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    koyubikitta

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    koyubikitta

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    一緒にいても何とも思わないけど一緒にいなかったらなんとなく不安になる夜帳と比鷺
    #お題ガチャ #男ふたりの色んなシーン https://odaibako.net/gacha/1739?share=tw

    早野の夜鷺さんへ贈るタイトルお題は、『書を捨てよ、此処を発とう』 です。
    #shindanmaker #同人タイトルお題ったー
    https://shindanmaker.com/566033

     浪磯の部屋を引き払って別の部屋を借りる予定だと聞いたのは、その部屋を明け渡すほんの数日前の事だった。というかつまり、今日初めて知った。
     萬燈夜帳が契約している部屋はいくつか存在しており、浪磯にあるマンションの一室もそうだった。バルコニーから海が見えるその部屋に、比鷺は何度か足を運んだ。山ほど本やCDがあるんだろうと思ったが、それほど物はなかった。当然だ。彼の自宅は別にあるのだから。広くてシンプルなのに殺風景ではない、趣味の良い部屋だと思った。
     良い風じゃん、日当たりも良さそう、トマトでも育てれば? なんていい加減なことを言いながら不思議な気分になったのをよく覚えている。出会ったばかりの頃はずっと萬燈に怯えていた。今は……今はどうだろう? 怯えたって仕方がない相手だとは思う。怖い部分もあるし、可愛い部分もある。人間らしいな、と思うときも人間らしくないな、と思うときもある。まあだから、つまり、慣れたんだろう。慣れた比鷺はふかふかのソファに寝そべってテレビで洋画を見たりもした。自分が介入できない映像を二時間も見続けるのは大変だな、と思って、次はあまり使ってないゲーム機を持ち込んだ。萬燈と対戦して、勝ったり負けたりする。……まあ、トータルでは俺が勝ったけどね。
     そう、ゲーム機だ。
     ついさっき萬燈が、ゲーム機を返却したいと連絡してきたのだ。流石に邪魔だったかな、と遠慮を思い出しかけた瞬間に、あの部屋は数日後に引き払うつもりだと告げられた。
     目玉が飛び出るかと思った。
     そういう大事なこと、なんで事前に言ってくれないんだ!? と言おうとして、よくよく考えてみればそんなことを要求する権利など欠片もないことに気がついた。そもそも浪磯のマンションで彼が過ごしていたのだって、たまたま興味が湧いたから、海が見たいときに来ていただけだろう。他の興味が発生すればさっさと移ってしまう。そんなものだ。
     次は父部(ちちぶ)に部屋を借りるつもりらしい。山じゃん。遠。
     そんなところまで遙々出かけらんないよ、と返信しようとしたところで、そもそも、そこまでして彼の部屋に遊びに行く理由なんて無いことを思い出す。たまたま近くに住んでて、たまたま対戦したいゲームがあっただけ。そもそもオンライン対戦だってできる。
     わざわざ彼の部屋に行く必要はない。
     けれどそんなシンプルなことに比鷺は納得できなかった。
     だって、なんか、そんなのおかしくない? 俺の手の届くところに居ないと駄目じゃない?
     マンションへ向かう旨だけ返信して、比鷺はのろのろと出掛ける支度を始めた。


    「世話になったな。ほら、これを返しておく」
     萬燈夜帳はいつだって萬燈夜帳で、萬燈夜帳じゃなかったことなど一瞬もない。
     今日も当然のような顔をして、彼は萬燈夜帳だった。玄関開けたら二秒で夜帳だ。なにもなくとも自信ありげに見える笑みを浮かべて、ゲーム機の箱を手渡してくる。
    「どーも……」
     受け取りつつ、ちらりと室内を伺う。大きな段ボールが二つだけ詰まれているのが見える。もともと物の少ない部屋だった。家具と消耗品を除けば、いくつかのCDとわずかな本だけだっただろう。だから俺がゲーム持ち込んであげたのに。当然のようにいなくなっちゃうんだから。
     比鷺は一回だけ大きく息を吸った。大切な提案をしてあげるためだ。何かありそうだと感づいた萬燈が、興味深そうな目でこちらを見る。この男はなんにだって興味があるのだ。
    「ね、萬燈先生。あの本捨てちゃおうよ」
    「……捨てるつもりはねえが。その提案をしてきた理由を聞いても?」
     なるべく不敵に、生意気そうに、偉そうに見えるように、笑ってみせる。強欲を隠さない態度が彼はお好みだ。
    「あの本の代わりに俺が着いてってあげる。だから置いてっちゃおう」
     きっとあの大きい段ボールが二つあれば、比鷺は入れるだろう。……間違いなく底が抜けるだろうから、特別サービスして自分の脚で歩いてやってもいい。だから、と、目の前の楽しげな男を射貫くように見つめてやる。
    「せっかくのお誘いだが、お断りだな」
     言うなり、比鷺が反応を返す前に、比鷺の手首を掴む。
    「両方着いてきて貰うことにする」
     囁かれた言葉に比鷺は笑ってしまった。言うと思った!
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    koyubikitta

    DOODLE貴方は時間があるなら『膝枕をして照れている早野のゆかくら』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/524738

    親知らずが痛い皋のためにうどんを柔らかめに茹でる昏見
    #お題ガチャ #男ふたりの色んなシーン https://odaibako.net/gacha/1739?share=tw
     いつも通り昏見は皋宅に忍び込んだ。
     そしていつも以上にむっすりした表情の皋にどうしたのか、と聞いて、返答が返ってきたとき、昏見は泣きそうになってしまった。
    「おひゃしらつがいはい」
     信じがたい滑舌である。
     あの皋所縁が!
     奥歯に物が挟まったような言い方って実際にあるとこんなにフニャフニャなんですね録音して逆タイムカプセルに詰め込んでイケイケだったころの所縁くんに聞かせてあげたいですきっと泣いて喜びますよ、と返してあげると、皋は不機嫌そうな顔をしたけれど何も言わなかった。
    『おひゃしらつがいはい』
     昏見の最新式・皋翻訳機だからこそ意味が分かる。つまり、
    「親知らずが痛い」
     ということである。
    「うーん、親知らずって懐かしいですね。私も昔は毎日屋根の上に投げてましたよ。痛いって事は変な生え方をしているんじゃないですか? はい、あーん」
    1616

    koyubikitta

    DOODLE一緒にいても何とも思わないけど一緒にいなかったらなんとなく不安になる夜帳と比鷺
    #お題ガチャ #男ふたりの色んなシーン https://odaibako.net/gacha/1739?share=tw

    早野の夜鷺さんへ贈るタイトルお題は、『書を捨てよ、此処を発とう』 です。
    #shindanmaker #同人タイトルお題ったー
    https://shindanmaker.com/566033
     浪磯の部屋を引き払って別の部屋を借りる予定だと聞いたのは、その部屋を明け渡すほんの数日前の事だった。というかつまり、今日初めて知った。
     萬燈夜帳が契約している部屋はいくつか存在しており、浪磯にあるマンションの一室もそうだった。バルコニーから海が見えるその部屋に、比鷺は何度か足を運んだ。山ほど本やCDがあるんだろうと思ったが、それほど物はなかった。当然だ。彼の自宅は別にあるのだから。広くてシンプルなのに殺風景ではない、趣味の良い部屋だと思った。
     良い風じゃん、日当たりも良さそう、トマトでも育てれば? なんていい加減なことを言いながら不思議な気分になったのをよく覚えている。出会ったばかりの頃はずっと萬燈に怯えていた。今は……今はどうだろう? 怯えたって仕方がない相手だとは思う。怖い部分もあるし、可愛い部分もある。人間らしいな、と思うときも人間らしくないな、と思うときもある。まあだから、つまり、慣れたんだろう。慣れた比鷺はふかふかのソファに寝そべってテレビで洋画を見たりもした。自分が介入できない映像を二時間も見続けるのは大変だな、と思って、次はあまり使ってないゲーム機を持ち込んだ。萬燈と対戦して、勝ったり負けたりする。……まあ、トータルでは俺が勝ったけどね。
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    recommended works

    さわら

    DOODLE貴方はさわらのアシュグレで『朝四時、ランデブー』をお題にして140文字SSを書いてください。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/587150

    当然のごとく140字を超える。付き合ってるアシュグレ
     はふ、と欠伸した。眠気で目をしょぼしょぼとさせながらミント味の歯磨き粉を歯ブラシに乗せ口に咥える。普段ならしゃっきりとさせてくれるような清涼感は今は眠気に勝てない。
     シャコシャコと音を立てつつ半分寝ているような緩慢な動きで磨いていると、扉の開く音がする。
     視線だけを動かせば、ぼやける視界に写ったのは同じく眠そうに大きく欠伸をする、ところどころ寝癖ではねた頭をした男の姿だ。視線に気づいたように、服の裾から腕を突っ込んでがりがりと腹を掻いていた男の瞳がこちらに向いて、呆れたような色になる。
    「テメェ、今何時だと思ってやがる」
    「…………四時、です」
     咎めるような声は普段よりも若干柔らかく聞こえるのは起き抜けでもあるからだろう。けれど、バツが悪いことには変わりない。
     明日はオフだからと少しだけ夜更しするつもりで始めたゲームに夢中になって、気がつけばふと視線を向けた時計に映し出されていた数字に驚いたものだ。流石に寝ようと思い、その前に歯を磨きに洗面所に来た。
     グレイとは正反対に、意外と規則正しい生活を送るアッシュは早朝トレーニングを欠かさない。いつもはもう少し遅い時間に活動をはじめ 1188

    Remma_KTG

    DOODLE診断メーカーで出たやつ書いてみた。

    蓮魔の長晋のBL本は
    【題】柔い眼
    【帯】物にも人にも執着しない貴方が怖い
    【書き出し】雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。
    です

    #限界オタクのBL本 #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/878367
    柔い眼 雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。墓から線香の匂いを連れてきていて、それが妙になじんでいた。
     同じ傘に入る男の肩が濡れている。長可はそっと傘を傾けて彼の体を影に入れたが長い髪はどうしても濡れてしまう。片手で髪を引き寄せて、雑にまとめて肩に載せてやる。長可より背の低い男の表情かおは、前髪で隠れてしまってこちらには見えない。
    「……悪い。片手じゃうまくまとまらねえわ」
    「帰ったら切るんだ、そのままでいい」
     さっきまで他の話をしていた高杉は、一瞬だけこちらに反応をよこしてまた元の話の続きに戻った。駅近のガード下にある特定の条件を満たした時にだけ現れる謎の古本屋があってなかなか手に入らない希少な本を取り扱っているんだとか、金品では売ってくれず他の代価を要求されるんだとか。そんな眉唾な噂話をわくわくした様子ですらすら話す。適当にあいづちを打ちながらほどけてまた雨に濡れ始めた髪をそっと集めた。
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