空蝉たちの残夢 むせ返る暑さと、不快感を増すだけの蝉の声。鬱蒼と木が生い茂り、朱い千本鳥居が続く長い道。その途中、しゃがみ込んで目隠しをする甚平姿の少年が一人。
―― かごめ かごめ ――
少年はわらべうたを辿々しく口遊み、仲間など居ないのに律儀に鬼を務めている。小学生くらいだろうか。こちらに背を向けていて顔は見えない。
―― よあけの ばんに ――
理由はわからない。けれど本能で、これより先、あの少年に近付いてはいけない――そう思った。けれど、身体が言うことを聞かず、一歩、また一歩とその少年に近付いてしまう。目も逸らせず、少年の声が頭の中に響く。厭だ。これ以上、近付いては――
―― うしろのしょうめん だあれ ――
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