空を見ようよ 「思い出」と書かれた段ボールが崩れ落ちて、風真玲太の部屋に写真やアルバムが散らばった。手に持った段ボールをひとまず置いて、それらを拾い集める。窓辺から吹き込む春風に煽られて、ページがめくられた。
このアルバムたちは、玲太についてイギリスへと渡り、そして今日一緒に日本へと帰ってきたものだ。眠れない夜も起きたくない朝も、この写真たちを見て力をもらっていた。
拾い上げた一枚の写真を裏返す。そこには、幼い頃の玲太と、その隣で笑う「あの子」の姿があった。
「あいつ、どうしてるかな……」
滅多にない独り言をこぼしながら、写真をアルバムの中に収めていく。どの写真も、玲太の隣には必ずあの子がいて、花のような笑顔を咲かせている。
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