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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア4️⃣中編-20 『en:Return③-2』

     そんなキミと、原初のファントムだけでなく、オルトやイデア先輩の野望を阻止し、世界を救って学園に帰還して早一週間……アズールとのこの近い距離感は、変わらず保たれたままだった。
     ボクを見かけると必ず声をかけるようになったアズールは、あの時、タルタロス内で彼が〝友達〟と言った言葉通りに、前よりずっと近い距離を取るようになった。
     それは、あの時のボクたちを知らないトレイやケイト……いや、アズールをよく知るフロイドとジェイドでさえ少し目を丸める程の距離感で『色々あったんだ』という言葉だけでは説明のつかないアズールの変わり様に、ボクでさえほんの少し戸惑う瞬間さえあった。
     以前の胡散臭くて詐欺師の顔に絶対に負けないという闘志を瞳の奥に滲ませていたその表情は、フロイドやジェイドとはまた違った好奇心を滲ませて、ボクをからかって「ふはっ!」と笑う。そんな彼のブルーの瞳に映るボクは、やっぱりどこかこの距離感に困惑していた。
     それでも、一位のボクに真っ向勝負を挑んでくるなんてアズールぐらいだ。ボクの一位は揺るぎないけれど、それでもアズールの熱に押されて、学園に戻ってすぐ、ボクの勉強にも熱が入った。
     ただ、タルタロスで失った魔力は一週間程度ではまだ完全に戻らず、髪の内側根本からジワリと色が戻りつつあったけれど、依然としてその頃のボクの髪は白いままだ。けれど魔力を行使する授業は全て見学に回っていたが、それ以外は問題なく授業に復帰していたボクは、その日も遠目にボクを発見したアズールと、図書館までの道程を一緒に並んで歩いて、そこで、その世界のボクは初めて、あの男に接触した。
     先生の後ろを付いて歩いていたのは、あの忌々しいダーハム・グレイソンにだ……
    「おや? もしかして君は……あの完璧な呪石精製加工を行ったリドル・ローズハート君ですか?」
     呪石精製加工と言われ、嘆きの島に強制連行される前にあった授業を思い出す。あの時の授業では確か、学年でボクひとりが完璧に精製加工できたと、クルーウェル先生からA+の評価をもらっていた……がそれより、この怪しい黒ローブの男に急に話しかけられ、ボクはその場で固まった。……いや、違う。繰り返された魂に刻まれたこの男気への嫌悪が、この世界のボクの心にも影響を与えたんだろう。この男のじっとりとした嫌な雰囲気に心臓がどくどくと音を立てて、額に汗が滲んだ。
    「私は、呪石研究機関『anathema』所長。ダーハム・グレイソンと申します。君の精製加工があまりに素晴らしく、普段は部下に結果を回収させるのですが、私が直接受け取りに来たんです」
     この男が冗舌に語れば語るほど、気分が悪くなっていく。グッと口元を抑えたら、今まで蚊帳の外だったアズールが、ボクを背に隠した。
    「グレイソンさん、申し訳ありませんが、リドルさんは体調が優れないようなので、そろそろ失礼してもいいでしょうか?」
     アズールの言葉に、彼の背に隠されたボクをチラリと見たこの男は、にこりと笑い「ええ」と頷く。
    「ローズハート君、体調が悪いことを気づけず引き止めてしまって申し訳ないことをしました」
     アズールがひとつ頭を下げ、それではと話をそこで強引に切り上げ、アズールに手を引かれて図書館に到着すれば、ダーハム・グレイソンと距離を取ったことで、ボクの顔色も少しマシになっていた。
    「すまない……助かったよ」
     本心からお礼を言うと、あんなボクを不思議に思ったのか、「あの男と、以前何かあったんですか?」とアズールに聞かれたが、この世界のボクがダーハム・グレイソンの数々の悪行を知るはずもなく、「気のせいだ、気にしないでくれ」と言うしかできなかった。
     以前の彼なら、きっと「そうですか」と気にしない素振りをしながら、ボクの弱みを探そうとしただろう。しかし、目の前のアズールは、本当にボクを心配している素振りを何気ない笑顔の下に隠して、〝なかったこと〟にしてくれた。今のボクには、それがとてもありがたかった。ボク自身、ダーハム・グレイソンへの嫌悪感が何なのか言葉にできなかったからだ。
    「そういえば結局、学年で完璧な呪石加工に成功したのはリドルさんだけだったんですね」
     体調が戻り、必要な書籍を探すボクの後ろ。アズールも目当ての本を探しながらボクに話しかけてきた。
    「らしいね……アズール、もしかしてキミも失敗したの?」
    「嫌な聞き方ですね……そうですよ。途中までは上手くいっていたんですが、加工の最終段階で呪石に宿った願いに引っ張られて失敗していました。本当にあともう少しだったのに」
     呪石の精製加工は、精製後の呪石の純度が高いと、対象者の願いを引き出し叶えようと、呪石自体が発動する場合がある。アズールのように多くの欲を持っていたら、呪石からすれば利用しやすいことこの上ない。
    「キミは雑念が多そうだからね⁠」
     ボクが含みを保たせてそう言えば、アズールはすぐさま「甘いスイーツを目の前にしたリドルさんには敵いませんよ」と意地悪く⁠言う。
     確かに、錬金釜を撹拌している最中に、トレイが昨晩寮内のキッチンで作ったタルトの事を考えた事はあった。よくそんな事を覚えていたなと、⁠言い返せずに唇を尖らせると、ここ最近見かける年相応の顔で「ふはっ!」っと笑うアズールの顔がそこにあった。
    「で、キミが加工した呪石の呪はなんだったの?」
    「あぁ、呪ですが〝私の願いが絶対に叶いますように〟という呪でしたよ。ただ、呪自体発動したはずなのに、特に影響が出なかったんですよね」
    「影響が出なかった?」
    「えぇ、先生がおっしゃるには、元々僕自身がそういう姿勢でいるから、そこに呪が掛かっても表面上変わらないのではないかと……何を笑ってるんです」
    「いや、なんだかキミらしいなと思ってね」
     アズールは元々、絶対に叶えたい願いを自力で叶えてきた。強い意志で努力で願いを叶え続けているアズールのほうが、呪の強制力よりも強かったなんて、笑わずにはいられないだろう?
     笑いを堪えきれず、クスクスと笑いながら振り返ると、バサリと音を立てて、アズールが手にした本を落とした。
     図書館の蔵書は、貴重なものが多く。皆の共有財産だ。それをわざとじゃなくても落とすなんて、褒められたことではない。本来なら、厳重注意といったところだが、本を落としたことへの不利益を考える彼なら、早々自分の非になる行いはしないはずだ。
    「アズール?」
     ボクに背を向けたまま口元を手で覆い、微動だにしない彼が心配になって肩に伸ばした手は、彼によって払い除けられた。
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