轟出🚺が個性婚(偽装)をする話初めて見た時の印象は『不思議な人だな』だった。
いかにも着せられたという感じの桜色の和服を纏って、ちんまりと座る姿はかわいらしい。たとえ、その頬に化粧では隠せないほどの傷が刻まれていたとしても、大きな翠の目と、未だに童顔な輪郭は愛らしかった。だが、そんな彼女ーー緑谷出久ーーの戦う姿を、轟焦凍は見たことがある。黒い鞭を操り、己の身体ごと一つの武器であるかのごとく、過酷に舞う姿。獣か怪物かとすら思われるような、黒く変貌した様は、息を呑むほどに美しく、痛々しくもおぞましかった。
それが今、こうして平和の中でゆったりとしているのは、よいことなのかもしれない。
ただ、それが、轟との見合いの席でなければの話だが。
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