死ぬのが救い?「あ、そうだ。ねぇ、レッド攻撃するの辞めてほしかったらさ、ここで死んで?そうしたらやめてあげるからさ」
「「!?」」
「銃で頭をバーン、ってさ。できないの?世界中の皆を救いたいんでしょ?」
俺はこいつの言ってることが何一つとして理解できなかった。先輩が死んだら世界が救われる?そんなの…
「……わかった」
「先輩…!?ちょっと何言ってんの…!?そんなことしなくても俺達が頑張って戦えば……」
「無理だ」
先輩は俺の声を遮った。
「なんで…!」
「だって他の隊員達はみんなやられたんだ!俺達二人じゃ倒すのは無理なんだ…!だから俺がここで死んで世界が平和になるのなら……俺はここで死んでやる」
先輩はそう言いながら銃を頭に構えている。
「……なんで…なんでよ…先輩…!」
「ありがとうな…グリーン…いや、高峯。今まで一緒に戦ってくれて…過ごしてくれて…俺はすごく楽しかったぞ」
「嫌だ…そんなこといわないでよ…先輩…」
「……ありがとう高峯……大好きだ」
大きな銃声の音が響いた。先輩が倒れていく様子はまるでスローモーションのようだった。
「先輩……!!」
眼の前で起こった出来事をようやく理解した俺は先輩のもとへ駆け寄った。先輩の周りは先輩の色である真っ赤に染まっている。
「…先輩…!!なんで…なんでだよ…!!」
「あはは!本当に自殺しちゃったよあの人!さすが流星レッドだなぁ。俺の言葉で死を選んだんだって思うと最高だなぁ」
「…お前……」
「そんな怖い顔しないでよ。あんたもここで死ぬ?」
「…あんたを殺す」
「あはは!いいね。じゃあどちらかが死ぬまで戦おうか」
俺はこいつを殺したいという一心で戦った。恐怖なんてものはどこかへいってしまったようだ。
どれくらい戦っただろうか。もうどちらもボロボロだった。お互い膝をついて肩で息をしている状態だ。
「…ねえ。あんた、なんであんなこと言ったの…」
俺は疑問に思ってたことを聞いた。
こいつはあは…と一つ悲しそうな笑いをこぼした。
「だって俺達とあんた達は敵同士でしょ?だから俺とあの人が普通に一緒に過ごすなんてできなかった。…だから、俺の言葉に動かされるあの人を見てみたいって思った。賭け…みたいなものかもしれないけど、ああいえばあの人はきっとそうするだろうって確信もあった。…好きだったから………」
ああ…こいつもあの人の眩しさにやられたのかな…。ほんと罪な人だよ……ねぇ、先輩?
「…そっか。あんたもあの人のこと好きだったんだね」
俺はもう立ち上がれないと悲鳴をあげる足を無理矢理上げてこいつの前まで移動した。
「ね、じゃあ俺達ここで一緒に死のうよ。あの人がいない世界なんて生きてても意味ないから」
「仮にもヒーローがそんなこと言うんだ?」
「いいんだよ。もうあの人いなくなっちゃったし…」
「ふ〜ん。まぁなんでもいいけど」
俺達はお互いの頭に銃を突きつけあった。
自分と同じ見た目のやつと心中なんて変な感じ。
「…先輩、俺もあなたが大好きです。今から会いに行きますね」
俺は小さな声でそう呟いた。
静かな世界でお互いの銃声だけが響いた。