無題③「うん?メッセージが来ている。誰からだ?」
航海と別れた後、スマホに着信が来ていることに気づいた。開いてみると、凛生からだった。
そこにはこう書かれていた。
「いや、まだ決まっていないな。どうかしたか?」
どうやら突然聞いたことにより何かあるのかと様子を伺っているようだ。
「あぁ、いや、お前らなら割とすぐに予定立ててどこへだって行きそうなのになと思ってたからさ。週末なら基本的に航海も予定が空いていそうだけどなぁ……。」
「それもそうだな。この出かけるとかについて微妙な所があるから少し相談に乗ってもらいたいんだが、明日の昼とかで大丈夫か?」
「あぁ、その時間なら特に予定も無いし大丈夫だ!」
結人は凜生の反応に少し驚きつつも、ひとまず相談に乗ってやらないと話が進まない気配を感じたので承諾することにした。
その後、結人は航海に凜生とのやり取りの結果をメッセージで伝えることにした。
「凜生に週末なら基本的に航海の予定は空いていることを伝えたら、出かけることについて微妙だから相談に乗って欲しいって言われた!とりあえずOKはしたから、相談に乗ってみてどんな感じだったかはまた後で伝えるな!」
航海は桔梗の発言の意味が分からないのと、あっさりと承諾した結人も結人でどうなんだと内心モヤモヤしながら結人に返信をすることにした。
「桔梗の出かけることについて微妙ってなんだよ……。もしかしていちご狩りに行きたいって何度も言ったからうるさすぎた…?」
「確かに出かけることについて微妙ってよくわかんないよなぁ…。でも、あのいちご狩りは楽しそうだよな! バーベキューのセットの中にジンギスカンがあるのも凄いし。凛生にいちご狩りに行きたいってどの程度伝えたのかは知らないけど、そこまで気にする必要はないんじゃないか?」
航海は結人からのメッセージを見て、少し安心したものの、凛生の考えがよく分からず不安が募るばかりだった。
「ならいいんだけど……。ユウ、明日桔梗が何話すかわかんないけど、頼んだよ」
「おう、俺に任せろ! どうにか2人が無事に行けるよう、うまくやってみせる!」
少し頼りないところもあるリーダーに、航海は少し怪訝な表情を浮かべながらも自分の思いを託し、明日の報告を待つしかなかった。
「五稜、待たせたな」
「俺も、ちょうど来たところだし大丈夫だ! それで、航海とのお出かけの事だったな? 早速で悪いが、詳しく話を聞いてもいいか?」
「そうだな、時間も限られているし、話そうか。まず、お出かけが微妙って言ったのはお互いに色々と忙しくて日付の調整が難しいというのもあるが、一番は費用……かもしれないな。俺なりに的場の好きそうなプランを練ってみたんだが、なんせレンタカー代だけで安くても5500円はするからな。そこに農園でいろいろやるとなるといくらアルバイトしていても少し躊躇する金額になるからな。白石程ではないものの、俺だって金銭面は気になるしな」
凛生は少し苦しそうに、今回のお出かけについて思っていることを吐露した。航海のことがあれだけ好きなことが普段から伝わる凛生があんな反応をするなんて妙だと思っていたが悩んでいた理由が思っていたよりも現実的だったため、結人は少々呆気にとられていた。
「あー、そうだったのか。いくらお前でも金銭面は気になるもんなんだな。確かにその金額だとちょっと考えるよなぁ……。俺、てっきりそれだけずっと一緒にいることになると理性が利かなくなるとかそんな感じのことかと思っていたぜ…。」
「理性を失いそうになるのは二人で出かけている時によくあることだからからあながち間違いではないんだがな……。金銭面を気にするようになったのはシェアハウスでみんなと暮らすようになったから、というのが大きいがな。」