それは夕暮れの大学帰り、人気のない道端での事だった……。

    ー 好きなんだ、お前の事が。俺の隣に帰ってきてくれるなら一夜限りの過ちを責めたりも、行動に口出しもしねぇ…。だから……付き合ってくれないか?

    可能性を願って強がりを込めて新一は確かにそうやって告白した。快斗はそれにYESと答えた、前途多難であった新一の恋は実ったのだ。
    あれから二年。
    二人の関係は、恋人、という枠に収まり続けている。
    これだけ聞けば大団円のハッピーエンドと思うだろう、けれど、あれから二年、二年だ。それだけたっているにも関わらず、二人の関係は手を握る、キスをする。それ以上に進展はしなかった。つまりはそう、…そういうことなのだ。





    KAITO KUROBA 満を持して日本に降臨!東洋の魔術師はここから生まれた!
    そんな見出しが踊る微笑を浮かべ此方へ手を伸ばす顔面偏差値カンストした男が表紙の雑誌が本屋に平積みされていて、目の前の女性が恋する乙女のような顔で一番上のそれを手に取りレジに向かうのを見た新一は伸ばしかけた手を止めて踵を返した。
    アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国と、海外公演を次々とこなしやっと日本に帰ってくる恋人は半同棲生活をおくっていた工藤邸には帰らず、日本公演が終わるまでホテルでスタッフ達と過ごすとの連絡が来たのは快斗が帰国する少し前、五月の初めの事だ。
    日本では、福岡、大阪、宮城、そして最後に東京で自分の誕生日に合わせてイベントを行い終了となる。実際の誕生日にやる訳では無いが、誕生日月と言うことでファンの間では大盛り上がりであった。日本でこんにもマジックショーが注目を集め盛大に行われるのは初めてで、黒羽快斗が社会現象を巻き起こしたと言っても過言ではない。異例なこの事態だが、会場は満員、チケットは即完売で今ではプレミア付きである。テレビを付ければ何処かで彼の名前が出るし雑誌でも特集が組まれている。新一は恋人としてそれを喜ばしく思っていた、嬉しいと、誇らしいと感じている、嘘ではない。
    しかしこれほど活躍しているのだ、当然ながら快斗はとても忙しかった。送ったメッセージに既読が着いても帰ってくる事は稀であったし、電話してもなかなか出てくれず、出たと思ったら無愛想であったりと彼の疲労は新一には計り知れない。そんな事が何度も続くと流石に控えるようになった。……例え、どの国でもSNSで黒羽快斗と現地の女性の密会が上げられても、名前を初めて聞くアイドルとの熱愛が報道されても、新一が事件に巻き込まれ怪我をしても、急を要する事以外連絡は最小限に抑えていた。
    全ては、快斗を繋ぎ止めていたいがための行動、鬱陶しいと、重たいと、そう思われて捨てられてしまうのが怖かったのだ。
    「……今年は、駄目だったな……」
    結局何も買わずに本屋を出てポケットに手を突っ込み小さくため息を吐く。
    付き合ってから快斗は、以前から知っていたのであろう新一の誕生日におめでとうの言葉をくれた。何か物を貰った記憶はないが、新一にとって誕生日を記憶してもらえていただけで飛び上がるほど嬉しい事で、毎年毎年自分の誕生日を忘れてしまう新一がその年から少しだけ、その日を待ち遠しく思うようになったのだ。と、言っても付き合ってまだ二年、今年が二回目の誕生日だったわけだが、快斗のツアーと被ってしまったため元々期待はしていなかった。けれど、その日にメッセージくらいは…なんて淡い願いも打ち砕かれ、次の日の夜に「そう言えば昨日誕生日だったよな、おめでとう」なんて素っ気ないものが届いていた。それだけで嬉しいと感じてしまう自分にほとほと嫌気がさすのだが、快斗に今以上を望む勇気など新一にはない。
    快斗にとって、新一の誕生日など「そう言えば」で済んでしまう様などうでもいい事なのだろう。思い返せばお互いの誕生日だけでは無い。クリスマスだって年越しだって共には過ごせなかった。新一は、快斗への誕生日プレゼントもクリスマスのプレゼントも用意していたのに過ごすことが出来なければ渡す機会も失って、あっても困らない物をと選んだコートやスーツ、マフラーの類は工藤邸にある快斗の部屋のクローゼットにそっと忍ばせていた。まぁ、笑える事にそれらに気付いていないのかはたまたあえて無視をしているのか、着ているのを見た事もそれについて問われたことも無い。
    これが思いの差なのだと突き付けられているみたいで気分が悪くなる。
    六月に入り快斗は今日から日本公演のラストである東京でのショーに入る。東京に居るのに工藤邸には寄らない、日本にいるのに新一には一度も会いに来ない。
    快斗は新一に、一度だってチケットをくれた事も、見に来てくれと頼んだ事も無い。以前、快斗からチケットを譲って貰えないかと邪な考えを持って、直接的ではないがそれとなくチケットの入手について聞いた時、平等に行き渡らせる為誰であっても贔屓はしないようにしていると返ってきた。その言葉を聞いてしまえば、恋人の特権を振りかざすなんて真似出来るわけがなく、それ以上新一はその話題すら出さなくなったのだ。
    「……なんで、快斗は、付き合ってくれてるんだろうな…」
    だからこそ、新一は自分に出来るありとあらゆる手段を使い自力で快斗のショーのチケットを入手して見に行っていた。
    今回のアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国もチケット戦争に参戦し、なんとか三公演は入手して、アメリカとフランス、ロシアへこっそり見に行ったのだ。
    見に行けなくても、楽屋には毎回同じリボンで飾り付けした花束を匿名で送っている。
    舞台上の快斗は自由で楽しそうでこの世界で一番輝いていて、怪盗時代のショーを髣髴とさせるも全く異なる黒羽快斗のマジックは、まさに魔法なのだ。一度見たら誰をも虜にして離さない、そんな魅惑的な時間なのだ。
    日本の公演では、新一の誕生日が福岡公演一日目であった、その為何としてでもその日に行きたかったがチケットは取れなかった。しかしながら最終日の夜公演のチケットを奇跡的に入手出来た為それだけが救いのように思える。
    探偵として収入を得ているが、それら全て快斗に注ぎ込んでいるような状況でこんなのまるで、まるで……。
    「……ストーカーじゃねぇか……」
    声に出して呟いてしまえばその事実が重くのしかかって思わず唇を噛んだその時。
    「あれ…、快斗?」
    横をすれ違った女性が、こちらを見ては驚いたように目を見開いたあと嬉しそうに微笑み手を振って近づいてきた。
    「福岡公演以来だねー!あの時はチケットありがとう!しかもめちゃくちゃ良い席でびっくりしたわ。ほんと助かっちゃった!」
    「ーーーえ?」
    無邪気に笑う女性、モデルの様なスラリとした体型に女性らしいふくよかな胸。長い亜麻色の髪を巻いて動く度ふわりと嫌味のない甘い香水の香りが鼻を擽ってーー。
    新一の頭は、面白いくらいにフリーズした。
    顔立ちこそ似ていて、大学入学当時はよく間違えられたが、卒業してから体格もさることながら纏う雰囲気も違うから見れば一発で解るよ、と馴染みの深い人物から断言されていた為、久々に間違えられた新一は困惑し、否定するのが一歩遅れた。そんな新一の様子き気付くことなく彼女は明るく笑いながら言葉を続けていく。
    「しかも五月四日って私の誕生日でさ、サプライズされたみたいでちょっとときめいた。……でも、確か快斗恋人居たよね?私にこんな事してないでちゃんと構ってあげなよ?」
    びしっ、と指差し目を細めてからかうように声をかけるその姿は、リードしてくれる大人の女性で…、大学時代快斗が付き合っていた歴代の彼女達を思い出せば妙に納得してしまい、新一の中でストンと、何かが落ちてかちりと嵌った。
    「それじゃ、私いくから。またご飯でも行こうね!今度は私が奢るよ」
    じゃあね、なんて笑った彼女は手を上げて振り返ること無く颯爽と去っていく。新一はその後ろ姿を黙って見ている事しか出来なかった。
    贔屓になるから特別なチケットは用意しないと、快斗は言っていた。
    新一は、誕生日なんて祝って貰えなかった。
    最後に二人きりでご飯を食べに行ったのはいつだったか思い出せない。
    隣にいてくれるなら、そばに居てくれるなら、何をされたって構わないと思っていた。今でも思ってる。現にこんな散々な現実を突き付けられても隣に居られる特権を手放したいと思えない。けれど……。
    「……俺と居ることは、苦痛だったのか?快斗」
    それが愛おしい彼を追い詰めていたとしたら、息苦しいと思われていたとしたら?
    負担に、感じられていたとしたら?
    そんな事は耐えられない、そんな風に居たかったんじゃない。
    はっ、と短い呼吸が新一の口から零れた。それが笑い声なのか泣き声なのか新一自身分からないことで。ただ目眩を起こしたように目の前が揺らめいて周りの雑音が一気に遠ざかった。
    気分が悪い、吐き出してしまいそうになってぐっと唇を噛む。
    気を抜けば膝から崩れ落ちてしまいそうになった時、ポケットに入れたままのスマホが震え、反射のように取り出して耳に当てる。
    「ーーはい、工藤です」
    不謹慎だが事件に呼ばれたことに心から安堵した。今は、余計な事を考えたくなかったのだ。






    ◆◆◆◆




    黒羽快斗には秘密がある。
    それは、元国際指名手配の大怪盗であった事と、その時出会った探偵、しかも男を好きになった事。
    出会った当初は相手の姿は小学生。恋と呼ぶにはまだ遠い感情であったのだが、確実にその時には惹かれていたと言いきれる。それ程に印象的な目を、彼はしていたのだ。何度も現場で出会い、関わっていくうちに恋かもしれないと気付き、それが確信に変わる前に快斗は怪盗を引退したが、大学でうっかり再会し元の姿に戻った相手を、工藤新一を見た時卒倒するかと思うくらい胸に強い衝撃を受けた。実際動きが止まってしまい隣にいた白馬に怪訝な顔をされたものだ。
    工藤新一は美しかった、神秘的でミステリアス。耽美を追い求めれば工藤新一へと辿り着くんじゃないかと本気で信じるくらいに彼は完成された芸術品になっていたのだ。
    事件を追ってふらりと誰にも悟られず居なくなることや気だるげな伏し目がちの姿が神聖過ぎると高嶺の花扱いで大学内では抜け駆け禁止を強く強いられ、工藤新一の名を知らない人間は日本人ではないとさえ言わしめていた。
    そんな新一に惚れてるなんて奴は男女問わず腐る程いて、快斗は気を紛らわせる為に片っ端から告白を了承し躍起になって恋へと走った。もちろん本命が別にいる快斗が長続きする訳もなく、取っかえ引っ変えの甲斐性なしのレッテルを貼られる事となり、後々この事を盛大に後悔する羽目にもなるのだ。
    そんな中、大学最後の夏の日、とんでもない事件が起きてしまった。そう、工藤新一が黒羽快斗へと告白したのである。
    「好きなんだ、お前の事が。俺の隣に帰ってきてくれるなら一夜限りの過ちを責めたりも、行動に口出しもしねぇ…。だから……付き合ってくれないか?」
    夏の夕暮れ、滴る汗さえ美しくて橙と紫のグラデーションを彩った空の真ん中に新一の蒼い目が真っ直ぐ快斗を見つめて。頬が赤いのは夕日のせいだけじゃなくて、羞恥から潤んだ目だとか、小さく噛まれた唇だとか、目に映る全てが快斗を魅了する毒であった。
    「べつにいいぜ。じゃあ今から恋人な」
    そんな有頂天を突き抜け飛び上がるほどの喜びを、快斗はお得意のポーカーフェイスを駆使して全くこれっぽっちも表に出さず淡々と了承してしまったのだ。快斗は、本命に奥手であった。嬉しさのあまり動揺し、新一が告白のとき言った言葉を否定し損ねた。新一を信仰しそうな勢いで好きになっていた快斗が一夜限りの過ちなど起こすはずもない。それを、言葉にしなかったのだ。
    これが、今後大きく擦れ違う原因であると知っていたのならば、快斗は恥を晒してでも訂正を入れただろう。人生とは上手くいかないのものなのである。


    「あーーーーーー…かえりたい……」
    楽屋の隅っこの床でうつ伏せに倒れた快斗は涙声で呻いて胎児のように小さくまるまった。
    「…また始まった黒羽さんのホームシック」
    「24時間365日ホームシックですね」
    「あれはホームシックじゃない、恋人欠乏症だ」
    「……つまりホームシックじゃないですか」
    世界的大スター、東洋が産んだ奇跡の魔術師と呼ばれた黒羽快斗が、オーバーサイズのパーカーにスキニーパンツというなんともラフな格好で楽屋の埃っぽい床に転がっているというのに、スタッフ達は慣れたもので気遣う素振りも見せずひそひそと本人に聞こえるのも構わず会話をしている。
    快斗はそのルックスと物腰の柔らかさ、垣間見える無邪気さから女性の心を鷲掴みにし、スキャンダルや甘い噂が絶えないのであるが、実はデビューする前から恋人がいて、しかも引くほどに一途なのはスタッフの中では有名なことである。
    いかに自分の恋人が素晴らしいか、いかに美しいか、どんなに可愛いか、聞いてもいないのに恍惚と語りだしては最後に「俺の帰る場所は新一の隣」と、語尾にハートマークでも付き添いなほどご機嫌に締めくくるのだ。聞かされるスタッフは砂も砂糖も蜂蜜も吐き尽くしている。
    そんなに会いたいなら日本にいる間くらい帰ればいいじゃないかと提案したが、会ったら離れられなくなっちゃうから…と泣きながら断られた。ほんとに泣いていた。その後悪魔のような誘惑をするなとやや強めに怒られてスタッフはまた少し引いた。
    「でも、黒羽さんって、その恋人さんの為に席取ってあるのにチケット渡したことないですよね?」
    今回のツアーにて初参戦したメイク担当の女性が不思議そうに問い掛けた。
    快斗は、ツアー中一席最前列のど真ん中を恋人のために予約する。全公演、とまではさすがにいかなが、各国幾度一枚はキープしてあった。けれどその日に快斗の恋人らしき人物を見たことは一度もない。
    どうやら本人に渡す事が出来ず、土壇場で別の者へ譲っているらしいのだ。そんな事が頻繁に起こるため、今では快斗が恋人の為に最前列のど真ん中の席を予約すると以前ツアーを共にしていて今は別の仕事に着いている何名かのスタッフに声が掛かり、チケットを無駄にしないための保険人員が集められるようになっていた。
    けれど、こんなにも快斗が好いているなら一公演でも来て貰えたらきっとその公演は過去最高を塗り替える素晴らしいステージになる事間違いないとスタッフ達は確信している。
    「……新一は凄く忙しいし、急な呼び出しとかもあるんだ…」
    メイク担当の純粋な疑問に答えるべく語り出す快斗の声は重い。
    「もし、もしだ。チケットを渡して、急な仕事で来られなくなったりして、空席になってでもしたら俺、俺…、ありえないんだぜーーー!って叫びながら気絶すると思う……」
    「絶対に阻止しよう」
    「これからも阻止しよう」
    「黒羽快斗のイメージと尊厳は俺たちが守ろう」
    冗談だろうと笑い飛ばすことも出来ないくらいの真剣な快斗の声と表情に図らずしも、スタッフの心は一つになった。
    まぁ、実をいえばそれだけではなくて、快斗は新一に、自分がキッドだった過去を明かしていない。当然気付かれてなど居ないと思っているので、もしマジックの大舞台を見て正体に気づかれてしまったら別れ話でもされてしまうのではと怖くなってしまうのだ。快斗にとって、新一との関係が途切れてしまうことが何よりも恐ろしいことである。
    だから、前にチケットの話題が出た時咄嗟に、特別にチケットを用意するなんて贔屓はしないと嘘をついてしまったので、今更渡せるわけがない。
    「はぁ……新一の誕生日に……特別なマジック見せたかったなぁ」
    すんすんと鼻を鳴らし、以前のツアーでシンガポールに行ったとき買ったマーライオン人形にしがみつき快斗はべそをかきはじめた。余談であるが、シンガポール公演は何故か快斗の意気込みが凄まじく、過去類を見ない圧巻のショーを披露したのだが、その事について快斗から詳しい説明がされることは無かった。
    「まぁまぁ、そのマジックを黒羽さんの誕生日特別公演の締めに持っていくってことで無駄ならずに済むんですから」
    快斗の落ち込みようが、大掛かりで成功間違いなしの期待の新ネタ披露の機会を逃したためなのかと勘違いした一人が慰めるべく声を上げればその気遣いを無下にするかのごとく快斗は不愉快そうに顔を顰めた。
    「新一の為に考えたマジックを他のやつに見せる気になんかねーから、俺の誕生日公演は別のやる……」
    「えぇぇ!?何言ってるんですがお馬鹿さん!?誕生日公演は明後日ですよ!?打ち合わせどうするんですか!!」
    「今からやる……そのために集まっててもらったんだろ……」
    ぶすっ、と不満そうに告げる快斗は、舞台上とは全くの別人である。子供みたいなわがままだが、王の戯れのようにタチが悪いそれに、慌てふためくのはスタッフだ。
    「あーーもう!ならそんなとこでぶすくれてないで早くしてください!木村!河中!資料資料!」
    マジックショーは入念な下準備が必要である。かつて警察を相手取り翻弄してきた快斗にとって突然の変更など大した問題ではないが、現場を担うスタッフ達は違う。こうした快斗の思いつきは珍しい事ではないのでスタッフ達も慣れたものではあるが、やっぱり突然の変更など起こらないに越したことはない。
    「新一……早く会いたい……」
    快斗の恋患ったため息と、スタッフ達の疲弊のため息は、奇しくも同じタイミングで部屋を彩った。





    快斗がスタッフたちを振り回していた丁度その頃、新一はとある事件の真相を解明したところであった。
    「…いつか好きになってくれる、なんて…馬鹿みたい……最初から都合の良い女だったのよ、私なんてっ…!私なんてっ!」
    膝を着いて泣き出した犯人の女性に、佐藤刑事が寄り添い、そっとパトカーへと誘導していった。
    頼りなく揺れる加害者の背中を新一はなんとも苦々しい気持ちで見送りため息を飲み込みきれずに一つ落とす。
    「工藤君、送って行くよ」
    見えなくなるまでパトカーを見送っていれば、横から声を掛けられ新一は顔を上げる。どうやらその為だけに残ってくれていた高木に申し訳ない気持ちになって苦笑を浮かべ。
    「いえ、寄る所がありますので、タクシーを拾って帰ります」
    以前歩いて帰ると断った帰りに熱中症で倒れたことがあるので、タクシーを使う事を主張しなければ相手に気を遣わせてしまう。
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