あぽつぽつ
「あ、雨だ」
家でゴロゴロと駄菓子を食べながらテレビを見ていた乱歩
雨の音に気づき外を見ると夕立のようだった。
乱歩は
「あ、福沢さんのお迎えに行くの…めんどくさ〜〜〜〜
はぁけど、行った方がいっかー」
面倒くさそうに不貞腐れながらも同居人の福沢を迎えに行く準備をし始めた。
「えーとカッパは何処だっけ〜?あ!あった!」
それは傘を刺すのがめんどくさいならこれを着なさいと福沢が与えてくれた物である
(よしよし!カッパよし!傘良し!駄菓子よし!携帯良し!あ!鍵鍵忘れてた〜!
よぉしこれで準備完了!)
「行ってきまーす!」
誰も居ない家に元気な声が響いた
外はザアザアと大粒の雨が降り仕切っていた、駅までの道のりは江戸川の歩幅で約20分位だった。
「あらぁ乱歩ちゃん福沢さんのお迎えかしら?」
「うん!」
そこには馴染みの駄菓子屋のおばさんがカラフルなボーダー柄傘を持ち立っていた。
「えらいわねぇこれあげるわ〜」
割烹着のポッケから何か取り出し乱歩の手へ乗せた。
「おばさん!ありがとう!これ好きなんだよね!」
駄菓子屋のおばさんがくれたのは大きな飴玉だった乱歩はすぐさま飴を開け口に放り込み舐めながらすぐに歩くのを再開した。
傘に落ちる雨を面白がって見ながら歩いていたら大きな水たまりにはまってしまった
「うげぇ」
駅位だしいっか!と靴で来ていたのが間違いのようだ
靴下はぬれ、靴に水が入ったことで左足だけが重くなり歩きにくくかんじた
駅に着くと同じく傘を持った人がちらほらと見える
改札の向こう岸から電車の音が聞こえた、電車が着いたよう、雨だからなのかいつもより人が多く人を探すのは少し厄介だったが
「福沢さんまだかな〜??あ!福沢さーん!」
人混みの中でもその長身と白銀の髪はあまりに奇抜でありすぐに見つけることが出来た
福沢を待つ時間は1人で待つのを慣れていない乱歩にとってあまりにも心細くそわそわとした時間であり
体感的には30分待たされたようだがその実際は5分も経っていない
「もー遅いよー!」
「すまん、それで傘はどうした?お前用のしかないように見えるが…」
「あ!!!忘れた!!!」
「…はぁまぁいい私は入らないでいいから乱歩1人でさしていきなさい」
「それじゃ僕が薄情な奴みたいじゃん!一緒に入ろ?」
「けど私とお前じゃ入り切らな…」
「いーから早く!置いてくよ?」
「はぁわかった」
当たり前かのように江戸川の右手にある傘を奪い2人は帰路へと着いた。
福沢は、江戸川の今日の行動や顔の位置が近くなって成長と云う文字を彼に附けれる時だと言うことに今日やっと気づく事となった。
あのころの仔猫のような子が逞しくなっている事に福沢は、彼もいつかは自立し福沢の元から離れる事実、もう私は必要無いのではと疑問を浮かべた福沢は実の親では無いだからこそ彼を縛ることは出来ないし彼を見捨てることも出来ない
私はどうすれば…
彼の善意は福沢の悩みの種へとなっていた
一方江戸川は、ただただ気まずかった。
自分の行動の失態の結果と言うのは十分理解しているだが、これはなんなのだ福沢は親としての本能なのか江戸川を護るように腰に手を置き自分の方へと江戸川を引き寄せていたのでした。
無自覚なのか意図的なのか
彼にはそんなに考えなんて一頻りも無いので無自覚だろうそう
理解していてもこの格好は恥ずかしい。
「ふ、ふくざわさん、これ、、」
「あぁすまん、嫌だったか」
「い、いや嫌では無いけど…ちょっと恥ずかしい…」
「そうか…」
気まずい雰囲気が流れた
そこに福沢は空気を遮断し話し始めた
「お前も成長したんだな…ずっとあのままだと勘違いしていた」
寂しそうな哀愁が漂う雰囲気を纏っていた
さっきの行為も僕を14の子供だと思っていた愛情故の行為なのである。
「うん、したよ…成長…」
江戸川もまた寂しそうな声で話した、
江戸川は何時も考えていた、大人になったら棄てられるのではないのか、年齢に反して心の幼稚すぎること。
そこには成長をした喜びよりもはるかに大きい不安だけが残っていた。
ふたりは、同じ傘に入り似たような事を考えながら家へと向かった。
次第に、2人を濡らしていた夕立は上がり2人を照らす月となっていたのでした。