空を見ようよ【中編】 無機質な通知音とともに目覚めるのは、決して悪い気分ではなかった。枕元のスマートフォンんの画面をちらりと見れば、好きな人の名前が目に入って口元が緩む。ロックを解除してメッセージに目を通せば、意識はたちまち鮮明になって、風真玲太の朝が始まった。
『おはよう』
たった一行の短い朝の挨拶を、道端に咲いた花のアイコンが呟く画面。玲太も同じく『おはよう』と送った。すると少しして返ってきた返信。一枚の写真と短い文章。
『お弁当作った』
丸くて小さくて彩り重視の、彼女らしい弁当の写真だった。ハート型に切られた卵焼きがなんだか微笑ましい。『うまそうだな』と送ると『おいしいよ』と返ってくる。どうやら味見も完璧に済ませているらしい。苦笑しながらベッドから起き上がった。
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