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    へけつみゅん

    @mineso00

    推しカプはだいたい細身美形×ムキムキ

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    へけつみゅん

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    X(Twitter)に載せている現パロ風守護獣ファンタジー小説の第1話です。守護獣と呼ばれるものが人間に憑いて護っているという世界観です。一応恒刃です。

    狐火「応星さん?」
    目が覚めた。長い間、朧げに夢を見ていたようだ。碧い眼をした青年が俺の顔を覗き込みながら話しかけてくる。電車の中には俺達二人しか居ない。
    「もうすぐカフカさんから言われた駅に着くが…大丈夫か?」
    「…ああ、ありがとう。」
    俺達はカフカという雇い主からの依頼で、電車に乗ってとある辺境の田舎に来ていた。といっても、この青年は俺と違い雇われでも何でもなく、良心と少量のお駄賃程度で俺の仕事に付いてきてもらっている。名は丹恒という。
    「折角の休みなのにこんな依頼に付き合わせて悪かった」
    「いや、本当に気にしないでくれ。俺が付いてきたくて付いてきたようなものだから。」
    それにちょっとした旅行のようで気分転換になる、と隣の青年は軽く笑う。こう言って貰えると俺も罪悪感を抱かずに済む。名前はさん付けなのに敬語ではないのは、彼に敬語を使われるのに異常な違和感があった俺が使うなと頼んだからだ。けれど俺より年齢が一回りは下の彼には流石に呼び捨ては躊躇われたらしい。
    俺は先程まで眠っていたのだろうか。電車に乗ってどのタイミングから眠っていたのか分からないが、随分と長い間眠りに落ちていた感覚がある。自分が何故此処に居るのか、此処は何処だったか考えた程、頭がまだ覚醒しきっていない。
    そうこうしていると終点に着いた。目的地である。電車から降りると、住んでいる街とは違う青い薫りがした。蝉の鳴き声は何処に行っても変わらず煩い。
    「聞いてきた通りだな。風情があるというか」
    都会育ちの丹恒はなんだか嬉しそうだ。瑞々しい若い横顔に緑の木々はよく似合う気がした。
    「おう、こんな所までお疲れさん。あんたらが街から来た探偵さんじゃのう?」
    駅から暫く歩くと、今回の依頼人だろうか?七十代ぐらいの男性が手を振って迎えに来た。彼の守護獣は…穏やかな眼をした老犬だ。大体の一般人の守護獣は犬か猫が多い。
    「ああ、守護獣問題専門の探偵事務所から来た者だ。貴方が依頼人か?」
    うんにゃ、と男性は首を振った。「わしは頼まれて来たけんのう。じゃが今回のことで困っとるのはわしら全体の問題じゃけえ。」
    はて、では依頼人はどこに?まあ依頼人から直々に頼まれたのは探偵事務所を運営しているカフカであるし、俺達はただ依頼をこなせばいいか。
    守護獣の説明は追々するが、この探偵事務所は全国的にも珍しい守護獣問題に特化した探偵事務所だ。というより探偵の域を超え、暴走した守護獣討伐の依頼まで承っている。
    俺の雇い主、探偵事務所の主であるカフカは今回の依頼には付いてこなかった理由がある。決してあの女が夏の田舎を出歩きたくないだけとかそんな理由ではない。おそらく。
    「例の寺はもうすぐですか?狐が悪さをしているとか…」
    おう、と男性は頷く。「もう使われとらんお寺なんよ。情けない話じゃ、わしらには太刀打ちできんでのう。寺の住職さんは良い人じゃったが、まさか亡くなった後に守護獣があんな妖狐になるとは…」
    守護獣はふつう、主の死後は共に消えるものである。だが、あまりにも強い力を持った守護獣は主の死後も周りに大きな影響を与えることがある。今回のケースの狐は悪い影響を与えて村の人々をはたはた困らせているらしい。
    寺があるという山に入ると、夏には到底感じることの無い寒気がした。
    此処に住み憑く狐はどうやらかなりの大物のようだ。山だというのに野生の動物の気配すらしない。人間の立ち入りを深く禁ずるような、かといえばまるで誘い込むような、妙なおぞましさがある。
    「信用しとらんわけじゃないが、兄さんら大丈夫かいのう?あの狐はほんまバケモンよ」
    大丈夫だとは言ったが、はっきり言って俺一人では太刀打ちできないだろう。情けない話だが。
    例外なのは俺の守護獣ではない。ついてきてもらった丹恒の守護獣の方である。密かに畏れを感じて汗をかく俺とは裏腹に、丹恒はかなり余裕そうだった。山だというのに蚊すら飛んでいないことに驚きながら、三月という友達の少女から狸を見かけたら写真撮って欲しいって頼まれてたのに…など呑気すぎることを言っている。老人もこの青年が異常なことに気が付いたようで、俺と目を見合わせた。
    「村の若いもんもびびってこの山よう入らんっちゅうに。この子一体どんなんが憑いとるんかいの」
    俺は見れば分かる。覚悟しておいた方が良いと老人に忠告しておいた。丹恒は少し腑に落ちないといった顔をしている。
    廃寺の敷地内に入った。すまん、わしはここで待っとってええかの。老人は謝ってきた。守護獣である老犬もぷるぷると震えながら懸命に主の側で寄り添っていた。俺達は承諾した。なんなら俺ももうここで待機しておきたい。丹恒一人で良いんじゃないのか。しかし一応面子がある。渋々、廃寺の山門をくぐる。
    山門をくぐった辺りで俺の守護獣が勝手に実体化し、久し振りに低く唸っている。俺の身を護ろうとしているのだ。主とは違いなんと勇敢なものか。俺は安心しろと自分の守護獣の背中をさすった。
    俺の守護獣は大きな黒毛の狼である。守護獣に詳しいカフカが言うには、結構大物らしい。刃ちゃん…と俺はカフカから呼ばれている。刃ちゃんとそっくりな赤いおめめがチャーミングねと言われた。俺と同様、この狼も初対面の人間にかなりの威圧感を与えてしまう為、滅多なことがない限り実体化させないようにしている。
    本堂が見えてきた。同時に白い毛並みの狐が飛び出してきた。
    でかい。でかすぎる。180cm以上はある俺の身長をはるかに超えている。想像通り、尻尾が8本…8本か。9本ではないのか。伝説上の九尾の狐をこの目で見ることはできなかったが、それでもこの威圧感だ。妖怪といっても決して過言ではない。
    俺の狼が勇ましく吼える。が、狐は全く意に介さずといったご様子。全ての人間と守護獣を舐めきっているこの態度。本当にこの妖怪…いや、この守護獣の主は人徳者だったのか疑わしく思ってしまう程のふてぶてしい態度。
    狐は口から火を放とうとしていた。成程。やはり狐といったら狐火か。虫が守護獣のカフカが嫌がる訳である。
    「やめろ!」丹恒が俺を護ろうと前に立ち塞がる。「手荒なことはしたくない、ここから早急に立ち去ってくれ」
    なんとこの妖狐相手に説得しようとしている。なんで説得している。妖狐はふん、と鼻を鳴らし、ならお前の守護獣を見せてみろといった様子で嗤っているようにも見えた。すると丹恒の影から、すうと青白い、丹恒の身長より大きな蛇が具現化した。しかしこの大蛇は仮の姿であることを、俺は知っている。
    大蛇の目が光ると身体の鱗がパリパリと剥がれていき、顔の周りには悠々とした毛並みが広がる。2本の髭が生え、鋭いかぎ爪の付いた太い腕が生える。現れたのは先程の大蛇を優に超える、水を纏う巨大な龍である。寺の本堂を軽く巻き込めるぐらいのサイズはある。
    この水龍こそが、俺だけでは危険な依頼の場合に丹恒を連れて行けとカフカに言われる理由だ。龍を守護獣にしている者は少なくとも俺は見たことが無い。ましてやこんな大きさの龍は尚更だろう。
    自分を上回る守護獣は初めて見たのか、妖狐は怒り狂い、口から火の塊を吐いてきた。が、丹恒の水龍が大量の水の渦を操り火の塊を消し去る。凄まじい水しぶきの中、丹恒が真っ直ぐ妖狐の方へ腕を伸ばすと、水龍が妖狐に巨大な水の塊をぶつけるのが見えた。妖狐の断末魔が山全体に響き渡ったかのようだった。

    静寂が訪れた。
    妖狐の姿は見当たらない。消滅させられたのだろう。水龍は俺を何故か一瞥した後、何事も無かったかのように丹恒の影の中へ戻っていった。
    「応星さん、怪我は?」「無い。無いが…お前の龍に世話になるといつも水浸しだな」
    俺も丹恒も、境内も水浸しだった。廃寺があまり破損しなかっただけまだ良い方だ。今回は真夏ということもあり涼が取れて丁度良かったが、冬にこれをされると最悪である。
    「すまない。どうしても加減が難しくて…お前も大丈夫か?」
    丹恒は優しく俺の守護獣に呼びかける。狼はイヌ科らしくぶるると体を震わせると、丹恒の手にちょんと鼻を擦りつけた。こいつなりの礼である。守護獣は主の感情を、主より明確に表現する。丹恒が狼の頭をよしよしと撫でると、嬉しそうに長い尾を振る。犬じゃないんだからやめろ。なんだか俺が気恥ずかしくなっていると、後ろからおーい、と俺達を案内した老人が手を振って近づいてきた。とりあえず丹恒のおかげでこの村の人々の危機は去った。また改めて俺からもあいつに礼をすべきだろう。

    「お疲れ様」「俺はまたもや何もしていないがな」カフカの事務所へ帰り報告する。
    「そんなこと無いわよ、刃ちゃんが行くから丹恒くんも行ってくれるんだもの」
    ねえ?とカフカに微笑まれると、丹恒は素直に頷いた。
    「烏滸がましいかも知れないが…俺は、応星さんを守りたいからついて行ってるだけなんだ」
    丹恒は俺の目を見て真っ直ぐ言い切った。俺はこいつのこういう素直すぎるところが少々むず痒かった。カフカが更ににこにことしている。
    丹恒と違いあまり素直になれない俺は、カフカに話題を振った。
    「それで、結局依頼人は誰だったんだ」「さあ?でもお代はちゃあんと頂いてるわよ」
    さあだと?更に依頼料を貰ってるときたから意味が分からない。
    「そんな心霊現象みたいなことが?」「たまにあるのよ、守護獣絡みだとね」
    ねー、とカフカは今度は背後の守護獣に声をかけた。巨大な蜘蛛は何も言わない。主と違い無口なカフカの守護獣は虫嫌いの人間が失神してしまう程の大きさである為、カフカも滅多に自分の守護獣を外に見せない。
    「それで、次の依頼なんだけど」
    「今度は何だ」「ヒバゴンよ」「…はあ?」「ヒバゴンとは?」「知らない?比婆山麓で見つかったからヒバゴン。正確には今回の依頼はヒバゴンに似た主不明の守護獣が見付かったから調べてほしいというものよ」
    「だからそのヒバゴンというのは何なんだ」「おっきいゴリラみたいなの。流石にキングコング程の大きさじゃないとは思うけど…」
    そんな大きさだと今度はキングコングヒバゴンVSウォータードラゴンとかいう特撮怪獣映画が始まってしまう。俺の可愛い狼の出番なんか無いだろ。
    「今度はカフカ、お前が行け」
    「嫌よー、また山なのよ?コートが駄目になっちゃうわ」
    流石のお前も夏にコートなんか着ないだろう。丹恒は冷静にスマートフォンでヒバゴンについて検索しているらしかった。
    「…丹恒、嫌なら嫌と言っていいんだぞ」
    「大丈夫だ。応星さんが行くなら、ついて行く」
    この頼もしすぎる青年を護衛に連れて、また山デートか…デートってなんだ。デートではない。俺は頭を抱えた。
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    noa_noah_noa

    CAN’T MAKE夏の初め、フォロワーさん達とマルチ中に「⚖️にキスしてほしくて溺れたフリをする🌱」の話で盛り上がり、私なりに書いてみた結果、惨敗しました。
    もし覚えていたらこっそり読んでください。もう夏が終わってしまいますが。

    ※フォロワーさんとのやり取りで出てきた台詞を引用・加筆して使用しております。

    ※水場でふざけるのは大変危険です。よいこは絶対にやらないでください。
    通り雨通り雨


     キスがほしい。
     恋人からのキスが欲しい。

     突如脳内を駆け巡った欲望は多忙の恋人と規則的な己の休暇を無断で申請させた。恋人に事後報告をすると、当然こっぴどく叱られた。けれども、その休暇を利用して稲妻旅行をしようと誘えば満更でもなさそうに首を縦に振ったので胸を撫で下ろした。まず、第一段階完了。

     稲妻までの道中、セノはいつものように気に入りのカードを見比べては新たなデッキを構築したかと思えば、『召喚王』を鞄から取り出してすっかり癖がついてしまっているページを開き、この場面の主人公の台詞がかっこいいと俺に教えてくれた。もう何百回も見ている光景だというのに瞳を爛々と輝かせる恋人はいつ見てもかわいい。手元の書物に視線を落としながら相槌を打っていると離島に着くのはあっという間だった。第二段階完了。
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