ラが人形師で人形がヒュン
「ラーハルト ここが剥げてきた 塗ってくれないか」って聞くヒュン みたい ぜひみたい
人形だけどオシャレに気を遣ってあげるラー マニキュアとか塗ってやって欲しい 人形だからこそ細部までこだわるのだ派のラーと、生物ではないのだからそんなところに気を遣わなくてもいいのでは派のヒュン ヒュンは自分を「生きている」実体だと思ってないから
心が宿ってから最初のうちは塗料が剥げてもわざわざ申告する必要もなかろうと黙っていたヒュンだが、ラーがそういうのをめっちゃ気にするのでだんだん自己申告するようになっていって なぜそんなに気を遣うって問うヒュンに親が子の怪我を心配するのは当たり前だろうと返すラー これラーがヒュンをつくったんですね(今更)
作られたヒュンに心が宿るという奇跡が起きて、ラーは自分が作ったひゅんを親目線でみているけれど生み出されたヒュンはラーに恋という感情を抱き始めるの いいなこれ めっちゃ本気でやりたい
ラもラで、美しい青年を象った人形を生み出してしまうのはたぶん少なからず美しい形をした存在というものに自分が憧れているからだろうし、それはこれまでの多くの美術家が端麗な彫像を作ってきたのと同じで 人間として割とごく普通の心理なのだと思う つまりラーは別段男が好きというわけでもなくて、ただ男も女も関係なく、良くも悪くも「美」という観点からでしかものを見ていないと言いますか そういうタイプだと思うんですね 美しいを描くのが美術家だしね
そんなこんなで(?)、自分の作り出した人形が動き始めちゃったラーハルト
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目が覚めてアトリエを覗くと、昨日完成させたはずの青年人形が消えていた。彼に被せていたはずの布が床に落ちている。まさかそんな、物が勝手に消えるはずがない。
どこへやったのか、寝ぼけた自分が別の場所へ移動させたのか。探し回ってみるがどこにもいない。
不気味さに体を強ばらせていると玄関から物音がした。走っていってみると窓の前に誰かが立っている。昨夜から降り続けている雨が廊下を濡らしていた。
「これが雨か」
呟く青年人形はラーハルトを見て微笑んだ。
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みたいな導入ありだと思うんですがいかがかな()
ラー、人形にはちゃんと名前つけるタイプなのかな てかヒュンケル人形は依頼されて作ったのか? 違うか、あくまで個人趣味かな じゃないと奇跡って起きなさそうやし
ヒュンケルの名前は原作通り魔界の剣豪ってことで 筋骨隆々というほどでもないが線が細いというわけでもなく 自分と似通った体躯の青年に仕上げた 孤独だったのかもしれないラーハルトは 死んだ父親が遺したアトリエ 幼い頃に死んだ母親は顔すら知らない
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青年ヒュンケルの面立ちは父がスケッチした母の顔にどことなく似ていた。何度も読み返したそれをどこかで意識していたのかもしれない。
「そう考えるとお前の作った人形の顔はどれもどこか似ているな」
アトリエ内に置かれた人形を見て回りながらヒュンケルが言う。それを言ってくれるなと恥じらいを隠して作業に打ち込む。
心を持った青年人形は自由だった。勝手に消えてはふらっと戻ってきて
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作業するラーハルトを見つめる。己を生み出したこの人間は自分を親だと言った。生まれたオレは子供だと。それが人形師としては当たり前の感情なのだろうか。
彼は美しい。彼はオレを美しいと言うが、彼の方がよほど気高く尊い存在だ。自分が産んだ相手を彼は子と称し敬った。子であるオレは彼を崇めるべきなのだ。
なのに、彼と対等になりたいのはなぜか。同じ目線で同じ高さからものを見て、話して、感情を共有したくなるのはなぜなのか。
そう告げると「お前は幼いからまだわからんのだ」と言われた。困ったような顔で、いつもみたいに片頬を上げて。
ああ、彼にはオレが泣いた赤子にでも見えているのだろう。あやすように頭を撫でて……
違う、オレは対等でいたい、崇めるのが信仰の愛だとすれば、これは隣に立って手を繋ぎたい「恋」という名の愛だ。
だがお前に通じることはないのだろう。オレが横にいたくても、お前は遥か遠くにいる。
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とはいえとてもいいなこのらひゅ 見たいわ ひゅんの一方通行です やまなしおちなし
崇めたいラーと対等がいいヒュン こんなはずではなかったのにな選手権第1位ですわ
タイトルにするならSquallがいいな 嵐的な意味と赤ん坊の金切声って意味もあるらしい ちょうどええ
でも親は子を崇めるのかな……? 子が親を崇めるのはあると思うんだけど
ラーはたしかに自分が親でヒュンが子と認識してるところもあるんだろうけど、自分が(育て上げる責任を持つという意味での)親という意識はほとんど皆無で、ただ自分が産んだという意味での「子」のレッテルをヒュンにはっつけているのは間違いないと思う 上手く言えんが
だからラー的にはヒュンに自分を見て成長していって欲しいとかそういう希望はなくて 大切な相手、絶対に守るべき相手とは思っているが同時に彼に本当に人間と同じ心が存在しているのかまだ疑っている状態
崇めたいラーと言ったが嘘かもしれん 彼が崇めたいのは作品・青年人形としてのヒュンケルであって、心・生体を持ったヒュンケルではない
こんなのヒュンケルが知りたくもなかった情報でしょ 知る吉もないが ラーが言った「幼いからまだわからない」は実は「作品だからわからない」であって、お前は生きていないからわからない、なのかもしれない となるとラーハルトが怖すぎる 超現実主義的思考なんだろうな ここまでリアリスト過ぎなくてもいいかもしれない……
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ラが留守の間、アトリエに盗みが入って お守りをしていたヒュンが抵抗する その時空き巣はヒュが生きた人形だと知って(生きた人形伝説なるものがあってもいいかもしれない)奪い去ろうとする
抵抗するうちに壊れていく体 不意に頬を殴られて顔面が割れる 水晶の眼球が飛び出す 恐ろしい形相になった人形に空き巣は水晶だけ取って逃げ帰った 折れた脚では追いかけることも出来ず、ただ家主の帰りを待とうと眠りにつく
ラーが帰ると青年人形が倒れていた 何があったのかと問いただすまでもなく、既に人形は事切れていた 愛し子の半壊を抱いてひたすら泣いた
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しばらく後の話
人形制作の材料集めに繰り出していたラーは鉱石屋で水晶を見つける 眼球を象ったその瞳は何度も見つめたあの青年と同じ アメジストの色
紫水晶を持ち帰ったラーは棺に入れて保存していた壊れた青年人形の修復作業に取り掛かった この瞳があれば、もしかするともう一度彼が蘇るのではないか そんな淡い期待を抱いて
来る日も来る日も作業を続けて どれほどの時がたったのだろう
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雨が降っていた。窓を忙しなくうちつける音、風の轟音。夜中目を覚ましたラーハルトはベッドの下に白い布が落ちているのを発見する。あの人形に掛けていたシルク。まさか、と思いアトリエを飛び出す。
開け放たれた窓から迫る雨が廊下を濡らしていた。その先に待つ玄関で、ライトに灯される一人の青年。
「これが雨か」
今度こそ初めて答えた。
そうだ、これがスコールだ。
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これが雨か、と問われて 何も答えられなかったけど、後で雨だがあれはスコールだってつっこんどいてほしい ラーはヒュンに対して、自分で生み出したものなのだから自然と愛着は湧くものだと思っていて けどだんだん作品に対する愛ではなく一人の個体としてひゅんを捉え始めて 友に対する愛になる ヒュンにはちゃんとそう伝えてほしい
ヒュはラに対して 動けない時からずっと見ていた、オレの創造主がお前であることに幸せを感じていたと こうして触れられることが未だに夢のようで
互いが互いを信仰していて 尊んでいて 最高の関係だな
(おわり)