Waltz of the Pure Maiden.故郷キンモク星を離れて地球に降り立ってからかなりの時間が経った。
プリンセスも見つからず、あるのは戦いのみ。
ある日突然崩された平和を取り戻すために戦う、それが私達のやる事だった。
男の体でいるのもだいぶ慣れてきたけど、やっぱり実体は女の体なもので、ファイターとしている方が気が楽であった為家ではほぼ女体で過ごしていた。
「ファイター?まだ起きていたの…」
「…メイカー、えぇちょっと寝付けなくて」
「ふふ、ファイターおいで?」
「ちょ?!メイカー?!」
「こうしたらリラックスできてよく眠れるってプリンセスが昔教えてくださったのよ」
たまに不定期で訪れる精神的な不安をこうしてメイカーはいつも宥めてくれる。
3人で1番背が高くて1番落ち着いていておねえさん。私はそんなメイカーが好きで。
***
けれど地球での戦いは激しさを増すばかりで、その度に敵を倒していかないといけなくなる。
私達だって人間だから、敵を攻撃するのも倒すのも苦しさや悲しさを感じる。
ヒーラーもメイカーもそれは分かっていたし、そうしないと私たちが傷を負ってしまうから。
2人は優しい子だから、2人の代わりに私が敵にトドメを刺すことをかって出ていた。
今日に限ってはヒーラーが仕事の為帰りが遅くなっていた。そんな時に聞こえてくる人々の悲鳴、恐怖の叫び。
2人がいるから私は強いファイターでいられるの。誰かひとりが欠けてしまってはいけない。
今はヒーラーが居ない。強くなれない。
「ファイター……?大丈夫?」
「メイカー、ごめんなさい。大丈夫よ。」
「手が震えているわね。辛い?苦しい?」
「…ねぇメイカー、行かないで。ここに居ましょう?家に帰りましょうよ……」
「大丈夫、こっちにおいでファイター」
「…私、嫌よ。もう誰も失いたくないもの、メイカー、ここに居て、戦いに行かないで……」
プリンセスも、故郷の仲間もいない今、私は強くなれない。もう誰も失いたくない。
知らず知らずのうちに壊れかけた街の隅で大粒の涙をボロボロと流していた。
セーラースターライツのファイターとして強く居なくてはいけないのに、誰よりも弱い心を晒してしまう。
「ファイター、大丈夫よ。私はあなたがいるなら必ずここに戻って来れるわ。あなたの強さを信じているのよ?」
「私の……?」
「えぇ。今も信じているのよ?いつも頑張りやさんなあなたが好きよ」
「メイカー……」
「大丈夫、私たちはこの程度では屈しないでしょ?さ、時間が無いわ。あなたの強さ、私にもう一度見せてくれる?スターシリアスレイザーを打つあなたが銀河一かっこいい所私に見せてファイター。」
「……えぇ、もちろん…!」
「ふふ、これが終わったら一緒に甘いものを食べましょうか。ヒーラーも一緒にね。」
メイカーは私の慰め方をよく知っている。
ずっと一緒にいるから、私が弱くなってしまう理由も強くなれる言葉も全部知っている。
あなたがいるから私は強くなれる。
今日も戦いの幕が閉じる。いつもより長く感じた今日の戦いはきっと激しかったのだろう。
戦いが終盤に差し掛かった頃ヒーラーも合流して無事に生きて帰ってこれた。
まだボロボロの状態で壊れかけの街を駆ける。
数メートル先にいる光へ手を伸ばしてその温もりに触れた。
温かい。私はこの温もりが愛おしい。
ヘリオトロープ色の瞳に吸い込まれてしまいたかった。
「ファイター!おかえりなさい」
「ただいま、メイカー…」
メイカーは何も言わずよく出来ましたという眼差しと、優しく触れるだけのキスをしてくれた。
「今日のファイターは一段とカッコよかったわよ。よく頑張りました。…ヒーラーもこっちにおいで」
「あたしは別に……いいのに。」
3人で温もりを分け合って、メイカーと目が合った。ヒーラーへはしなかったキス、少し緩められた三日月形の口元。
薄く唇を動かしてメイカーはそう呟いた。
「貴女だけよ?」
今日も私の愛する光は一番星だ。