フェンリルの耳にゴミ案件ブラシの毛をゴミ箱に捨てて立ち上がろうとした時、フェルの耳がピクっと動いてリビングの入口の方へ傾いた。
そういやフェルの耳の中も洗いたいんだよなー。
時々なんでだかしおれた葉っぱとかが入ってるし、フェルの足じゃ絶対耳の中までゴミ掻き出せないと思うしね。
『おい、耳の中に手を入れるな。』
「あ、やっぱ嫌なんだ。」
『良いわけあるか。
それよりスイが呼んでおるぞ。』
フェルが視線だけを入り口に向けてそう言った。
つられてそちらを見ると、パシャン、と水音を立ててスイが跳ねて入ってきた。
『あるじ〜スイね〜ごんじいちゃんをね……
フェルおじちゃんだけあるじになでなでされてるのずるい!!
スイも〜!スイもなでなでいいこいいこして〜!』
部屋に入りざま、何か言いかけたスイが、珍しく俺の膝に頭を乗せているフェルを見て、
言い終わる前にフェルの頭の上めがけて跳ねてきた。
ペニョっとフェルの頭の上に着地してブルブル震える
『あるじ〜はやくスイも〜』
「わかったわかった。わかったからフェルの頭の上から降りような?」
俺はスイをなでなでさすさすスリスリして抱きしめる
ひんやりして水っぽいのにぬれない感触、まさにスライム。
「よしよし。スイはいつもいい子だからいっつもなでなでしてあげるぞー。」
なでなでぷにぷにしていると、ふと、スイの中になにか草が入っているのに気がついた。
「なんだこれ。
スイ?お腹の中に何入れてるんだ?」
ハッとしてスイは自分の中に入れて持ってきたらしい二本の草を取り出した。
よく見るとそれには小さな花が(本当に小さな花が)プチッとついていた。
『フェルおじちゃんとドラちゃんのぶんなの。』
スイは一本をフェルの耳の中にズボッと入れ、もう一本をスツールの上で羽をたたんで目を閉じていたドラちゃんの上に置いた。
いやちょっと待った
今なんの躊躇いもなくフェルの耳に入れたなぁ。
もしかしてこないだからゴミみたいなのがフェルの耳に入ってるのはスイちゃんの仕業かな…?
フェルから俺だけに念話が入る。
『今のやつ出してくれ。』
…りょーかーい…
俺はフェルの耳から草を取り出して、スイの目の前でポイするのも可哀想なのでフェルの耳の根元の毛にサクッと刺した。
「スイちゃん。
フェルの耳の中に入れちゃったらせっかくのプレゼントがみんなから見えなくなるから、今度からは耳の中には入れないようにしない?」
『………そうするー!!』
納得してくれたようだ。
もしかして、ポケットとかアイテムボックスがないから丁度いい窪みに入れてたのかな…
スライムには鼻とか耳とかないから…
感覚わかんないか…
いや俺服着てる生き物で良かったぁ。
寝耳に草とか虫とか…ねぇ?
『あるじのぶんはねぇ、枕の上にかざったからねるときにみてほしいの。
あ!と!ごんじいちゃんもお花でいっぱいにしたからほめてほしくてきたんだった!
あるじ〜、ごんじいちゃんのツノきれいにかざったからみて〜』
ぱっちゃんぱっちゃん飛び跳ねてスイはみょんと俺の手を引っ張る。
可っ愛っ…いいけど
ゴン爺の角か…
地味に取り除くのがダルそうな案件だ。