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    jidenshakun

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    jidenshakun

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    こないだの日曜日のワンドロ・ワンライお題「砂糖」が今更うらやましくなったのでお借りしたものです。ちまちま中断しつつ書いたので何分かけたかはもう分からんです…🥺
    🐙氏の授業前の台詞でもこんなん言ってるけどおうたの元ネタはメリ一〇ピンズです。

    #イデアズ
    ideas

     「ひと匙の砂糖があるだけで、苦い薬も飲むことが出来る。仕事も楽しいゲームになる!…というやつかな」

     共にルールブックを確認しながら初めて広げたゲームは、中々の接戦を繰り広げた。そうして、せっかく清々しい気持ちで部活動を終えたというのに、寮長共が収集などされてしまった日。アズール氏は当然そのまま鏡の間へ向かうって言うから、じゃあなんか、拙者だけ寮に帰ってわざわざタブレットを差し向けるってのも変じゃないか、と思ったのだ。今更。

     おしゃべりしながら、共に目的地を目指して歩いていたところに、背後から突然ルーク氏に声を掛けられた。僕は声を掛けられた、ってこと自体に驚いて飛び上がって、内容どころではなかった。

     「あら、否定はしないのね」
     「オーララ!驚かせてしまったようだ、すまなかったね自室の君。それから努力の君!ボンジュール!」
     「こんにちはルークさん、それからヴィルさん。…今日はルークさんも会議に参加されるのですか?」
     「寮長じゃないんだからしないわよ…、ついてきちゃっただけ」
     「ウィ!私は道中のお供としてやって来ただけさ!ヴィルを会議室まで送り届けたら失礼するよ」

     いや、何故…。拙者なんか寮長であろうともここへ来ないのに、普段は。そこまで会話が進んでからやっと、まともに内容の理解を出来るだけの余裕が帰ってきた。ルーク氏がこの場に居ることも充分異常だが、それを凌駕する程の、口を挟むに値する、気になったことに言及することにする。

     「ちょちょちょ、アズール氏…、」
     「はい?なんです」
     「君って、『努力の君』なの」
     「は?はあ、なんだかそのようですね」
     「…ふーん、…」

     考えてみれば、それはそうだった。僕だけが君のことを、意外と地道な努力家であることを知っているなんて、そんなわけがなかった。ふーん、…。

     「そんなことより、イデアさん。まだ時間もありますので、話の続きですけど」
     「ああ、感想戦の最中でしたな。……」
     「フフ…、快挙と言っていいのでは?アズールくんは凄いね!」
     「微笑ましいったらないわね」

     そう言って二人が笑って、ルーク氏はいつの間にか、来た道を引き返していったらしい。その頃には僕の頭の中は、ついさっきまで熱心に見つめていた盤上のことばかりで占めていたから、やっぱりもうアズール氏の声しか聞こえていなかった。

     その後でやってきたリドル氏も、レオナ氏も、学園長までも、僕の顔を見てぎょっとした(マレウス氏はやっぱり来なかったので、拙者が余計に浮いた)。そういうリアクションをされるならもういいよ金輪際来ないから、陰キャが混在してすみませんでしたね…、などとは思いつつも、なんとか部屋を飛び出さずには済んだ。僕の隣には陰険の君が座っていて、ちゃんとここが、イグニハイド寮長、イデア・シュラウドの席なのだと示すみたいに、レジュメを置いてくれたので。アズール氏…!じーん。君ってば拙者の空気清浄機…。陰キャの星…、安地…!

     学園長の声を遠くに聞きながら、ふいに、出会い頭のルーク氏の言葉を思い出した。あれは有名な詩だった。どうして突然、あんなことを言ったのだろう。砂糖だと。…もしかしてアズール氏が?僕の?

     「ッッッ!!?違、ゴッッフ、……え、…」
     「…シュラウドくん?大丈夫ですか?」
     「ひぇ、……な、なんでもないです…、げほ、げほ、…」
     「僕、未開封のミネラルウォーター持ってますよ?差し上げましょうか。対価ですが…、」
     「いやいい、大丈夫…。」

     なんとかそれで治めて、会議を再開して貰う。

     ちが、…違うし!!別に、アズール氏が居るからってそれだけで、引きこもりの拙者がのこのこ部屋から出てきて、部活にちゃんと参加していて、ついに寮長会議にまで出席してしまったわけでは。エッ?いや、そうじゃん。エそうなのかな???アズール氏が居るなら僕って、怖いことも頑張れちゃうの。咳き込んでしまった哀れな先輩を捕まえては利益を得ようとなんてする性悪なのに、そんなことは誰だって知っているのに。僕って君のこと、シュガーでハニーなマーメイドだとでも思っているの?

     ちらり、と隣を盗み見る。くるんと跳ねる髪の毛の先が、まつ毛が、ピンク色の唇が、なんだか。視界の奥から視線を感じて、アズール氏の背景だったヴィル氏が、渋い顔でこっちを見ていることに気が付いて、慌てて下を向く。

     自覚をしたら途端に、隣の席が落ち着かなくなった。やっぱり会議なんかリモートに限る。今すぐベッドでジタバタしなくてはいけない、そんな使命感に駆られた、果てしなく長い1時間だった。

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