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    ゆきんこ

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    ゆきんこ

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    りおわたが農園に行く話。初めてだから、思いつくままに書いたら長くなりました……。
    タイトルは適当。

    果実と二人と(仮)「ねえ、桔梗。今度一緒にここ、行ってみないかな?」
    「ん?○○グレープガーデンとなっているな…。ということは農園か。珍しいな、てっきりまたカフェでスイーツだと思ったのだが」
     大学からの帰り道、航海はふと思い立ち、一緒に歩いていた彼に声をかけ、そのスマホの画面を見せた。彼はまたスイーツのお店かなんかだろう、俺は甘いものは苦手だと知っているだろうに……。相変わらず好きなのだな、と思いながらその画面をのぞき込んだ。画面には現在開催中のいちご狩りについて書かれていた。
    「べっ、別にたまにはスイーツじゃなくたっていいでしょ!それに……ほら、ここはバーベキューもできるみたいだから桔梗でも楽しめるかと思って」
    「それはすまなかったな。……それにしてもバーベキューもあるのか。あったとしても牛肉が用意されていることの方が多いと思うが、ここはジンギスカンがセットの中に入っているのか……。これは凄いな……」
    航海は少しムスッとしながらその画面を操作し、バーベキューができると書かれているページを彼に見せた。そこには期間限定で果物狩りとバーベキュー、両方を楽しむことが可能であるという事が書かれていた。凛生はバーベキューができることにも驚いたが、北海道を離れてから中々食べるどころか出会うことのないジンギスカンにこのサイトで出会うとは思ってもいなかったのだ。
    「だよね!ただ、これ来月末までみたいだから近いうちに予定合わせて二人で行きたいな。」
    「アルゴナビスの皆とじゃなくていいのか?」
    「アルゴナビスの皆と行っても楽しそうだけど、それだとじっくりいちごを味わうなんてできないでしょ?ユウとかうるさそうだし。だから、ここで話しているの」
    「まぁ、それもそうだな。もう、シェアハウスに到着するから日程の調整はまた今度だな」
    「そうだね、ユウが聞きつけたらみんなで行こうぜ!ってうるさそうだし」
    「だな」
    自室に戻った後、的場が俺に見せたサイトを見ながら凛生はふと思った。いちごをじっくり味わいたいからと彼は言っていたが、おそらくそれだけではない。どうやらバーベキューの単品メニューにかき氷があったり、農園内で様々なジェラートが売られていたりすることが彼は気になっていて、俺に話を持ち掛けたのだろう。人数が多いとあちこち見て食べて回るのは難しくなるからな。ジンギスカンがセットに含まれているバーベキューはおそらく俺に興味を持ってもらうためのおまけだろう。まぁ、来月末までならまだ日もあるし、また二人きりになったときにでも日程を調整しようと思い、彼は床に就いた。
    後日、たまたま次の講義の教室が近かった為、ひとりで歩いている凛生の姿を見かけた航海は彼に声をかけた。
    「桔梗、この後どこか空いている時間ある?」
    「そうだな……。昼休みでもいいか?」
    「分かった、じゃあ昼休みにいつもの学食でいいかな?こないだ話したいちご狩りの話をしたくて」
    「あぁ、分かった。また、昼にな」
    そういって、二人はそれぞれの教室に向かった。

    昼になり、二人は昼食を摂りながらいちご狩りができる農園についての話をしていた。
    「的場、あの農園を俺なりに調べてみたんだが、どうやら果物そのものだけではなくて、バーベキューの単品メニューにかき氷が、それとは別に様々な手作りジェラートがあるようだな?」
    凛生はどうせこれが最大の狙いだろ?と思い、薄い笑みを浮かべながら彼に尋ねた。
    「え、桔梗、どこでそんな情報見つけたの?僕はSNSでいちご狩りとジンギスカンでバーベキューができることを知って桔梗に提案しただけだから知らなかったよ」
    航海はその情報を見つけた後、その日のうちに凛生と一緒に帰ることになったので詳細を調べていなかったのだ。なので、彼が出してきた情報に対し、驚きを隠せなかった。
    「こないだ見せてくれたサイトの違う場所に書いてあったぞ、ほら」
    「ほんとだ、これは凄いや。いちご狩りが終わっても他の果物があるみたいだけど、できればいちご狩りが終わらないうちに行きたいかな」
    「そうだな。……っと、そろそろ移動したほうがいい時間だな。じゃあスケジュールを確認してあとで連絡するよ」
    「分かった、連絡、待っているからね」



    それからしばらくして……。
    「ユウ、ちょっといいかな?」
    「おう!航海じゃねぇか、どうした?」
    「ちょっと、話を聞いてもらいたくて…。」
    「いいぜ!今日はバイトも休みだしな!」
    航海は結人に堰を切ったように話し出した。桔梗と二人でいちご狩りとバーベキューが両方楽しめる農園に行こうと提案し、向こうも承諾してくれたこと。しかし、それからその話題に関して向こうから何も言ってこないため、戸惑っていること。来月末まではお互いに少し忙しいのでスケジュールの調整が難しいのはわかっているが、それでも何も言ってこないのはどうしてなのか、自分がなんども行きたいと彼に言ったせいなのかもしれない為、どうすればいいかわからないこと。これらについて一気に話し出した航海を見て、結人は驚いたものの、ひとまず彼が満足するまで話を聞くことにした。
    航海が一通り、話し終えたところで結人はこんな提案をすることにした。
    「なぁ、俺から凛生に連絡を取ってみてもいいか?」
    「え、ちょっとユウ、桔梗になんて連絡するつもり!? 内容によっては怒るからね」
    「そんなたいしたもんじゃないって! ただ、航海から話を聞いたことは触れずに、二人は今度いつ出かけるのか聞いてみるだけだよ」
    「……ならいいけど。返信来たら、僕にも教えてよね」
    結人は凛生に今度航海と二人で出かける予定はないのかとメッセージを送り、航海にも送信したことを伝え、その画面を見せた。
    「もちろん! とりあえず送ったから、それで様子を見てみようぜ」
    「分かった、忘れずに教えてよね。それと、課題もちゃんとやること」
    「うっ…。分かっているって!課題もちゃんとやるから安心しろって!」
    「頼んだよ、ユウ。忘れていたら承知しないから」
    結人は航海に釘を刺されながらも、その場を後にした。

    「うん?メッセージが来ている。誰からだ?」
    航海と別れた後、スマホに着信が来ていることに気づいた。開いてみると凛生からだった。
    そこにはこう書かれていた。
    「いや、まだ決まっていないな。どうかしたか?」
    どうやら突然聞いたことにより何かあるのかと様子を伺っているようだ。
    「あぁ、いや、お前らなら割とすぐに予定立ててどこへだって行きそうなのになと思ってたからさ。週末なら基本的に航海も予定が空いていそうだけどなぁ……。」
    「それもそうだな。この出かけるとかについて微妙な所があるから少し相談に乗ってもらいたいんだが、明日の昼とかで大丈夫か?」
    「あぁ、その時間なら特に予定も無いし大丈夫だ!」
    結人は凜生の反応に少し驚きつつも、ひとまず相談に乗ってやらないと話が進まない気配を感じたので承諾することにした。

    その後、結人は航海に凜生とのやり取りの結果をメッセージで伝えることにした。
    「凜生に週末なら基本的に航海の予定は空いていることを伝えたら、出かけることについて微妙だから相談に乗って欲しいって言われた!とりあえずOKはしたから、相談に乗ってみてどんな感じだったかはまた後で伝えるな!」
    航海は桔梗の発言の意味が分からないのと、あっさりと承諾した結人も結人でどうなんだと内心モヤモヤしながら結人に返信をすることにした。
    「桔梗の出かけることについて微妙ってなんだよ……。もしかしていちご狩りに行きたいって何度も言ったからうるさすぎた…?」
    「確かに出かけることについて微妙ってよくわかんないよなぁ…。でも、あのいちご狩りは楽しそうだよな! バーベキューのセットの中にジンギスカンがあるのも凄いし。凛生にいちご狩りに行きたいってどの程度伝えたのかは知らないけど、そこまで気にする必要はないんじゃないか?」
    航海は結人からのメッセージを見て、少し安心したものの、凛生の考えがよく分からず不安が募るばかりだった。
    「ならいいんだけど……。ユウ、明日桔梗が何話すかわかんないけど、頼んだよ」
    「おう、俺に任せろ! どうにか二人が無事に行けるよう、うまくやってみせる!」
    少し頼りないところもあるリーダーに、航海は少し怪訝な表情を浮かべながらも自分の思いを託し、明日の報告を待つしかなかった。



    「五稜、待たせたな」
    「俺も、ちょうど来たところだし大丈夫だ! それで、航海とのお出かけの事だったな? 早速で悪いが、詳しく話を聞いてもいいか?」
    「そうだな、時間も限られているし、話そうか。まず、お出かけが微妙って言ったのはお互いに色々と忙しくて日付の調整が難しいというのもあるが、一番は費用……かもしれないな。俺なりに的場の好きそうなプランを練ってみたんだが、なんせレンタカー代だけで安くても5500円はするからな。そこに農園でいろいろやるとなるといくらアルバイトしていても少し躊躇する金額になるからな。白石程ではないものの、俺だって金銭面は気になるしな」
    凛生は少し苦しそうに、今回のお出かけについて思っていることを吐露した。航海のことがあれだけ好きなことが普段から伝わる凛生があんな反応をするなんて妙だと思っていたが悩んでいた理由が思っていたよりも現実的だったため、結人は少々呆気にとられていた。
    「あー、そうだったのか。いくらお前でも金銭面は気になるもんなんだな。確かにその金額だとちょっと考えるよなぁ……。俺、てっきりそれだけずっと一緒にいることになると理性が利かなくなるとかそんな感じのことかと思っていたぜ……。」
    「理性を失いそうになるのは二人で出かけている時によくあることだからからあながち間違いではないんだがな……。金銭面を気にするようになったのはシェアハウスでみんなと暮らすようになったから、というのが大きいがな。」
    「あぁ……。万浬、そういうのうるさいもんなぁ……。俺もこないだまた怒られたし。……ってか、車はわざわざレンタカーのお店で借りなくても、GYROAXIAの界川さんとかに借りれたりしないのか?もしそれが可能なら、費用面の心配は特に要らないよな!」
    結人の言葉に凜生はハッとした。他のバンドから車を借りるという発想は彼にとって目から鱗だったのだ。
    「その発想は無かったな。……しかし、何て言って借りるんだ?俺達の関係を知らないなら不審に思われるだろう?」
    「そこはあまり心配しなくてもいいんじゃないか?こないだ賢太さんに会ったけど何となくお前らの関係、察しているようだったぞ。」
    結人からもたらされた情報に凜生は目を見開いた。いくらあの人が情報通とはいえ、自分たちの関係性までなんとなくであっても把握されているとは思っていなかったのだ。的場が自分から言うまではとこちらからは特に何も言っていなかったのにも関わらずだ。
    「まさか知られているとは思っていなかったが……。そういう事なら話は早いな、ダメ元で交渉してみるか。あぁ、的場にも心配かけたことも含めて今後について相談しなければならないな。」
    「だな! 航海も大分不安そうにしてたし、早くした方がいいと思うぜ!」
    「あぁ、そうしてみるよ。五稜、相談に乗ってくれてありがとな」
    凜生は安堵の表情を浮かべながらそう言った。どうしたものかと考えていた事柄を解決出来そうな手段が見つかり、これでようやく次の段階に進むことができると思えたからだ。
    「いいってもんよ! バンドメンバーが困っていることを解決するのも、リーダーの役目だからな!」
    「それもそうだな」

    凜生は早速、航海に連絡を取ることにした。
    「的場、少し時間いいか?」
    「急に何?」
    彼から来た素っ気ない返信にこれは平静を装っているけど、相当不安だったのだろうなと思いながら、話を続けた。
    「的場が行きたがっていたいちご狩りについてなんだが、ようやく予定の見通しがたったから連絡しようと思ってな。」
    「それで今まで何も言ってこなかったの?」
    「あぁ、すまなかったな。少し色々あったんだ。それで〇日とかならどうだ?」
    色々聞きたいこともあるだろうけれどひとまず話を進めてしまおうと凜生は話を続ける。
    「まぁ……その日なら空いてるけど……。」
    「良かった。では農園に受付開始と同時くらいに着く感じでシェアハウスを出発する感じでいいな?車の手配は俺がしておくから」
    連絡してこないと思ったらいきなり連絡をよこして来て、どんどん話を進めようとする彼に不信感を抱きつつも、後で本人と結人の両方から話を聞こうと思い、航海は承諾した。
    「その様子だともう車の目処もついてるんでしょ。分かった……けど、なんで言い出すのが遅かったのか後でちゃんと説明してよね」
    「分かってる、連絡が遅くなってすまなかったな。」
    お互いに無事に行けそうな事に安心しつつも、どこかぎこちない雰囲気を残したままやり取りを終えた。

    航海は凜生が連絡をしてきても、何も言ってこない結人に少し呆れながらどんな事を話していたのか聞くために連絡をとった。
    「ユウ、桔梗とは何を話していたの?桔梗から連絡来て無事に行けることにはなったけど、出かけるのが微妙とか言ってユウと相談してたことについてまだ報告貰ってないんだけど?」
    「お、無事に行けることになったのか! ひとまず良かったじゃないか! で、凜生から受けた相談の話だったな?」
    これは少し怒られそうだと思いながら、結人は航海に相談に乗った結果について話すことにした。
    「結論から言うと……、お出かけについて微妙だと言っていたのには2つの理由があったからだったんだ」
    「2つの理由?」
    「あぁ、一つは金銭面について、もう一つは……お前と二人で出かけると、なんというか……理性を失いそうになるかららしい」
    結人は気まずそうにしながら彼が微妙だと言っていた理由を話した。
    「はぁ なんで桔梗は僕にそんなこと言ってくれなかったんだ! 後半の理由はともかく、レンタカーなら割り勘すればそこまでかからないだろ! カッコつけようとでもしたの」
    航海は何故言ってくれなかったんだという思いと普段、中々自らの思いを伝えることをしない彼から自分がちゃんと愛されていることを自覚し、顔を真っ赤にしていた。
    「まぁまぁ、落ち着けって。なんでお金の事黙っていたのかは俺にもよくわかんないけど、お前の事好きだからカッコつけたかったってのはありそうだよな!」



     そして、無事に迎えた当日。
    「的場、こっちは準備できたがそっちはどうだ?」
    「うん、こっちも準備できているからそろそろ行こうか」
     お互いに抱えていたわだかまりのようなものもなくなり、2人は気兼ねなく楽しもうとしていた。
    「そういえば、結局車ってどうしたの……ってその車、GYROAXIAの界川さんの車じゃん!どうやって許可取ったのさ!!」
    「あぁ、ここの農園に出かけると言ったらこの日ならバイトが休みだから、使ってもいいとあっさりと許可が下りたぞ。どうやら俺達の関係性を里塚さんからなんとなく聞いていたらしいが……。」
    車はどうしたのかと思い、尋ねようとすると見覚えのある車と衝撃の事実に航海は驚きを隠せなかった。
    「はぁ 僕、兄さんに言ってないんだけど 何で知ってる訳」
    「俺も五稜から聞いただけだからよく分からないんだが……。」
    「……。兄さんには後で確認するとして、とりあえず、出発しようか」
    「……そうだな」
     そう言って2人は農園に向かって車を走らせた。
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    ゆきんこ

    DONE大遅刻ですが、りおわたが付き合って初めてのバレンタインです。
    特別な人へ「もうそんな時期か……」
     食料品の買い出しに来ていた凜生はそう呟いた。
     買出しに行ったスーパーではバレンタインが近いこともあり、沢山のチョコレートが売られていた。このところ大学での定期試験やレポートに追われていたため、もうバレンタインの時期が近づいていることに気が付いていなかったのだ。
     
    「折角だし、的場に何か用意してやるか。しばらくはバンド活動に専念できるしな」
     そう言って凛生は頼まれていたものだけを購入し、航海に何を渡すのかを考えるため早々と店を出た。

     *

    「それにしても的場は自分でも何か色々と買うだろうからできればそれと被らないようにしないとな」
     夕食を終えた後、自室に戻った凛生はそう言って航海にどのようなものを渡したらよいか参考にするため、スマートフォンで調べ始めた。話題になっている製品やレシピ、ラッピング……航海がより喜んでくれそうかつ、彼の買うであろうスイーツと被らなそうなものは何かについての答えを模索していた。学生の身である為あまり高価なものを渡す訳にはいかないし、万浬に知られた日にはいくらプレゼントとは言え流石に怒られてしまうだろう。それに有名な品を選ぶと航海自身が購入したものと被る可能性が高くなってしまう……。
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