警部補の惚れてる相手ダニエル・ロウ警部補とある事件の情報交換をするべく指定されたバーにもうすぐで到着するというところで
「好きです。付き合ってください」
若い女性の声で、確かにそう言っているのが聞こえた。
豊かで艶やかな黒髪の、銀のフレームの眼鏡が似合う真面目そうな女性である。
そして、彼女の告白を受けているのはダニエル・ロウ警部補。
(うわあ)
ちょっと驚いた。
ロウ警部補も、女性に正面切って告白されたら体をモジモジさせて照れるんだ。
女性の表情が見えるように、ちょっと体を動かしてみる。
罰ゲームや冗談で告白しているのではない事は、警部補を見つめる彼女の視線でよく分かる。
さて、警部補はどう答えるのだろう。
心臓が早鐘を打ち、身体が強張っている。
これじゃ僕が警部補に告白したみたいではないか。
「あ、あのな・・・」
ややあって、警部補の口から返事が告げられた。
それは
「ありがとうな。だけどごめん、俺には惚れてるやつがいるんだ。だから付き合えない」
というものだった。
「本当にごめんな」
そう言って警部補はバーに入っていき、女性はその場を去った
女性の名前もどういう知り合いなのかも気になるが、それより何より気になるのは、警部補の惚れてるやつとは誰なのか、という事である。
二人の姿が視界から消えても、僕はそこから動く事が出来なかった。
この時、僕にとっての警部補は、単なるビジネスの相手ではないそれ以上の存在なのだと気がついてしまった。