あなたの名字になるわたし 「よぉ、真面目ちゃん」
お昼休み、廊下を歩いている時に、ふいに頭上から呼び止められた。
おそらく教室からわたしを見かけて声をかけてくれたのだろう。
見上げなくても分かる。
その声を聞き間違えるはずはない。
それに…わたしをそんな風に呼ぶのはたった一人だ。
御影小次郎先生…わたしの好きな人……
「御影先生、なんですか?」
見上げながら、少しだけ小首を傾ける。
少しでも、少しでも、御影先生の目にわたしが可愛く映りますように。
祈るような気持ちを込める。
「あのな、今日用事とかあるか?」
「ないです、ないです用事なんて全然ない」
少し食い気味に答えてしまって気恥ずかしさで頬が熱くなる。
一緒に帰る約束かな…放課後に下駄箱や正門で偶然会って何度か一緒に帰ったことがある。
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