留学のために羅浮にきてからだ、自分にしかみえないそれが見えるようになったのは。
それは大柄の男の形をしている。自分以外いないはずの部屋にもどこへでもそれはついてきた。
夜に起きたときぬろっと襖にうつったその影が恐ろしくてしかたがなかった。黄昏時に自分の影を覆うようにして伸びてきたそれに走って逃げ出そうとして迷子になったこともあった。
一度は死んだ故郷の縁者の霊なのではないかと期待した。もしや生き残りの自分を慮ってくれたのではと。しかし影は明らかに戦う戦士のような筋肉をつけて腰まで髪を伸ばしていて自分の知る誰にもあてはまらなかった。
懐炎先生曰く、イマジナリーフレンド。しかしこの男はにこりとも微笑まずただ後をついてくる影であり到底友人のようには思えなかった。むしろ自分の魂を刈り取るときをまつ死神に思えた。
6931