【ひよこ色】 絆創膏「いぃってぇっっっ」
長期任務から戻った久しぶりの教師業で、少しはいい所を見せようと張り切っていたらしい。見本演習も兼ねているため、無下限を張らずに手合わせをしていた悟から、珍しく声が上がった。私が繰り出した手刀を避けきれず、防御のために翳した手の甲を、爪先で皮膚を裂いた感覚が伝わる。中止の合図が入る前に歩み寄ると苦笑された。
「悟」
「このぐらい、何ともないって。そんな今にも地球が滅亡しそうな顔しなくても」
「見せてみな」
憮然とした表情で怪我をさせた腕を掴んで顔を近付けた。うっすら滲んだ血を見咎めると、掴んだままの腕に身を屈めた。血が滲んだ指先に唇を寄せて、ぺろりと舌先で舐め上げそのまま口に含んだ。
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