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    へけつみゅん

    @mineso00

    推しカプはだいたい細身美形×ムキムキ

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    へけつみゅん

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    X(Twitter)に載せている現パロ風守護獣ファンタジー小説の第6話です。恒刃です。

    夢中此処は何処だ?目の前に居るのは丹恒か?いや、違う。
    丹恒に似ているが、髪が長いし翡翠色の角が生えているし服装もなんだか古めかしい。
    「応星」
    俺を呼ぶ声もずっと低い。
    この丹恒に似ている角が生えた男は、俺の髪を一房手に取り口づけをした。…髪が真っ白だ。俺の髪ではない。しかし応星とは俺の名前だ。
    今の俺は、一体誰だ?愛おしげに見つめてくる、この男は一体誰なのか?
    腰を抱かれ、男の瞳に自分が映りそうなほど側まで引き寄せられる。男はまるで、消えない呪いをかけるような重さで囁いた。
    「二度と離さない」

    夢から目覚めると、龍が俺を覗きこんでいる。
    俺は驚きのあまり声が出なかった。
    「応星さん、おはよう」
    丹恒の守護獣の龍だ。そうだ。昨晩、丹恒は俺の家に泊まっていったのだった。この守護龍はとっくに見慣れている筈だが、寝起きに間近で見ると流石に心臓に悪い。
    「そいつ、珍しくずっと応星さんの寝顔見てて…汗がひどいな。そんなに暑かったか?」
    クーラーが効いた涼しい部屋にも関わらず、俺は汗でびっしょりだった。そんなに汗をかくほどの悪夢だっただろうか。丹恒に似ている男に迫られ、何か言われたような覚えがあるが…具体的には思い出せない。
    「ほら、タオル。あと朝ごはんできてるぞ。トーストとスープぐらいだが…」
    「気が利くな」
    「泊めて頂いたからな」
    その一言で俺は、急に自分の昨晩の乱れっぷりを思い出し少し恥ずかしくなった。丹恒は俺の部屋で迎える朝にも慣れたものだ。当初はあんなに初々しくて可愛らしかったのに。
    丹恒が淹れてくれたブラックの珈琲を啜る。他人に淹れてもらう珈琲はどうしてこんなに美味く感じるのか。俺より目覚めの良い丹恒が先に起きて、時間に余裕のある日は朝食の準備をしてくれるのが泊まりに来た時の日課になっていた。至れり尽せりで悪い気もするが、この作業は丹恒にとっては楽しいことらしい。
    「これから授業があるんだろう?」丁度良く焼けたトーストを齧りながら俺は言った。
    「ああ。また次の休みに会おう。じゃあ、行ってきます」
    「…行ってらっしゃい」
    自分の家で誰かを見送るのは未だに慣れない。俺の守護獣の狼はまだ寝たりないのか、大きな欠伸をしていた。

    俺の出勤先であるカフカの探偵事務所に着くと、10代前半ぐらいの見慣れない銀髪の少女が依頼人用のソファーに座っていた。どうやらスマートフォンでゲームをしているようだ。客だろうか。
    「おはよ、刃ちゃん。狼くんは元気?」
    「…何故俺の守護獣が狼であることを知っている?」
    「おはよう刃ちゃん。紹介したことなかったわね。その子は銀狼。刃ちゃんが来る前から偶に私の仕事を手伝ってくれている子よ。」
    「おはよう…カフカ。お前、こんな子供までこき使っているのか」
    子供と言うと、少女はむくれたように言った。「私は子供って名前じゃない。銀狼」
    「偽名だろう、どう考えても」
    「ゲームのアカウント名みたいなものだよ。貴方もそうでしょ?刃 応星(レン・インシン)さん。随分変わった名前だよね、これも」
    「…身元不明の俺の名前を調べた奴というのは、この子のことか?」
    「そうよ」カフカは紅茶の準備をしながら言った。「銀狼、紅茶は飲めるのよね?」
    「冷た〜いミルクティーがいい」「はいはい」
    「…お前のおかげで俺は自分の名を知れた。それは感謝しているが…どうやって調べたんだ?」
    「それは企業秘密」銀狼は氷を入れたミルクティーをストローで吸いながら、器用に片手でスマートフォンを忙しなくタッチしている。俺はスマートフォンの操作が下手なので羨ましい限りだ。
    「こんなにちっちゃいけど、優秀なハッカーなのよ、銀狼は。刃ちゃんのことを調べるために危ない橋を渡ってもらったんだから」
    「そう、私に感謝するべし。お礼はプリペイドカードでいいよ」銀狼は自慢げだ。
    「…プリペイドカードの支払いを要求されたら詐欺だとCMで聞いたことがある」
    「貴方、おじいちゃんなの?」
    銀狼の横には、中型犬ぐらいの大きさの狼がいた。毛並みは主と同じく美しい銀色だ。
    「…名前の由来は守護獣か」
    「そうだよ。わ、刃の守護獣でっか。でも私の子もそのうち大きくなるもんね、こんくらい」
    銀狼の守護獣は俺の守護獣に興味津々な様子だった。尻をクンクンと嗅いでいる。俺の守護獣はされるがままだ。こいつは体こそでかいが、気性は基本的に大人しい。
    「この子から嗅いだこと無い匂いがするって言ってる」
    「嗅いだことの無い匂い?」
    「なんか凄い、厳かな?おっきい爬虫類?両生類?っぽい匂い」
    「……」
    「丹恒くんの龍かしら」
    「えっ!!龍が守護獣の人ほんとに居るの!?マジ?見てみたいな〜足、生えてる方かな?生えてない方かな?」
    「…本人は隠してるから、外には言いふらすなよ」
    「言わないよ。信じてもらえないもん、普通。匂いが染み付くほどって、その丹恒って人と一緒に暮らしてるの?」
    「…一緒に暮らしてはいない。今日の朝まで共に居ただけだ。」
    「もしかして恋人〜?意外と隅に置けないね、刃ちゃんも」
    「その刃ちゃんっていうのやめろ」
    「じゃあ刃ね。私達、きっと仲良くなれるよ」今度は俺の狼が、銀狼の守護獣の尻の匂いを嗅いでいた。この二匹は仲良くなったようだった。じゃれあって遊んでいる。
    「で、カフカ?私に頼み事があったんでしょ」
    「そうそう。高校生ぐらいの女の子を探して欲しいという依頼があったの。手掛かりは昔のその子の外見と守護獣だけ。」
    「依頼人は?」
    「依頼人も高校生の女の子よ。もうすぐ此処に来る予定なんだけど…」
    控えめなノック音が響き渡る。「どうぞ」とカフカが言うと、銀色のロングヘアーの学生服の少女が挨拶をしながら入ってきた。
    …どことなく銀狼に似ている。一瞬彼女の血縁者かとも思ったが、銀狼は無言で座る場所を譲ったため、本当にただ似ているだけなのだろう。
    その少女からは夏にそぐわない雪の香りがした。守護獣は真っ白で雄大な角の生えたトナカイだった。産まれた土地が寒い地方だったのかもしれない。
    「依頼のメールをくれたのは貴方ね?」
    「はい。私はブローニャ・ランドと申します」
    銀狼がぴくりと反応した。「知った名か?」俺は小声で聞いたが、銀狼は首を横に振った。では一体どうしたのだろう。
    「メールの内容によると、君と同い年であろう女の子を探して欲しいのよね?」
    「はい…私はその子の小さい頃の記憶しかありません…私は昔、児童養護施設にいました。中々友達ができなくて、本ばかり読んでいた私と唯一遊んでくれた子だったんです」
    差し出された紅茶に「頂きます」と言ってから、その少女は続けて話す。
    「あんなに仲良くしていたのに、どうしてもその子の名前が思い出せなくて…青みがかかった黒髪で、守護獣が紫色の綺麗な蝶々だったことだけは覚えているんです。私が引き取られて暫く経って、その子を探しにその養護施設に行ったのですが、その子も引き取られた後でした」
    「引き取られたなら名前が変わっている可能性もあるわね」
    「そうかもしれません…私はあの子がいま元気でやってるのか、それだけでも知りたいのです。…この少ない手掛かりでも依頼を引き受けて下さいますか?」
    「守護獣が分かってるなら大丈夫よ。守護獣は人間の生涯、唯一ずっと変わらないもの。此処は守護獣専門の探偵事務所だもの」
    思い詰めていたような少女の顔が、初めて今日綻んだ表情を見せた。

    「という訳で銀狼、お手伝いよろしくね」
    「よく言うよ。ほぼ守護獣しか情報が無いじゃん。蝶々が守護獣の人が少なけりゃ良いんだけど…まあ蜘蛛の人だって少ない訳だし」
    銀狼は持ち込んできたノートパソコンを開いて、スマートフォンと同時並行で操作していた。俺には分からないやり方だが、彼女なりの調査方法があるのだろう。
    「刃ちゃんと私は足で稼ぎましょうね」
    「うわっ古風〜〜」
    「あら。結構ばかにできないのよ。聞き込みって」
    カフカはともかく、俺は機械に聡くない。銀狼の言う古い方法で捜す他無いのであった。

    疲れた。俺は仕事着のままベッドに横たわる。
    今日一日の結果は捜している少女の名前は「ゼーレ」だと分かったことだ。名前さえ分かれば、もし彼女に不幸が起こってなければの話だが、捜すのはそう難しくない。
    今日一日放ったらかしていた自分のスマートフォンをふと眺める。丹恒からの連絡は無かった。俺と丹恒は毎日連絡のやり取りをするタイプではない。なのになんで俺は丹恒からの連絡を期待したのか。
    俺は丹恒と付き合いだしてから、仕事の内容より自分の感情の方が理解不能なことが多くなった。恋に浮かれているというのはこういうことなのか?時々泊まりに来てくれるだけでも充分だというのに、それ以上を求めるのは迷惑だろう。
    急に丹恒からのメールが来た。メッセージアプリを上手く使いこなせない俺のために、丹恒はわざわざ現代の若者には馴染みがないメールの方で連絡をくれる。メールの文面は「応星さんの今度の休みは俺の家に来てくれるか」というものだ。俺はすぐに「行ける」と返信した。単純に連絡が欲しい時に連絡が来たので嬉しかったのだ。通じ合っているのかという錯覚さえおぼえる。
    ふと、今日の依頼人の銀髪の少女に思いを馳せた。良い報せを伝えられたら良い。あの子の逢いたい人にもぜひ逢わせてやりたいと思いながら、俺は知らない間に眠りに落ちた。
    丹恒に似た男が出てくる夢は視なかった。
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