照れ隠しうだるような暑さが続く外とは違い、冷房のおかげでひんやりとした食堂で礼音は1人、相手が来るのを待っていた。
授業が終わる時刻からしばらくして、その相手は食堂にやってきた。
「礼音くん、お疲れ様」
「あ、深幸さんお疲れ様。今日は遅かったな」
「いやぁ、教授の話が長引いちゃってさ……。折角一緒に帰れるってのに待たせちゃってごめんな」
「それは仕方ないし、別にいいけど……。買い物行かないとなんだからそろそろ行った方がいいんじゃないか?」
「それもそうだね、じゃあ、行きますか!」
そう言って2人は買い物に向かうことにした。
「いやぁ、やっぱ外は暑いなぁ」
「教室が涼しかった分、余計にそう感じるよな」
「確かに、建物内は結構冷房効いてるからね」
車を停めている駐車場に向かってたわいも無い話をしていると急に礼音が静かになった。
「……深幸さん」
「どうした?礼音くん?」
礼音は手を繋いでみようかとも思ったが、何となく恥ずかしかったので、彼から目をそむけている状態のまま彼のトートバッグの端を掴み、その端を少し引っ張った。
「え、ちょっ礼音くん」
「今ならこの辺に人がいないし。……少しくらいいいだろ、こんなことしてたって」
彼は振り向きながら返事をしたが、驚きのあまり声が少し裏返ってしまっていた。自分の愛しい人が顔を真っ赤にしてあんな可愛らしい事をしてくると思わなかったのだ。
「それにしたってなんでまた……」
「……別になんだっていいだろ。それよりも早く車乗ろうぜ、あまり長いことここに居ると熱中症になるし」
深幸は彼にどのようなお返しをしようかと思考をめぐらせながら車の鍵を開けた。聞き出すことができたら1番いいが、彼が中々口を割らないことは分かっている。なので彼にこちらからお返しができればそれで彼は十分満足するのだ。
「さて、これからスーパーに行ってからシェアハウスに帰る訳だけど。礼音くん、シェアハウスに着いたら覚悟しといてね」