既成事実があれば問題ないよね!「…ん」
カーテンの隙間から差し込んだ光で目が覚める。
…もう朝か。
まだ寝ていたい、と布団から出ることを拒む体を無理矢理起こそうとするが、ふと気づく。
ーーいつの間に自分のベッドに戻ってきた?
昨日は確か久々に予定が合い、酒の飲める連中と飲み交わしていたはずだ。
各々の近況報告をして、酒が回り始め至極下らない冗談を言い出し始め、それから…。
その先を思い出そうとして、ズキンと頭が鈍く痛む。
久々に会えたからとツマミを食うのも忘れ、酒ばかり飲んでしまっていたせいだろう。完全に悪酔いしてしまっていた。
もう両手で数えられない程度には酒の席に参加しているというのに、この有り様とは。
…薬、どこにやったけっな。
念のためを思い、枕元に常備してある酔い止めの薬を手探りで探す。確かここら辺にあったはず…。
ありそうな場所を手当たり次第ぽふぽふと叩いていると、不意に慣れない感触が手に伝わる。と、同時に反射的にそちらの方へ目を向けた。向けてしまった。
そこにいたのは一糸纏わぬ姿をした、金髪でガタイの良い、目元に濃い隈を刻み込んだ、見覚えしか無い男ーー
「おはよ、Qタロウ」
篠木敬二、だった。
ーーーーーーーーーーーー
「なん、おま、おまえ」
「んー?」
ケイジはいつもと変わらなそうな様子で返事をする。が、しかしだ。そんな落ち着いていられる状況ではない。落ち着いていられる訳がない。
自分の嫌な予感が当たっていませんようにと願いながら、考えのまとまらない頭を必死に動かし疑問をぶつける。
「…なんで、きさんがここにおるんじゃ」
「Qタロウがぶっ倒れて、俺ぐらいしか運べる奴がいなかったからかなー」
「…じゃあ次の質問や。なんで、お前も俺も、服を、着とらんのじゃ。しかも、ベッドの上で」
聞こえなかったなどという事が無いよう、文節ごとに区切りながら伝える。
どうか、どうかこの予感は杞憂であってくれ。頼む。これが冗談だったの笑い話で済んだら、さっきからやけにバクバクとうるさい鼓動だってきっと落ち着いてくれる。だから。
「まぁ…ヤることヤっちゃったからかな。俺たち」
…そんな願いも空しく、ケイジの一言によって俺の希望はあっさり打ち砕かれてしまったのだった。