drag dreamtale#8きもちわるい……ああ、もう無理………
「ゔっ、えッ!えッ、……」
薬の副作用がひどくて吐いてしまった。
辞めるべきだと分かっていても、少しの快感が俺を楽にしてくれる。
辞められない。
お兄ちゃん。お兄ちゃんを探さないと。
早く見つけて、一緒に暮らして、幸せになり——————
まてよ。
こんなに悪いことをした俺に、幸せになる権利はあるのか?
沢山沢山、モンスターを殺したんだぞ?
指で数え切れない程、俺は殺しをしたんだぞ?
なのに、幸せになるのか?
お前が幸せになるのか?
お前が幸せになる権利などない。
罪を償って死ね。
俺が殺した奴等のタマシイが俺の胃の中で叫ぶ
けど、こんなに殺したならもう何匹殺したって変わらないよ
この世界さえ破壊して、全て無くして、お兄ちゃんと一緒にいたい
ずっと、ずっと一緒に。
愛されなくてもいい。
ただ、お兄ちゃんとずっとずっと一緒に居られれば他に何も要らない。
二人で堕ちて仕舞えば、
俺が求めた「幸せ」って、なんだったんだろう。
今更そんなこと考えたって、意味などないのに。
ならば、もう全て殺すしかないね
殺して、殺して、殺して、忘れちゃえばいいんだ
落ちていたナイフを手に取った
*殺戮、狂気
何度悲鳴を聞いただろう。
いや、何百は行くだろう。
服が血まみれになってしまった。
いや、塵まみれの方が正しいか。
こんなに殺しても、お兄ちゃんは来ない。
この1時間で何百度叫び声を聞いたか。
どうやらここら辺で大量虐殺が行われているらしい。
命の危機を感じながらも、暗い路地裏を歩いて行った。
奥から、コツコツと足音が聞こえる。
ヒールの音だろうか。
「まだいる」
まだ居る?どういう事だ。
そのモンスターは、俺に向かって走ってきた。
咄嗟に避け、「誰だ!?」と言った。
「………もしかして、お兄ちゃん?その声って、お兄ちゃん、だよね?」
どこか聞き覚えのある声で、モンスターはそう言った。
もしかして、
「ドリーム?ドリームなのか?」
「お兄ちゃん!探してたんだよ、ずっと、ずっと。もっと早く来てよ、もうこんなに、殺しちゃったよ!?」
え?
暗闇の中、ドリームを凝視すると血と、塵まみれだった。
「え?、え?、どういう事だ?」
「お兄ちゃん、やっと会えた。今度こそ、一緒に、幸せに、なろう?」
そういえば、少し聞こえるようだった声も全く聞こえなくなっていた。
「害虫は全部殺してくるから。そこで待っててね。」
そう言い、ドリームは消えた。
え?、どういう事だ?、殺す?、
俺の脚が恐怖でガクガクと震え、膝から落ちてしまった。
ドリームが歩いてきた所は、赤いカーペットのように、紅かった。
「ぇッ!ッ!」
あまりの気持ち悪さに吐いてしまった。
生臭い。生臭すぎる。
いろんな感情がぐちゃぐちゃになり、遂に失神してしまった。
「——————きて!起きて!」
気づいたらドリームが馬乗りになっていた。
重い。なんか重い。どっちの意味でも。
「ぜんぶ俺とお兄ちゃんに邪魔な害虫は駆除したよ!この世界線にはもう俺とお兄ちゃん以外居ない。ねっ!静かになったでしょっ!」
確かにもう物音はしなくなった。
ドリームはもう変わり果ててしまっていた。
赤黒く光る眼球。
高いヒール。
返り血と、塵に塗れた洋服。
殺されてしまうのか。
ああ、罪を償う時はこんなに早く、来てしまったのか、
「殺さないよ。この世界線でずっとずっと、二人だけで、暮らすだけ。」