無題「うわ、すげぇ人だかり。今日なんかあったか?」
レコード屋からの帰り道。那由汰はうんざりしたように呟いた。彼らが歩いている通りは人がいてもまばらであることが多いため、あまりの人の多さに辟易としていたのだ。
「……僕もそう思って少し調べてみたんだけど、この近くで今日お祭りがあるみたい。多分それが原因じゃないかな」
「祭りか……。俺は行ったことねぇけど……四季、気になるようなら少し覗いてみるか?」
那由汰はお祭りに対してあまり興味はなかったものの、もし彼が行きたいのであれば少し付き合ってもいいと思い、尋ねてみた。
「うーん……人混みはあまり得意な方じゃないけど、折角だし少し覗いてみようかな」
「分かった、じゃあちょっと行ってみるか。四季、案内頼んでいいか?」
お互いに人混みはあまり得意な方ではないが、少し様子を見てお祭りの雰囲気を味わう分にはいいと思った2人はお祭り会場に向かうことにした。
「……やっぱりお祭りだから人が多いね。ひとまずどんな屋台があるか一通り見てみようか」
「だな、もしだったらあいつらへのお土産にしてしまうか。喜ぶと思うし。」
「そうだね、いいのがあったらそうしようかな」
お祭りになんて中々行かないし、行くとしてもそれぞれのチームで行くことになるため、この2人だけということにどこか新鮮みを感じながら2人は屋台を見てまわっていた。
「へぇ、焼きそばにたこ焼き、りんご飴、かき氷……食いもんだけでも色々とあるもんなんだな」
「そうだね、射的や金魚すくいなんかもあるからリュウ君がこの場に居たらすごくはしゃいでそうだなぁ……」
「あー、確かにうるさくしてそう。珂波汰もここに来たらなんだかんだはしゃぎそうだな。食いもんだけでも種類あるし、りんご飴なんかは中々見かけないからな」
「確かに、りんご飴とかかき氷はこういうところに行かないと中々見かけないしね。にしても……2人して自分のところのメンバーの事ばかり考えちゃってるね」
「だな、今度誘ってみるか」
2人はついついその場に居ない相手の事を考えていることに気づき、思わずお互いに顔を見合わせて笑みをこぼした。