保健室での攻防「失礼します。…あれ?先生いないのかな…」
そう言って保健室にはいると静かで人のいる気配がない。絆創膏くらいなら勝手に貰っていってもいいかな。
カッターナイフで指を切るなんて不幸すぎる。まぁ自分の不注意が原因なんだけど…。
とりあえず絆創膏がありそうなところをガサゴソと漁っていると、保健室のドアがあいて誰かが入ってきた。
「失礼します。…え!?高峯!?」
「え、守沢先輩…!?」
ドアの方を見るとそこには守沢先輩が立っていた。今は授業中なのに保健室に用事なんてどうしたのだろうか…。体調不良?怪我?
「どうしたんだ高峯!?どこか具合でも悪いのか…!?」
「いや、俺は絆創膏を貰いにきただけで…。ていうか守沢先輩こそどうしたんですか?もしかして具合悪いんですか?」
「え、嫌、俺は、その…そう!佐賀美先生に用があったんだが今いらっしゃらないみたいだし教室に戻るとしよう…!!」
先輩は明らかに動揺して目線をキョロキョロさせている。これ絶対嘘ついてるやつだ…。
「待って…!!」
先輩が出ていこうとするのをとっさに引き止めてしまった。引き止めるために掴んだ手がいつもより熱いような……
「…先輩、もしかして熱あります?」
「え…!?い、いや、ないぞ!?俺はいつでも燃えるハートの守沢千秋だからな…!!…ってた、高峯!?」
よくわからない先輩の言葉を無視して俺は先輩のおでこに手を当てた。
…やっぱり熱い。
「…熱い。先輩やっぱり具合悪くて保健室来たんでしょ。何で帰ろうとするんですか。ほら早くベッド行きますよ」
「え、ちょ、高峯!?」
俺は半ば無理やり先輩を引っ張るようにしてベッドへ連れていった。こうでもしないと先輩は絶対に休もうとしないから仕方ない。
先輩は思いの外大人しくベッドに寝かされた。やはり元気に振る舞っていたがかなり具合が悪いらしい。
先輩をベッドに寝かせ熱を測ると38.4℃だった。こんな高熱でしんどいだろうになんで隠そうとするのかな……。
「先輩、熱結構高いんで薬飲んでください」
「え!?いや、大丈夫だぞ!!薬なんか飲まなくても寝てれば治るからな…!!」
「はぁ?何言ってるんですか。こんな熱高いんだから薬飲まないとしんどくて寝るにも寝れないんじゃないですか。いいから大人しく飲んでください」
「いや、ほんとに大丈夫だから…!!」
しばらく俺と先輩の攻防が続いたがだんだん面倒くさくなってきた俺は自分の制服のネクタイを解いて先輩の手首を縛り付けベッドに押し倒した。
「た、高峯!?なにしてるんだ!?!?」
「先輩が大人しくしないせいですからね」
こっちはあんたのこと心配してるっていうのに人の気も知らないで…
こうなったら無理矢理にでも飲ませてやる。
このときの俺はイライラしてどうかしていたのだろう。
俺は薬と水を口に含み、手首を拘束されてベッドに寝ている先輩の上にまたがりそのまま先輩の口に薬を移した。
「んぅ…!?!?」
口の中ノものを全て先輩の口に流し込み、先輩がそれを飲み込んだのを確認した。
「な、な、何するんだ高峯!?!?」
「だって先輩全然薬飲もうとしないんですもん。だからもうこうするしか無かったっていうか…」
「だからっていきなり拘束して、く、口移しで飲ませるやつがあるか…!!」
先輩は既に熱で赤かった顔をさらに赤くさせて怒っている…照れているのか…?
どちらにせよせっかく薬飲ませられたのにそんな興奮して熱上がったらどうすんの。
俺は先輩の手首に巻いたネクタイを解いて先輩を完全に寝させる状態にさせた。
「いいからもう早く寝てください。……元気がない先輩とかなんか調子狂うし…?」
「高峯…」
「それにほら…!他のメンバーだって早く先輩に元気になって欲しいって思いますよ、絶対に…」
「ふふ…俺は幸せ者だなぁ……」
そんなことを言っていると先輩の目がだんだんウトウトしてきた。
「おやすみなさい。先輩」
先輩の寝息が聞こえたのを確認して俺は保健室を後にした。