七夕の願いごと 梅雨明けを待つ関東は、朝から日差しが強く蒸すような天気だった。太陽の光を反射して道路のアスファルトもじりじりと温度を上げている。午後はどれだけ暑くなるのか。
「今日、七月七日は七夕です」
佐藤と明日ノ宮が朝食をとっていると、テレビからそんな声が聞こえてきた。締切に追われていた二人は、そういえば、という顔でテレビを眺める。
「七夕といえばそうめんですが、由来には諸説あり……」
「ひとつめは、中国の言い伝えで」
アナウンサーの説明を先取りするように、箸をおいた明日ノ宮がつらつらと、それこそ竹筒にそうめんを流すように話をする。佐藤も食事の手を止め、明日ノ宮の話に耳を傾けた。
「と、いうことだ」
「勉強になります。じゃあ、今日のお昼はそうめんにしましょうか。家にはお昼を食べてから帰る、って連絡しておきます」
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