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    sooya_main

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    いい夫婦の日なのでいい夫婦になるやまみつの話を書きました

    2023.11.22 いい夫婦の日やまみつ「大和くん、今度の水曜、十六時に僕の家ね」
     たまたま撮影からの帰りにテレビ局の廊下ですれ違い、軽い挨拶のみですれ違おうとしたところを捕まった。大和としてはそんな認識である。突然告げられた日時は確かに大和の予定は空いていたが、用件も告げずに立ち去ろうとする男の名を呼ぶ。
    「今度は何企んでるんですか、千さん」
    たっぷりの嫌味を込めて聞けば千は心外だという風に首を振った。
    「何って、僕たちの結婚記念日だよ。覚えてないのか?」
    言われ、大和は宙を仰いで記憶を辿る。確かに去年の今頃大規模に周りを巻き込んでの千と百のひと騒動があった。紆余曲折の末関係各所に告知を行い晴れて公私共にパートナーとなった二人だが、その詳細な日付まで覚えていろというのはあまりに横暴では無いだろうか。大和の表情の変化から思い至ったことを悟ったらしい千は、じゃあそういう事でと手を振り踵を返す。普段の出不精っぷりが嘘のように早足で姿を消され、文句のひとつも言い損ねてしまった。おそらくラビチャで行かないと伝えても無理やり連れ去られる運命だろう。浅からぬ付き合いの経験から自身の未来を予測した大和は、仕方なく脳内のスケジュールに言われた日時を書き込んだ。

     当日、訪れたのは都内某所の高層マンション。中階層に位置する千、引いては百の部屋は贅沢にも一フロアをぶち抜きで造られている。二つのオートロックにエレベーターも承認式と無駄に高いセキュリティを乗り越え部屋の扉を叩けば、少し申し訳なさそうな顔の百が出迎えてくれた。
    「ごめんね大和! ユキが無理言ったみたいで」
    「別に百さんが謝ることじゃないっすよ。あの人の無茶は前からでしょ」
    呆れたような口調でとりなすともう一度顔の前で手を合わせた百が部屋の中へと先導してくれる。ちらりと見えた左手の薬指にはシンプルなシルバーの指輪が光っていた。
     長い廊下を抜けメインの大部屋に入ると中はずいぶんと賑やかだ。アイドリッシュセブン、トリガー、ズールと今を時めくアイドルグループのメンバーが大集合である。どんだけ盛大にやる気だと再度呆れつつもキッチンへ向かえば、千、龍之介、三月と料理が得意な面々が勢揃いしていた。
    「千さん、このオレンジ使っていいですか?」
    「いいよ。あ、そっちにキウイとグレープフルーツもある」
    「このお肉、運んできますね!」
    てきぱきと動く二人の横で、コンロの前に立つ千は何かを焼いているようだ。無駄に絵になるその人をジト目で眺めていると、こちらに気づいた三月が声をかけてくる。
    「お、やっと大和さんも来た! 遅かったな」
    「いやいや、ミツこそいつからいるのよ」
    ため息交じりの問いには二時間前の時刻を返される。頼む方も頼む方だが、来てしまう三月も余程人が好い。おそらく同じ時間から呼び出されている龍之介にも内心手を合わせる。そんな大和の胸中を知って知らずか、三月は唇を尖らせて皆のいるテーブルの方を指さした。
    「そんなことよりあんたはあっち手伝って来いよ。できた料理運んだり、飾りつけもまだ終わってないみたいだからさ」
    言われて見れば確かに他のメンバーが各々懸命に用意をしているようだが、何分個性の強い者ばかりなのであまり上手くはいっていないようだ。ちらりと見えただけでも折り紙のわっかを壁につけようとした陸が転びそうになったり、環とナギがはしゃいで一織に怒鳴られたりしている。百と楽が協力して机の上を配置しているがあの大雑把コンビでは悲惨な結果になることが目に見えていた。
    「へいへい。あーあ、せっかくミツの顔見に来たのになぁ」
    「なっ、そんなん毎日見てるだろ! バカ言ってないでさっさと働けおっさん!」
    キャンキャンと吠えるその頬は一刷け赤い。恨めしそうにこちらを睨む瞳に満足し、大和はその場を離れた。千と百が関係各所に結婚宣言をしているように、大和と三月が付き合っているのも親しい人間には周知の事実である。かと言って普段はこのようなことはしないのだが、どうやらこの騒がしい空気に少し浮足立っているらしい。千に文句の一つも言ってやろうと思っていたのに忘れたなとぼんやりと考えつつ、大和も会場セッティング組の輪の中へと加わった。

     三十分ほどして始まったパーティーは、広いリビングルームを活かした立食式のものとなった。五つのテーブルに分けて置かれた料理やスイーツの数々はまるでホテルのブッフェのそれである。
    「改めまして、今日は僕たちのために集まってくれてありがとう。お礼に色々用意したから、楽しんでいってね」
     一応呼びかけた側ということもあってか珍しく挨拶らしきものをした千だが、次の瞬間手に持った簡易マイクを百の胸元に押し付ける。それを当然のように受け取った百は少し恥ずかしそうな、しかし幸福そうな顔で口を開く。
    「急なお誘いでごめんね! ダーリンったら一週間前に思いついちゃったみたいで!」
    「モモだってやりたいって言ったでしょう」
    むっと顔を顰めた千に、百が甘えるように抱き着く。やにはに始まりそうになったネタではない夫婦ネタに切り込んだのはやはりと言うべきか三月だった。
    「はい、モモさんもユキさんもおめでとうございます! てことで、カンパーイ!」
    乾杯、と十四人分の大合唱が響き、続く涼やかなグラスの合わさる音。何人かと乾杯を交わし隣まで戻ってきた三月に大和は無言で自身のグラスを差し出した。
    「ミツ、お兄さんとも乾杯しよ」
    「はぁ? 別にいいけど、あんた今日ちょっと変じゃない?」
    怪訝そうな顔をしながらも三月は大和のグラスに自身のそれを合わせる。満足そうに息を吐いた大和は注がれていた薄い琥珀色のアルコールを一気に半分ほど煽る。二十歳以上の大人組に用意されたのは何やらお高そうなシャンパン、それ以外にはぶどうジュースやお茶など、色のはっきりとした飲み物の類だ。未成年のいる集まりだからと配慮した結果らしい。あまり馴染みのない炭酸を舌で転がしながら大和は頭半分小さな杏色を眺める。
     千と百が結婚宣言をするに至る過程で、なんだかんだと一番動き回っていたのが三月だった。お世話になっている二人だから、そして元来の世話焼きな性格もあったのだろう。しかしそれだけではないと浅からぬ付き合いで育った勘が告げていた。
    ――好き同士の二人ならさ、ずっと一緒にいて欲しいじゃん! そこに男とか女とか、関係ないよ
    どうしてそこまで頑張るのかと聞いた際、三月が返した言葉。この一年、大和の心の片隅で常に抜けない棘として固まっていたものでもある。きっと三月は本心からそう思い、他意はなく大和に答えたのだろう。だが、同じように男同士、メンバー同士で付き合っている立場としては無心では聞けない台詞だった。やはり三月はそういった、形のある関係を望んでいるのではないか、と。
     酒も回りいい具合に煮詰まり始めた思考を遮ったのは、突如落とされた百の宣言だった。
    「ではここで、オレたちの愛の軌跡をダーリン作曲の曲に載せてお見せしちゃいます!」
    片手を上げた百がリモコンを操作すると天井から巨大なロールスクリーンが現れ、プロジェクターが作動する。写された映像は本当に結婚式で流されるような趣向を凝らしたメモリアルムービー。ぽつぽつとここに集められたメンバーの写真も混ざるが、基本的には千と百の二人に焦点があったものだ。
    「……すごい身内ネタ」
    「……身内ネタ、ですね」
    ぴたりと同じタイミングで呟いた者同士、天と巳波が顔を見合わせる。微妙な空気に構わず、近寄った千はだめなの? と首を傾げた。
    「ダメじゃないっす! おふたりとも、おめでとうございます。呼んで貰えて嬉しかったです。な、トラ!」
    「俺に振るな!」
    合同ライブという大舞台を経てなお、遠慮の抜けきらないズールはどうやら戸惑いの方が大きいようだ。確かに一年前の騒動にこの四人はほとんど関わっていない。感謝の気持ちを込めて、ということならばむしろ紡や姉鷺といったマネージャーの面々を呼ぶべきなのではと思ったが、面倒ごとに自ら首を突っ込む気にはなれなかった。
     そういえば四人グループのもう一人がいないと見回すと薄緑の頭の少年はこちらのグループの高校生組に混ざっている。どうやら百が王様プリンの限定品を揃えていたようで、はしゃぐ環に巻き込まれたようだ。
    「あ、いすみんのそれ抹茶モンブランじゃん! ちょーうまそう、一口ちょうだい」
    「四葉の一口でかいからやだよ……そっちのストロベリーチーズケーキくれるならいいけど」
    「では私はこちらのマンゴーソースのものをいただきますね」
    学校も同じ三人はそれなりに仲良くやっているようで、ライブのリハーサルや練習の間もわいわいと話している光景をよく見かけた。それにしても一織が陸を放っておくのは珍しいと思いかけるが、今日はきちんとお守りがついている。
    「陸、よそ見しないで。またこぼすよ」
    「えー、だってほら、天にいも見てよ!」
    食べこぼしを天の手で拭われている我がグループのセンターは、きっとこの会場で唯一メモリアルムービーを真剣に見つめていた。自分たちも参加した場面が流れれば喜んで天の袖を引っ張り、その度に呆れたような顔をしながらも応じている。合同ライブ以降あの双子のわだかまりはなくなったようで、こうしてただの兄弟として触れ合う姿をよく目にするようになった。散々振り回され見守ってきた立場からすれば少し寂しいものもあったが、幸せそうな二人の顔を見ればその思いも吹き飛んだ。
    「よぉ逢坂、飲んでないのか?」
    「このお酒美味しいから勿体ないよ、壮五くん!」
    大男二人に囲まれ目を白黒させているのは壮五だ。さすがに助けに行こうかと足を踏み出しかけるが、それよりも先に煌びやかな王子様が手を伸ばす。
    「ハァイ、八乙女氏、十氏。それならばワタシにいただけませんか?」
    壮五の背後から抱き着き二人を見上げるナギに、楽が訝し気な顔で問いかける。
    「ワタシにって、お前未成年だろ?」
    「ワタシの国では十八歳からアルコールオッケーですよ」
    「そうなんだ! あ、でも日本にいるうちはダメなんじゃないかな……」
    大真面目な龍之介の様子に、壮五がくすくすと笑いを漏らす。それを指摘され再びわたわたと手を振っているが、あの様子ならば大丈夫だろう。メンバー思いはいいことだが反面外部への対応が冷たくなりがちだったナギも、ずいぶんと丸くなった。こんなことを本人に言えばアナタに言われたくないなどと返されるのだろうが、大和は目を細めて四人から視線を逸らす。
     一巡して戻ってきた瞳は、やはり隣のオレンジ色に吸い寄せられた。いつもならばどこかしらのグループに混ざりに行きそうな三月だが、今日は大人しく大和の横でシャンパンを舐めるように飲んでいる。具合でも悪いのかと不安になるが、先ほどのキッチンでの様子を見るにそれも無さそうだ。いっそ直接聞いてしまおうかと思ってふと、大和は主役の片割れが姿を消していることに気づいた。
    「ミツ、百さんってどこ行ったか知ってる?」
    「え? あれ、トイレとか……?」
    反射的に問いかけると三月も同じように辺りを見回し始めた。二人で探してもいないものはいないので、すぐに顔を見合わせることになる。正面から向き合った瞳がやはりどこか翳っているような気がして、己の憂いを切り出そうとしたところでタイミング悪く廊下からの扉が勢いよく開く。向こうから現れたのはなぜか長いローブのようなものを身にまとった百だった。
    「みんな、盛り上がってるー? 突然だけど次のコーナー行っちゃうよ! ユキ!」
    注目の集まったところで百が手に持っていたマイクを千に投げ渡し、皆の目がそちらに向く。ゆったりとした笑みでそれを受け止めた千は、数歩歩いて大和の正面へ来るとマイクを通して話しかけた。
    「ねえ大和くん、君何か言うことがあるんじゃない?」
    突然の問いにどきりと心臓を跳ねさせて、しかし持ち前の演技力でそれをおくびにも出さず答える。
    「なんの話ですか、ユキさん。急に呼んで来させておいて、スピーチでもしろって言うんですか?」
    ピリッと走った緊張感に周りが二人の動向を見守る姿勢に入った。隣の三月から一番心配そうな視線を感じる。ただ一人気にしていないのは千本人だけだ。
    「それも面白そうだけどね。君がスピーチをする相手は僕らじゃない。君の横にいる、三月くんだよ」
    「は、え?」
    千の意図に薄々気づいていた大和とは違い、本気で分かっていない様子の三月が間抜けな声を上げて自身の顔を指さす。真ん丸なオレンジの瞳は、見開きすぎて零れてしまいそうだ。そうこうしているうちにまた数歩距離を詰めた千は大和へマイクを差し出した。
    「一年前、僕たちは君らのおかげで永遠を誓い合うことが出来た。次は、可愛い後輩の背中を押す番だと思ってね」
    にこりと笑う千に対し、大和は拳を握りしめた。
     千たちが言う永遠の誓い、男女間で言う結婚のような形を結ぶことを三月が望んでいるのか、大和には分からなかった。例え望まれたとして、自分がそれに応えられるかどうかも。じっとこちらを見る、オレンジ色の視線が頬に刺さる。大和もそちらを向きたい。けれど恐怖で体が動かなかった。もしもそちらを向いて蜜色の瞳に困惑や拒絶の色が浮かんでいたら、いろいろな意味で立ち直れる気がしない。三月なしでは生きていけないとこの数年で嫌というほど思い知った。だがその逆はどうかと言われれば、きっとそんなことはないのだ。アイドルとして、和泉三月という男として誰よりもかっこいい恋人は、大和が隣にいなくとも輝き続ける。
    「どうしたの、早く受け取ってよ。これ意外と重いんだから」
     眉根を寄せて本当に迷惑そうな顔をした千の声で引き戻された。ごくりと唾を飲み、からからに乾いた口で息を吸う。
    「……できません。あんたらと違って、俺はそんな大層な誓いなんて立てられない」
    どくどくと心臓の音が全身に伝わって喧しい。なぜこんなことをするのだと大和は千を思い切り睨みつけた。三月に惹かれて、焦がれて、思いがけず両想いになって。それだけで十分幸せだと言うのに、なぜ放っておいてくれないのか。いつか訪れる見えない終わりに怯えながら、そんなものはないように笑う今の関係でいいのだと言い聞かせていると言うのに。
    「結婚なんて男と女でも離婚するし、不倫だってする。そんなに重く考えるもんでもないだろ、今時」
    酷く無責任な発言に怒鳴り返しかけて、はたと気づいた。
    「聞き覚えがある? 去年大和くんが僕に言ったことだよ」
    「あんた、そんなこと言ってたのかよ……」
    ぼそりと落ちた呟きは千の言葉よりも深く大和の胸に刺さった。確かに細かい部分までは覚えていないが、同じような言葉を千に向けた覚えはある。だがそれは確実に互いを必要としあっている二人の最後の一手を決めてやるためで、今の自分たちへ向けるのとはわけが違うのだ。
    ――本当に?
     不意に触れた右手の温もりに、そう問いかけられた気がした。小指と薬指だけを緩く握った手は、知らぬ間に手を置いていた陽だまりのように温かい。その熱でようやく解けた首を回し隣を見れば優しい色をしたはちみつの瞳が微笑んだ。
    「オレは離婚も不倫もする気はないけど、あんたからのプロポーズなら受けてやってもいいぜ?」
    「っ!」
    息を飲んだ大和と共に、周りからどよめきが起こる。様々な感情を孕んだ視線が向けられるが、大和の意識はただ一つオレンジ色のそれにしか向いていなかった。

     今ともに生きたいと、そう望む気持ちだけで十分ではないかと千に説教をした。その言葉を、今の自分にも向けて良いのだろうか。

    「はーい、皆並んで並んで!」
    神妙な空気を醸す二人を置いて、百が机を避けた空間に他のメンバーを半分ずつに分け整列させる。いつの間に持ち出したのか小道具らしい分厚い聖書を抱えて、大和と三月の前に立った。
    「さ、大和くん、舞台は整ったよ。ここにいる十四人が証人だ」
    「いや、これじゃ結婚式じゃないっすか」
    恥ずかしさと困惑で訳が分からなくなりながらも突っ込めば、千はそれを鼻で笑い飛ばした。
    「プロポーズと結婚式が一緒にできるなんて、お得じゃない」
    そう残すと千は百の整列によって空けられていた一人分の空間に滑り込んだ。
     先輩、後輩、そして同じグループのメンバー。全員に見守られて、更には先に返事まで与えられたような状況。こんなところでプロポーズなど情けないにもほどがあるが、きっと自分はこうでもされなければ覚悟が決まらなかった。だからきっと、にやにやとニコニコの中間くらいの笑みでこちらを見てくる先輩夫婦には感謝をしなければいけないのだろう。
     深くため息をつくと、大和は三月の方へ体を向けた。合わせてこちらを向いてくれる小柄な彼の両手を取る。
    「ミツ、俺も離婚も不倫もしない、どころか一生離してやれないと思うけど。俺と一緒にこれからも生きてください」
    「っ、はは、喜んで!」
    ぐしゃりと表情を歪めた三月が胸元めがけて飛び込んでくる。肩口に押し付けられた目元が、吐く息が、熱い。ひと回り小さい体だと言うのに痛いほどに抱きしめられて、大和は負けじと回した両腕に力を込めた。
    「二人とも、お楽しみ中のところ悪いけど、うちの神父さんが待ってるから」
    背後から声をかけられ、大和は置かれている状況を思い出す。同じように慌てて大和から離れた三月だが、離れ際に鼻を拭かれたような気がするのは気のせいだろうか。こほん、とひとつ咳ばらいをして聖書を開いた百がよく通る声で宣う。
    「二階堂大和、和泉三月。あなたたちは健やかなる時も、病める時も、互いに愛し、敬い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
    朗々と読み上げられた文言は、先ほど千が発した無責任なそれとは程遠い内容だった。神の前ではないけれど、それよりも余程効果のありそうな十四人の前で、こんなことを誓ってしまえば本当に一生破れない。まだ少し不安を残した大和が三月を窺えば、小さなお日様は笑って頷いた。
    「誓います!」
    「俺も、誓います」
    とても無様な形にはなってしまったけれど、目の前の太陽が笑ってくれるならばそれでいい。各々の想いを乗せて送られるおめでとうの言葉と拍手の中で、大和は改めて胸中で永遠の愛を誓った。
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