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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア3️⃣ Az-14 『誕』

     あの結婚式も、もう数ヶ月も前の事で。夕焼けの草原のこの職場に戻った僕は仕事をこなす傍ら、パーティーや営業に出てはアイテムの共同開発やその出資者を探して回っていた。ああいったパーティーに出る面子は、どうも運を手繰り寄せる力が強く、僕は誘われたカードゲームで一体どれだけ負けを重ねたか分かったもんじゃなかった。あまりに腹が立って、ボードゲーム部以来自引きする練習を重ね、やっとゲームに勝てたことで話を聞いてもらえたりもした。
     さらに、彼らに混ざる為に葉巻煙草や酒も嗜んだ。そうやって、ゲームに勝ち、たまに負けてやって、酒と煙草の煙の社交の場で、世界経済の話しをする。それはもちろん、灰に染まった話しを笑みを貼り付けた顔の下、知略を総動員して腹を探り合う。
     あぁ、レオナが面倒臭がったのも分かる。この空気の悪さ……鼻の良いレオナにとってはさぞ苦痛だろう。幼い頃から人の二面性や腹のさぐり合いをしてきたからといって、それを好きになれるかと言いえば話しは別だ。適材適所だと、僕に押し付けたがる理由もわかる。
     こうやって顔を売り、相手の商売にアイデアなどを出しながら縁を結んでいくうちに、スポンサーがずいぶんついた。現場の設備も少しずつ入れ替え新しいものに交換し、あの忌々しい椅子もロッカーもデスクも全て、新しいものに交換してやった。
     職場の獣人たちも、レオナの存在や、掘り進めるための機材の設備が良くなるにつれ、もう何年もお荷物とされた自分たちが、この国の歴史を変えてしまうかもしれないと喜んだ。
     僕も現場の士気の上がり様に気を良くしながら、仕事に没頭した。もし手を止めて別のことを考えでもしたら、あの結婚式でのリドルの顔を、否が応でも思い出してしまうからだ。
     僕はあれからずっと、リドルと連絡を取れないでいる。義父からは、相変わらず孫バカな話しや、リドルの今の状況などがメッセージアプリに届いてはいたが、どうしても自分から連絡を取ろうとすると尻込みしてしまう。
     こうやって僕がリドルに会えない間に、もし、フロイドがリドルと出会ってしまったら……リドルはきっと、フロイドとのちょっとした掛け違いのような誤解が解けて、二人は真に愛し合う恋人同士になるのだろうか……?
     ぐっと、喉に鉛で蓋をされてしまったように息ができない……人間の体は本当に不便で困る。

    「でさぁ、オレんとこの四歳のチビが、誕生日にやったプレゼントの色が違うとかでさぁ、ゴネにゴネて……」
     ふと、耳に入った言葉を反覆する。目に入ったカレンダーの日付に、そういえばもう少しで産まれた子供の誕生日だというのを思い出した。
    「でホント、大変だったわけだよ」
     男の話に、横にいた同僚がうなづく。
    「女の子だろ? そりゃ、その歳の子は既に女だからな、色間違いは怒るに決まってるよ……そーいえば、アーシェングロット、お前ンとこのチビは何歳なんだ?」
     急に話を振られて、僕は回転する椅子をくるりと回し彼らの方を向く。
    「今月末で二歳になります」
    「二歳! そーかそーか、そりゃめでたいねぇ……で、プレゼントはどうすんだい?」
    「二歳ですよ? プレゼントなんて貰ってもわからないでしょう?」
     僕の言葉に、その場にいた同僚がガっと集まった。
    「いやいやお前、わかってねぇなぁ〜 この歳ぐらいになったら、こっちの言葉を理解しだして四六時中なんか言ってるもんだ」
    「好き嫌いもはっきりしてくるからねぇ……てかアンタ、嫁さんに子供任せっぱなしなんだろ? 誕生日ぐらい父親らしいことしないと、子供に忘れられるよ?」
     その言葉に浮かんだのはリドルのあの言葉だ……
    『でないと、きっと子供たちは、キミが父親だなんて思ってくれなくなるよ』
     それはまずい。非常にマズすぎる。リドルはあの小さな二人をそれはもう溺愛している。義父からのメッセージや添付された写真をちらりと見るだけでも、リドルの溢れんばかりの子供たちへの愛が溢れていた。そんな子供たちに父親と認識されなければ、リドルに愛してもらう以前の話になる。それだけは駄目だ。
    「ち、ちなみに……皆さんのお子さんは二歳の時に何を欲しがってらっしゃったんですか?」
     参考とばかりにと付け足して聞けば、「お前は、自分の子供の欲しいものも知らないのか」と父親初心者だと決めつけられ(いや、実際にそうなのだけれど……)心配した同僚たちに憐れみの目で「買いに行くなら、一緒に行ってやろうか?」とさえ言われた。
     僕はそれに「結構です、自分の子供の欲しいものぐらい、自分で探します」ときっぱり断ってみたはいいが、夕焼けの草原で一番大きなトイショップに来てみたが、ありえない量のオモチャが並べられ、どれが正解か分からず、僕はトイショップに併設されたフードコートで頭を抱えていた。
     自分の子供でなくとも、子供全般の知識が僕にはない。自分の脳内で封印されし子供の時の記憶を思い起こせば、食っちゃ寝していた記憶しか出てこず要らぬ事を思い出してさらに頭を抱えてしまった。
     だがここで、いまさら誰かの手を借りて選ぶのも癪だ。絶対に自分で探し出してやると、もう一度売り場に戻るも、圧迫感のある中の間、通路をウロウロするだけで体力が削られた。
     もう、なんでもいいじゃないか。オススメと書かれていて、良く売れていそうなやつならいいだろうと、適当に掴もうと目を向けた先にあったのは、ターコイズブルーの飛行機を象ったおもちゃだ。
     ディフォルメされたデザインのそれを見て、僕はなんとなくあいつを思い出した。
     ナイトレイブンカレッジに入学して、二年に上る前。僕とジェイドとフロイドの三人で、珊瑚の海に戻る前に用があって、陽光の国にある人魚を支援する団体の施設に出向いたときだ。
     帰り際、空を駆け抜ける飛行機を見て、フロイドが面白がってはしゃいでいた。ジェイドは高いところ自体を好まず、飛行機に対しても否定的だった。だがフロイドは、ナイトレイブンカレッジで空を飛ぶ面白さを知り、ただ垂直に高く上がることを楽しんで笑っていた。全てにおいて陸を面倒臭がっていた男が、あの入学式を皮切りに、リドルの背中を追いかけ回し、そして海よりも空を見るようになった。その空には、得意げに箒を操り、宙返りするリドルがいたからだ。
    (どうして今、こんな事を思い出したんだ、僕は……?)
     そして同時に思い出したのは、フロイドと同じ髪の色をした子供のことだ。数秒考えて、僕は手に持った飛行機のおもちゃを棚に戻すのをやめた。
     もう一つ目に止まった赤い車のおもちゃを手にしレジに向い、誕生日のプレゼントにと、青と黄色の包装紙に包んでもらい、青には黄色の、黄色には青のリボンを掛けてもらった。
     そのまま直接リドルたちの元に配送してもらう手続きをしている時に、店員が二枚の真新しいメッセージカードとペンを手渡すものだから、僕はそれを受け取り初めて子供たちのために言葉を綴った。
    『二歳の誕生日おめでとう。早くお前たちと暮らせることを祈って……父より』
     これは、恥ずかしすぎるだろ……と、書き終わって内容の気恥ずかしくて丸めて捨てそうになったが、店員が「では、同封しておきますね」と奪い取られてしまい、僕はもうどうにでもなれと、会計を済ませて店を出た。

     それから数日後、義父とのやり取りに使っているアプリに一枚の写真が届いた。
     そこには、満面の笑みで車を抱きしめるアスターと飛行機を持ったサミュエル……そして、その後ろで嬉しそうに微笑むリドルが写っていた。
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