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    StarlightSzk

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    【初恋メモリー】飛翔の先にあるもの

    「ああ、ノエル……マイ・エンジェル・ノエル!!」
     駄犬は今日もよく吠える。相変わらず後ろに「!」がいくつつくのかよくわからないほど大きな声で僕のことを呼んできた。
     放っておくと何度も呼ぶあたりやはりあいつは犬なのかもしれない。
     ともあれ、仕方がないので振り返り…………ぎょっとした。
    「のえる………………」
     ブロンドの髪の下、紫の瞳は光を多く反射し……なぜか、アキラは涙を流していた。
     僕があまりに邪険にしすぎただろうか。それとも何かまたおかしなことが原因なんだろうか。後者なら捨て置くが、前者なら思い当たるフシがないわけではない。というかそれで泣かれるのも困る。
    「何があったんだ、アキラ」
    「ああっよくぞ聞いてくれたね!」
     右手を天にあげ、ああ、と言いながらもまだ泣く男。今どきオペラ歌手でもそのポーズはとらない。嫌な予感に口元がむずかゆくなっていると。
    「今キラートリックで、君が俺のもとから一〇〇度目の飛翔を遂げたんだ!! とても感動しているよ!!」
     
     ……ああ、やっぱりろくな理由じゃなかった。
     早口で何かをまくしたてている駄犬を見つつ、しかし、と思う。なんだかんだ一〇〇回もアキラとグロリア・セレモニーを発動しているのだ。そろそろ何かアレンジを加えてもいいかもしれない。そう思うと、彼がこうして節目を祝ってくれたのも何かの縁だ。……そう思わなければやっていけない。
    「アキラ」
    「なんだい、ノエル」
     仕方がないのでポケットティッシュを取り出す。差し出してやれば流石にぐずぐずの鼻は拭ってくれた。それでいい。
    「一〇〇回を知らせてくれたオマエを見込んで頼みがある」
    「なんだって引き受けよう!」
    「今のグロリア・セレモニーに足りないものがなにか教えてほしい」
    「は…………」
     背に腹はかえられない。一〇〇度も投げてもらっている相手ならば、何かいい手が見つかるかもしれないと思ったのだ。なんだかんだ、一〇〇回もあわせているのだから。
     だが目の前のアキラは僕の言葉に動きを止めてしまった。ケント・ツバキから借りた漫画で見たことがあるかもしれない。そう、石化だ。このままだとどこかからヒビ割れてしまうかもしれない、などと現実逃避をしている間もアキラは動かない。これはいよいよ最終手段が必要だろうか。脛を蹴るという荒療治が可能な飼い主の顔を思い浮かべつつ押し黙っていると、こ、と目の前から声がした。
    「こ?」
    「このままの何が悪いと言うんだい?! 俺は君の美しい勇姿があれば何も要らないよ!!」
    「……!!」
     突然目の前で両手を包まれて懇願されてしまった。ちょっとまてなんだこの図は。
     まるで僕が悪いことでも言ったようじゃないか。
    「ノエル。確かに、君が高みを目指すことを止めることなんて俺には出来ない。だが、そのために君自身のスタイルを崩すことだけはやめてほしいんだ……」
     ああ、また頬が濡れてきた。これはまずい。今度は本当に僕の言葉で泣かせてしまった。
    「アキラ……」
     背格好の都合で俯いた表情までわかってしまう。唇を曲げて黙する姿はどう見ても痛々しかった。
     だから、素直に聞いてみる。
    「そんなに嫌か?」
    「嫌だ」
    「…………なら、今はしない」
    「本当かい?! ありがとうノエル!!」
     ぎゅっと手を強めに、それこそ痛いほど強めに握られる。僕がケイのような潔癖症だったら今頃泡を噴いて倒れていたかもしれない。
     そう思いながらも「ああ」と言った胸の内は、どこかすっとしていた。





    *****
    2022/02/26
    ワンドロライ100回記念
    お題:100 PUダンサー:ノエル、晶
    これを書くのにcount107を見返して「エトワール……ほんと好き…………」となりました。きらきらと輝いていてね。
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    ✨✨✨✨✨
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    StarlightSzk

    DONE【晶蛍】ほしあかりのワルツ
    22.3.10 9章配信2周年「#星空の下のふたり」
    「おやすみ」
    「おやすみなさい」
     瞼を閉じても、そこにもう闇はない。
     
     晶が『エトワール・キャッスル』などと呼んだ僕たちの拠点。そこには最低限の屋根しかない。故に三人が並んで寝転ぶと誰か一人はその恩恵に預かれない。雨が降った場合は別としても、星の輝きが降り注ぐなんて素敵じゃないかと晶が言ったために屋根が拡張されることはなかった。何よりあのとき僕たちは拠点を作り続けてくたくただった。だからこれ以上屋根が広がることもなかった。それだけの話だ。
     ともあれ、その屋根がない位置で寝る係が今日は僕だった。
     寝返りは最低限しか打てないが、方向を間違うと晶と鉢合わせる。晶は左にいるから右を向いて眠るんだと身体を硬くしていたものの、人間たるもの眠気とともに力が抜ける。そのうちに仰向けになり、そうしてついに左へと寝返りを打ってしまってから、ハッと気がついた。目を開ければあの主張がうるさい――見た目は整った顔が間近に広がってしまう。それはなんだか心臓が落ち着かなくなりそうで嫌だった。嫌でも数日前に言われたあれこれを思い出してしまうから。ああ、けれども彼だって寝返りを打っているかもしれない。その場合それは彼の愛しのマイ・エンジェルに向けられていることだろう。ノエルも大変なことだ。先程も「君を危険から守るために抱きしめて眠るよ!」なんて言い出して足蹴にされていたというのに。
    2023

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     ともあれ、その屋根がない位置で寝る係が今日は僕だった。
     寝返りは最低限しか打てないが、方向を間違うと晶と鉢合わせる。晶は左にいるから右を向いて眠るんだと身体を硬くしていたものの、人間たるもの眠気とともに力が抜ける。そのうちに仰向けになり、そうしてついに左へと寝返りを打ってしまってから、ハッと気がついた。目を開ければあの主張がうるさい――見た目は整った顔が間近に広がってしまう。それはなんだか心臓が落ち着かなくなりそうで嫌だった。嫌でも数日前に言われたあれこれを思い出してしまうから。ああ、けれども彼だって寝返りを打っているかもしれない。その場合それは彼の愛しのマイ・エンジェルに向けられていることだろう。ノエルも大変なことだ。先程も「君を危険から守るために抱きしめて眠るよ!」なんて言い出して足蹴にされていたというのに。
    2023