あっという間/次の約束/名残惜しげになにかが触れては離れていく感覚にゆっくりと意識が浮上していく。まどろみの中それが何なのか手繰り寄せようとした。
「ふ、はは」
伸ばした手に触れたのはぬくい唇だった。ふにふにと手遊びしているとぱっくりと口が開けられてぺろりと指を舐めらる。普段なら淫靡な刺激ともとれるそれだが今回に限ってはまだ意識がまどろみの中にあるせいか彼女はくふくふと笑うばかり。そのあとも唇は彼女の瞼や鼻、頬なんかに触れては離れてを繰り返すが彼女はどれも時々くすぐったそうに笑うばかりで目を開ける気配がない。
「お嬢さん、そろそろ目を開けてほしいんだが」
戯れを続けながらベックマンは起床を促す。
「じゃあキスして、唇によ?」
ベックマンが意図的に避けていることに気づいたらしい彼女がようやくそれを強請ってきたのでベックマンはしめしめと思った。
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