にゃんじとにゃんコダイルとその飼い主の日常ダメな飼い主でごめんなにゃんじ
そう言った飼い主を見て、にゃんじはおれがしっかりせねばそう決意した
相変わらず飼い主はにゃんコダイルに格の違うネコパンチをされて喜んでいる
やはりおれがしっかりせねば にゃんじ
飼い主は、にゃんじたちのごはんや水は定刻通りに用意するというのに自身の食料はチョコバーやゼリーで済ませている
にゃんじは激怒した
必ず、この邪智暴虐の飼い主の食生活を除かねばならぬと決意した
だが、にゃんじには料理がわからぬ
にゃんじは捨てられた仔猫であった
けれども、食生活の乱れに対しては人一倍に敏感であった
にゃんじは単純なニャンコであった
飼い主に持たせられたメモを手に、よちよちとスーパーへと入って行った
「らいむぎぱん4まい3ふくろ チーズ100g3こ ぐれーぷふるーつ2こ せろり18ほん ぎゅうにゅう2ぱっく」
にゃんじはたちまち激怒した
にゃんじはダメ飼い主の為に栄養学のテキストを黙々とこなす
カリカリ…くーくー…かち、かち…
極上のふかふかベッドで寝転がるにゃんコダイルの規則的な寝息と、にゃんじがテキストに走らせるえんぴつの音、それから時計の音だけが部屋に響いていた
にゃんコダイルがふと目を開けると、あの小さな毛玉は集中して勉強に励んでいた
手元から転げ落ちた消しゴムにすら気付かず、もちろん目を覚ましたにゃんコダイルなど視界に入っていないようだった
ふと、にゃんコダイルの頭には一つのよくない考えが浮かんだ
にゃんコダイルはその巨体をのそりと動かすと、にゃんじの落とした消しゴムを足の下へ隠した
にゃんコダイルはふんすと鼻で笑うようににゃんじを見て、それからまた再び眠りについた
順調にテキストを進めていたにゃんじは、解答欄が一つずつずれたことに気づく
消しゴムを求めて周囲を見渡すが、もちろん消しゴムは見つからない
にゃんじは、飼い主に買ってもらった大事な文房具を失くしたのだ
その事実がにゃんじの心に重くのしかかりにゃんじの視界は涙でゆらゆらと歪みだす
ぱちり、と玄関の灯りがついて、明るい声が響く
飼い主の声である
にゃんじは大切な文房具を無くしてしまったことをどう飼い主に伝えようかと混乱していた
そのせいで、いつも玄関口まで飼い主を出迎えていたのに今日はそれを忘れてしまっていた
飼い主は帰宅後、かばんをその辺へ放り出しにゃんじたちのごはんの用意を始めた
「お〜いごはんだよ〜」
にゃんじは、耳をぺったりとさせて飼い主の前へとやってきた
飼い主は、にゃんじの頭を撫でて話を聞いていた
にゃんコダイルはそんな彼らの様子を尻目に一番最初にごはんを食べている
「あれ?にゃんじの消しゴムってあれじゃない?」
飼い主が指を差した方向には、確かににゃんじの消しゴムが転がっていた
にゃんじは驚いた
失くしたと思っていた消しゴムが見つかったのだ、にゃんじはすぐに消しゴムへ駆け寄った
にゃんじの手に乗った消しゴムは、何故だろうかなんだかほんのりあたたかい
ごはんを食べ終えたにゃんコダイルは、はっとした
あの毛玉の消しゴムを隠してやろうとしていたのに、飼い主の飯の誘いなんぞに乗ってしまい消しゴムの上から離れてしまった
にゃんコダイルは消しゴムが見つかったと騒ぐ毛玉をにらみつけるとナウナウと鳴き飼い主の足につめをたてて次のおいしいもんを催促した
飼い主はにゃんコダイルを抱き上げて、体重計に乗った
にゃんコダイルはそんな事はいいから早くおいしいもんを寄越せと暴れていたが、にゃんコダイルを床へ下ろすと再び飼い主だけが体重計に乗った
そして、飼い主は告げた
「ダイちゃん、今月ちょっとだけ体重増えちゃったからおいしいもんはおあずけね」
ニャンコに電流走る
にゃんコダイルは固まった
なうなうなんなぁお…と低い声で鳴き、飼い主の脛へ齧り付く
飼い主はにゃんコダイルを持ち上げて再びこう告げた
「留守の間にまたにゃんじに意地悪したでしょ、分かってるんだからね?」
にゃんコダイルは不満を露わに毛を大きく膨らませて飼い主にシャーと威嚇した
ひとしきり大暴れして自分のベッドに乗って丸くなったにゃんコダイルはしばらくの間大きく尻尾を床へ叩きつけていたが、眠くなったのか再び眠り始めた
飼い主からにゃんコダイルが離れたのを見て、すみっこで戸惑っていたにゃんじはようやく飼い主のところへやってきた
にゃんじは今日の成果としてテキストを飼い主に差し出すと、飼い主はパラパラと中身を見て、にゃんじの頭をわしゃわしゃ!と撫でてにゃんじを褒め称えた
「にゃんじはすごい!」
にゃんじはその言葉が何より嬉しかった
にゃんじは決意した
この飼い主の食生活を正さねばならぬ