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    ☆ ☆ゆうしゃ

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    ☆ ☆ゆうしゃ

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    3月中に完成は無理そうなので、出来た所まで先行公開。
    この話を思い付いた時点でライ←伽耶要素入れたいと思っていたので書いてて楽しかったです。
    あと、ライドウの口調が変わるシーンは以前書いた『黒霧ノ迷イ子』を見て頂けると分かります。

    前編も支部にありますので、よろしければご覧ください。

    #葛葉ライドウ
    kuzuhaRaido
    ##帝都怪事件簿録

    濡れ羽の花嫁─後編─終の巫女として、幾多の人を看取ってまいりました。

    旅人、知人、友人、同胞。
    何人も、何人も。

    それが、私の使命だと思ったから。
    家族を失い、孤独となった私を暖かく迎え入れてくれた人達への、恩返しになると信じて。

    いよいよ明日、私も皆の元へ参ります。

    嗚呼、けれど……

    私の事は、一体誰が看取ってくれるのでしょう──?

    ─────

    「これより、───の冥婚の─を──う」
     嗄れていながらも威厳に満ちた老人の声が、儀式の始まりを静かに告げる。
     何処からか聞こえてくる雅楽を背景音楽に、ぼんやりと眺める先には何かの祭壇が。
     側に控えていた誰かに背中を押され、着慣れぬ袴の重たい足取りで其処へと向かう。
     一歩、一歩。
     両側に黙座する参列者たちの、顔を覆う狐面に足が竦まぬよう唇を引き結んで。
     一歩、また一歩と。
     短くも長い花道の終点、辿り着いた祭壇には慎ましくも華やかな装飾たちが待ち構えていた。
     嗚呼、でも是は、死者を弔うモノなんだ。
    「さぁ【ライドウ】様、花嫁を此方に」
     祭壇の隣で待機していた狐面に促されるが、左右を見てもそれらしき人物は見当たらない。
     ならば何処にと不意に視線を落とすと、自身の手に何時の間にか写真立てが握られていたではないか。
     そんな、まさか……。
     嫌な予感に心臓の鼓動が早まり、震え出す指で写真を目の前に掲げる。
     其処に写っていたのは──

    「【人修羅】……?」

     白無垢に身を包んだ友の姿だった。

    ─────

    「──っ!!」
     がばり。と意識の覚醒と共に、ライドウは勢い良く上体を起こした。
     嫌に現実味を帯びた夢を見てしまい、恐怖で文字通り飛び起きたのである。
    「はぁ…はぁ…」
     自分でも驚くほど乱れた呼吸と冷や汗に、胸元に当てた手をキツく握りしめる。
    (嗚呼、くそ─!)
     耳に五月蝿い心臓の鼓動に肩で息を整えながら、気を紛らわせるため周囲を見渡す。
     飴色に変色しているが綺麗な畳、四方を囲む箔押し装飾が施された襖、部屋の隅に設置された小さな行燈。
     それ等から推測するに、此処は何処かの屋敷の客間なのだろう。その中央に敷かれた布団の上で、今まで横になっていたようだ。
    「人修羅…」
     不安に駆られ、友の名を口にする。しかし呼び掛けたところで初めからライドウしか居ないこの部屋では、声に反応する者も答える者も無く。
    (また、逸れてしまったのか…)
     こんな事になるなら、無理矢理にでも共に行動すべきだった。と、後悔した所で後の祭り。大きな溜息で呼吸を整え、布団から立ち上がる。
     一先ず外へ出ようと正面に見える襖に近付き手を掛けるが、いくら引いてもまるで壁に固定されているかのようにビクともしない。
     ならばと他の襖も同様に開閉を試みるものの、どれだけ力ずくで挑んでも全て同じ結果に終わった。
    (閉じ込められているのか?)
     他に脱出経路がないか考えようと、左手を口元に添える。
     そこで漸く、ライドウはある違和感に気付く。
    (外套は何処へ行った?)
     旅館を出る際たしかに羽織った筈の厚手の外套が、周囲の何処を見ても見当たらなかったのだ。
     幸い屋敷自体がしっかりとした造りをしているらしく、今のところ寒さは感じていないのだが。

     スゥ──

     その時、ライドウが立っている場所のちょうど真後ろの襖が、小さな音を立てて開かれた。
     咄嗟に振り返り身構えつつも、務めて冷静にその先を見据える。
    「おや、ようやくお目覚めになられましたか」
     暗がりの先は廊下だろうか。明かりのない闇から、弱々しい老婆の声が発せられる。
     襖の影に隠れているのか姿は確認出来なかったが、確かに其処に『誰か』が居た。
    (先ずは会話か、それとも先手の攻撃か)
     明らかな異常時の最中、ライドウの脳は自然と戦闘状態へ移行する。
     候補生時代に身に付けた対人格闘戦が、人か悪魔か判別出来ない相手に通じるかは分からない。
     それでも、無抵抗でいるよりはマシだろう。
    「………」
     気取られない様、静かに片足を引く。
     直ぐにでも踏み込める体勢を取って相手の出方を伺っていると、老婆の声が再びライドウへ向かってこう述べた。

    「花嫁がお待ちです。さあ、どうぞ此方へ」

    「っ──!」
     夢で聞いた台詞と酷似した内容に、背筋に悪寒が走る。
     しかし動揺している事に気付かれてないのか、はたまた気に留めていないだけなのか、闇に潜んでいた気配はそれだけを伝えると音もなく動き出す。
    「………」
     どうやら相手に攻撃の意思は無く、またこの部屋に留まる理由も無かったので、ライドウはその後ろを警戒しながら付いて行くことにした。

     ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ。

     屋敷のやや広い廊下の床板が、歩く度に軋んだ音を奏でてライドウの鼓膜を刺激する。
     神経を逆撫でされているかの様な不快感に、それでも恐怖心を抑えながら歩みを進めた。
     両側を襖に挟まれた暗黒の一寸先、ぼんやりと浮かび上がる白髪頭は先ほどの老婆のものだろう。
     ライドウの腰辺りまでしかない背丈は、元からなのか腰が曲がっているからなのかは、蓑の様にぼうぼうの髪で隠れて判断が出来ない。
    (人かどうかも怪しいが…)
     部屋を出て確信した。ライドウが今いる此処は異界の中でも冥界に近い空間で、至る所から死者が此方を付け狙っている。
     気を抜けば最後、彼らの仲間入りになるであろう状況に、緊張を誤魔化すため唇を引き結ぶ。
     そうして暫く歩いた先に、古びてはいるが襤褸くない土壁が現れる。其処から更に幾つかの角を曲がり、屋敷の奥へと進んで行く。
     やがて中庭の見える廊下に出ると、先導していた老婆が一際豪華な襖の前で足を止めた。
    「着きました。この向こうに貴方様のお相手となる花嫁達が居られます」
    (たち…?)
     老婆の言い方に疑問を抱いたが素直に尋ねられる余裕も無く、ライドウは促されるまま襖に手を掛ける。
     客間の時と違いすんなりと開いた其れに、不安と恐怖を感じながら中へ入ると更にもう一つの襖が。
     やや重たい足取りで近付き、恐る恐る取手に手を伸ばす。
    「………」
     張り詰める息と共に固唾を呑んで、覚悟を決めそれを開いた。すると──
    「なっ─!」
     目の前に現れた花嫁達に、ライドウは言葉を失った。

     20畳は有ろう大部屋の、畳の上に敷かれた鮮やかな緋色の絨毯。目に痛いほど輝く金色の屏風。それらを照らす幾つもの行燈。
     まるで雛飾りを思わせる空間で人形の様に虚ろな表情で座していたのは、白無垢に身を包んだ帝都新報の女記者『朝倉葵鳥』を初め、十八代目葛葉ゲイリン『凪』、供俱璃一族の媛『串蛇』、そして──
    「伽耶…さん?」
     ライドウの最初の依頼人でもある大道寺家の令嬢『大道寺伽耶』だった。

     思わぬ人物の登場に、ライドウは遂に茫然自失に陥る。
     常であれば目の前の彼女達が何らかの術で見せられている幻覚かもしれないと考えられるのに、動揺のあまりそれすら出来なくなっているのだ。
    「さぁ、もっとお側へ」
     何時の間にか背後に移動していた老婆の声に促され、花嫁達の元へ向かって足が勝手に動き出す。

    (違う、いやだ─!)
     嫌だ? 何が嫌なんだ?
     契る事がか? それとも相手が?
     過去にも契った事があると言うのに、何を今更。
    (彼女達が居るなんて、有り得ない!)
     では、彼女等は偽物だと?
     その証拠が何処にある?
     或いは、あの時のお前が本当は死んでいて、走馬灯を見ている可能性だって有るのだぞ?
    (あの時…?)

     何者かの『声』に囁かれ、思い出すのは此処へ来る前の事。
     死の山と呼ばれる霊山に建てられた社の地下深く、匣に閉じ込められた『誰か』を助け出そうとして、逆に匣の中へと引きずり込まれたのだ。
     突如伸びてきた白い手に、真冬の様に冷たい水の中に落とされて。
    (一体、誰を助けようとして…?)
     探し人を思い出そうと記憶を探るが、靄がかった様に朧気な顔がどうしても思い出せない。
     アレは誰だったのだろうか。などと考える間も無く、ライドウは四人の花嫁の前まで辿り着いていた。
    「………」
     これだけ近付いても反応を示さない彼女たちの白無垢に包まれた肌が、行燈の光を反射して真珠の如く魅せてくる。
     俯いた綿帽子から覗く紅色の唇に、視線を惹かれるまま静かに見下ろす。
     まるであの写真の巫女の様だ。そんな感想をぼんやりと抱いた時、花嫁の一人が徐に顔を上げた。

     ──それは、大道寺伽耶だった。

     あの頃に見た短い髪はそのままに、何処か乞い願う眼差しが真っ直ぐにライドウを射抜く。
     心の内を探られているかの様な恐怖に後退りしそうになるが、どういう訳か両足が地面に縫い付けられたかの様に言う事を聞かない。
    「──っ!」
     とうとう術中に嵌ってしまったのかと焦り出すライドウに、しかし伽耶は何を思う事も無くゆっくりと唇を動かす。
    「──【ライドウ】さん」
     その一言に、ライドウは目を見開いた。
     あの時と同じ声色で、名を呼ばれたから。

     かつて『超力兵団計画』を阻止せんとヤソマガツヒを倒し、それでも伽耶に取り憑こうとする『四十代目葛葉ライドウ』を片腕ごと切り離した後、朝日の昇る空の下で彼女に本名を呼ばれた。
     『ライドウ』を襲名して間も無く、その名が漸く耳に馴染んだ時分だった為に、心臓が跳ね上がったのをよく覚えている。
     その時の、瞳に宿っていた熱も。
     本当は理解っていた。伽耶も他の人間と同じく、ライドウに想いを寄せていた事を。
     共に過ごした短い期間、幾度となく『そういう』視線を向けられて来た。
    (だからこそ、気付かないフリをした)
     欲を孕んだ目を見る度に思い出す、里に居た頃、務めと称して這い寄って来る女の──
    「──るな…」
    「……?」
     絞り出されたライドウの声に、伽耶は小さく首を傾げる。
     千切れんばかりに下唇を噛んで俯く顔は、学帽のつばに隠れて表情を伺えない。
    「【ライドウ】さん…?」
     血管が浮き出るほど強く握られた拳へ慰めの意を込めて手を伸ばした瞬間、それは勢いよく払われた。

    「そんな眼で僕を見るなっ!!」

     叫ぶと同時に、突然ライドウの身体から黒い霧が滲み出す。
     影のようにも見える其れは、部屋にある全てを呑み込まんと四方へ拡がり花嫁たちを侵食していく。
    「ゲホッ、ゴホッ!」
     体内を蝕む瘴気に彼女たちは堪らず咳き込むが、その振動が全身に鋭い痛みを与える。
     苦悶の表情で胸元を抑えていた一人が不意に頭を上げてライドウの顔を見ると、その瞳が満月の様な黄金色に変化している事に気が付いた。
     嫌悪に満ちた鋭い眼差しが、真っ直ぐに花嫁たちを見下す。
    「お前たちも結局、アイツらと同じだったんだ」
     やけに子供じみた口調で詰る姿は、普段のライドウからは遠く掛け離れており、まるで別人のよう。
     突然の態度の変化に困惑する彼女らを、これ以上視界に入れたくないとばかりに身体の向きを変えたライドウは、その先に居た老婆へと詰め寄った。
    「ねぇ、おかあさんは何処?」
     怒りの感情を隠しもせず尋ねてくるその気迫に、ただでさえ小さい老体が更に小さく縮こまる。
    「あ、ああぁ…」
     言葉が詰まっているせいで答えを得られない状況に、ますます腹が立ったのか手近にあった行燈を蹴飛ばす。
    「答えて。それとも腸を切り裂かれたい?」
    「ひぃ! あ、貴方様と一緒に居た方でしたら、宵の大蓋へ向かわれました!」
    「なにそれ? 何処にあるの」
    「黄泉を封じる場所の事です! こ、この屋敷の一番奥、祭壇の隠し階段を下った先にあります!」
     恐怖から早口になる老婆の命乞いにも似た回答を聞き、ライドウは遂にその腹部へ鋭い蹴りを入れた。
    「ぐぇっ!」
     蛙が潰れるような悲鳴を上げて吹っ飛んだ身体が、襖を押し倒し闇へと呑まれる。
     部屋の外へ消えた老婆の気配に小さく鼻を鳴らすと、今度は花嫁たちへと向き直り口を開く。
    「もう面倒だし、お前たちも解体していい?」
     刃物より鋭利な眼光が、獲物を捕え一歩ずつ近付いてくる。
     迫り来る恐怖に、彼女たちが表情を歪ませた、その瞬間──

    『この…バカライドウ!!』

     鈴を転がすような少女の叫びと共に、激しい電撃が部屋全体に迸った。

     春雷を思わせる稲光が全てを包み、龍の咆哮の如き轟音を上げて其処に有る全てを襲う。
    「ぐっ──!」
     容赦のない攻撃に片膝を付いたライドウは、奥歯を噛み締めて猛攻に耐える。
     やがて光と音が収まった頃、恐る恐る顔を上げると、焦げて穴だらけになった絨毯の上に四つの黒い塊が転がっていた。
     あれは恐らく、花嫁たちだったものだろう。炭化した所から、木の弾ける音と灰色の煙が上っている。
     煤となった白無垢から覗く手足に木目が見える事から、どうやら木偶人形に葵鳥たちの幻を見せられていた様だ。
    『んもぅ、何やってんのよ』
     突然の事に半ば放心状態で惨状を見つめるライドウに、再び少女の声が今度は呆れた音色で掛けられた。
    「ピクシー…?」
     惚けた表情で其方に顔を向けると、腰に手をあてて顰めっ面をする赤髪の妖精の姿が。
    『えぇ。人修羅の一番の相棒、ピクシーよ』
     極光色の羽根を羽ばたかせて宙に浮く彼女は、『一番』の部分を強調してそう語る。
     しかしライドウは、其れよりも前の『人修羅』と言う単語にハッと我に返った。
    「そうだ、人修羅! ──っ!」
     言うやいなや勢い良く立ち上がった瞬間、身体に残っていた電気の痛みで再び片膝を付いてしまう。
     長時間の正座で起きる足の痺れが全身に渡っている様な感覚に、堪らず苦痛の吐息を漏らし呻く。
    『ちょっと、いきなり動かないでよ! さっきのヤツ、本気で撃ったんだから』
     慌てたピクシーが両手を翳して唱えた回復魔法を、ライドウは制する事をせず甘んじて受け止めた。
    「人修羅に掛けた《縛り》を忘れたのか」
    『戦っちゃダメってヤツでしょ? 大丈夫、アレは『ライドウを攻撃したら、周りにも当たった』だけだから』
     してやったり顔で人差し指を立てた彼女に、ライドウも安堵した声で「そうか」と呟く。
     もしもの時を想定して人修羅に掛けた《縛り》には幾つかの『穴』を作っていたが、どうやら其れを上手く潜り抜けてくれたようだ。
    「流石は悪魔、と言った所か」
    『あら、貴方の悪知恵ほどじゃないわよ?』
     互いに軽口を言い合う事で無事の喜びを誤魔化すと、身体の痺れが消えたライドウはゆっくりと立ち上がる。
    「宵の大蓋…と、言っていたな」
     老婆が告げた行き先をポツリと呟き、出口へ向かって歩き出す。
     黄泉を封じる場所という説明に不穏な予感を抱きつつも、屋敷の最奥を目指してライドウ達は部屋を後にした。

     まるで、初めからこの部屋には何も無かったかの様に。

    ───続く───
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