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    さいか

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    さいか

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    『Knightsの瀬名泉』

    凛月ちゃんは剣に例えていた。「セッちゃんは折れない剣」なんだって。いつでも気怠そうで人に興味ないような素振りをしているくせに本質とか核心を容易く言葉にしてくるから、のんびりとしたその声にハッとさせられるたび、ああなんだちゃんと見ているんじゃないってアタシはなんだか安心する。そして想像する。きっとその剣は細くしなやかに、一点の曇りもない色で光っている。
    『王さま』は月と言っていた。そう聞いた。月はアンタでしょって泉ちゃんは即座に言い返したのだとか。きっと『王さま』は笑ったのでしょうけれど、泉ちゃんはもっとちゃんとその言葉を聞いてあげなさいってアタシは考える。月。美しさ。儚さ。夜空を見上げればいつもそこにある光。それってアナタが常に欲しがっている言葉なんじゃないのかしら。美の象徴だし、ストレートな愛の言葉にしか聞こえないのだけれど。
    銀色。それが泉ちゃんの色だと思う。ゴージャスで眩い金色じゃないけれど、しんと静かな夜に埋もれずに輝く上品な色。モデルとして、アイドルとして、いつもアタシの歩く先に在った光。導いてくれた、なんて認めるのは少し悔しいからまだ言わないけれど。
    「ねえ、司ちゃんにとっての泉ちゃんはどんな存在?」
    「どんな、と言われましても」
    司ちゃんは口許に手を添えて考える。そして早々に答えを放棄する。
    「急に尋ねられても先輩方のようなpoeticな回答は導き出せませんね」
    「あら、そお?」
    「ええ。私にとって瀬名先輩は『瀬名先輩』であるとしか言えません」
    胸に手を当てて真っ直ぐに、小さな騎士が視線を寄越す。
    「理想や模範を示す人、正に『先輩』である人、けれどそれだけではない人――偉そうだし、自信過剰だし、私情に飲まれることだってある――けれどあの人は欠点を抱えたまま美しく振舞うことができる。idolとは偶像ではなく血の通った人間であるということを、私はあの人から学んだ気がします」
    「良くも悪くもって感じね」
    可笑しくて微笑むアタシを司ちゃんは不思議そうに見る。純粋そのものの光。アメジストの瞳。
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    さいか

    MOURNING翼と宗介/10年後
    やあ、ご機嫌如何かな、教祖様?この小さな世界でてっぺん取った気分はどう?あの頃みたいに「悪くねえ」って言うんだったら俺はもう何も言わないけどさ、そうじゃないだろ?どーせ組織の維持管理とか人間関係とかいろんなしがらみに取っ捕まって身動きとれなくなってつまんないだけだろ?どこに行ったって一緒だよね、そーゆーの、カミサマが解決してくれるわけじゃないんだから。なあ、お前の神様ってお前に何してくれたの?や、別に否定したいわけじゃないっつーか、なんか掬い上げられて神様みたいに思っちゃうのは経験的にわかる部分もあるっつーか、ほら、俺にとってはお前がそれだったからさ。うん?言ったことなかったっけ?じゃあもっかい言うけど、俺はお前に自分の人生の軌道を変えられたと思ってるんだよ。お前に出会ったから進学先変えて、当然親からは反対されて喧嘩して、思い通りにならない子供と思われて……あー、今考えるとあの辺で亀裂が表面化したんだな、爆発したのはもうちょっとあとだったけど。ああうん、こっちの話。ごめんごめん。でもまあ、自分の判断が間違ってたと思ったことはないんだよ。楽しかったからね。お前だってそうだろ?うん、だからいま結構怒ってるよ。お前は俺の、俺らの人生変えといて何やってんだーってさ。なあオイ、そこにいてもつまんないんだろ。だったらもういいだろ。全部捨てちゃえよ。できないんだったら俺がぶっ壊してやったっていいよ。本気だよ。わかるだろ?似合わないし、らしくないんだよ。いい加減、お前が立つべき場所に立てよ。バンドやろうぜ。俺たちは、ブレイストはまだ、天下取ってないだろ?
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